二十六 寝言ガールズ

「でもさぁ、一番驚いたのはミキちゃんだよね~」

「え? わたし?」


 突然の指名に、私は驚いて箸を止めた。

班のメンバーは皆意味ありげに私を眺めて笑っていた。林間学校の二日目。初めて学校の友達と寝食を共にする経験は、とても楽しいものだった。昨日の夜も、先生に隠れてトランプをやったり、好きな男子について夜通しガールズトークをして盛り上がったはずだ。私が何か、驚くようなことをしただろうか?


「ネゴトだよ! ね・ご・と!」

「寝言?」

「うん! ミキちゃんすごかったよぉ!」


 ハルちゃんがクスクス笑った。ますます訳がわからなくなって、私は首を捻った。すると、皆が私に昨日の夜のことを話してくれた。


「いつの間にかミキちゃんだけ寝てて……何か喋り声が聞こえてきたの」

「最初は皆分かんなかったけど……あ、これミキちゃんの寝言じゃね?ってなって」

「ウッソ! 私何か言ってた?」

「言ってたよ!」


 食卓を囲んで、皆がニヤニヤ私の顔を覗き込んできた。


「『なんであの子が……』とか」

「『トモちゃんなんか死ねばいいのに』とか言ってたよね!」

「言ってた言ってた! 『あの子殺してやる……』とかね! ねえ、どんな夢見てたの?」


 なるほど。私は合点がいった。


 昨日のガールズトークを受けて、私が彼女に嫉妬して思わず本音を漏らしてしまったと思っているのだろう。私は離れたテーブルにいるトモちゃんを見た。彼女は私の視線に気づき、チラリと私を見てすぐ目を離した。トモちゃんの隣には、先週から付き合い始めた彼氏が座っている。私は冷やかし顔の皆に視線を戻し、笑顔を作って言った。


「それ寝言じゃないよ、私起きてたから」

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