20.祭りのあと
期末テストだ。
ずっと勉強に身が入らなかった
だが、所詮数日前に気合いを入れたところでサボった分を取り戻せるわけもなく。
「終わった」
テストが終了して司はつぶやいた。
「終わったなー」
「あぁ、終わった」
陽気にやってくる栄一に、司は絶望の顔を向けた。
「どうよ?」
「後の祭り」
「もっと勉強しとけばってかー。アフター・ザ・フェスティバール」
「おまえは?」
「ミートゥー」
やけくその笑いが漏れた。
数日だけでも真剣に勉強した甲斐があって赤点は免れそうなのは救いだ。
が、いつも平均点前後をうろうろしているのに今回は一気に下がってしまいそうだ。
あんた放課後も毎日友達のところに勉強しに行ってたんじゃないの? と顔をしかめる母の顔が簡単に想像できてしまう。
今回は問題が鬼むずかったんだ、でごまかそうと司は決意を固めた。
どうせ高校の問題なんて親はもう解けはなしないだろうからごまかしがバレることはないだろう。
それでも叱られるであろうことには変わりはないのだが。
「よーっし、絶望の祭の後だ、気分持ち直しにいこー」
栄一はカラオケに行こうと周りの生徒を誘い出した。
栄一がクラスメイトと遊ぶなら自分は帰るか、と司は鞄を手に取った。
話に盛り上がる栄一達がほんのちょっとうらやましいが「俺も俺も」と入っていける性格ではなかった。
それじゃ、と挨拶をして帰りかけると、がっしりと栄一に掴まれた。
「なにしれっと帰ろうとしてんだよ。おれとおまえを慰めるのにみんなも参加してもらおうんだぞー」
「えぇっ? 俺あんまり歌とか知らないぞ」
「あんまりってことはちょっとぐらい知ってるんだろ? OK、OK」
なにがOKなのか判らないが返してくれそうにないので付き合うことにした。
「おまえらを慰めるだけじゃないぞ」
「おれらも爆沈祭だからな」
カラオケに乗り気の男子が豪快に笑っている。
――まぁ、この機会にクラスの人とももうちょっと話せるようになっとくか。
司はふぅとため息をついた。
テスト爆沈後夜祭は意外に盛り上がったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます