ほっぺが落ちたでやんす

エリー.ファー

ほっぺが落ちたでんやんす

 ほっぺが落ちたでやんす。

 美味しいものを食べたせいでやんす。

 だって、あんなシュークリーム初めて食べたでやんす。たくさんの人がならんでいたからついつい並んでしまって買ってしまったでやんす。

 美味かったでやんす。

 皮は別に美味しくなかったでやんす。本当にびっくりするくらいゴミみたいな味がして、どうしたものかと思ったでやんすが、クリームが滅茶苦茶美味かったでやんす。

 本当に。本当に。

 あのシュークリームの皮が不味かったでやんす。ごつごつしたプラスチックを、巨大なおばさんに無理やり口の中に詰め込まれる味がしたでやんす。最悪、綺麗なお姉さんだったらと思ったのに、おばさんだったでやんす。

 比喩でやんすよ。別に本当におばさんに詰め込まれたわけではないでやんす。 

 え。

 聞かないと分からないんでやんすか。

 その読解力の低さって、どうにかならないんでやんすか。

 もしかして、マジの馬鹿でやんすか。親の教育がなっていないということでやんすか。

 あのシュークリーム。あんたも食べた方が良いでやんすよ。馬鹿が治るかもしれないでやんすから。

 だって、シュークリームって普通、美味しいものでやんすからね。不味いと思って食べるようなものではないでやんす。失敗のしようがない、ド素人でも作れるもの。それがシュークリームでやんす。

 なんで、あんなに不味いシュークリームが作れるのか理解できないでやんす。

 いや。不味いのはクリームじゃなくて皮でやんすけど。もう、思い出しただけでも苛々してくるでやんす。

 あれだったら、足の裏の皮を引きちぎって虚無顔で食べた方が幸せでやんす。足の裏の皮にクリームとかマーガリンとか無塩バターとかを乗せて食べた方がまだ幸せになれるでやんす。

 あれは食べものではないでやんす。

 あんな皮は、きっと悪魔の皮膚でやんす。そう、そうでやんすよ。きっと悪魔の足の裏の皮をむしって食べたらあんな味がするでやんす。

 ショートケーキもあったでやんす。クレープケーキもあったでやんす。チョコパフェもあったでやんす。ビーフストロガノフもあったでやんす。チキンステーキもあったでやんす。ナシゴレンもあったでやんす。その中からわざわざシュークリームを選んでやったんでやんす。

 それが、この有様でやんす。

 ほっぺが落ちるほど美味しかったでやんす。

 でも。

 あの皮が、あの憎き皮がなければもっと美味しかったのに。

 悔やまれるばかりでやんす。

 よし、決めたでやんす。

 将来、パティシエになろうと思うでやんす。美味しいシュークリームの皮をたくさん作ってこの世の中から、不味いシュークリームの皮を駆逐してやるでやんす。

 あと、シュークリームにかかってる白い粉。

 あれ、なんでやんすかね。

 あれ、めちゃくちゃ美味しいでやんすよね。

 あれ、を食べるためにシュークリームを愛している節があるでやんす。

 あれ、あれれ。

 あのシュークリームって結局美味しかったと言えるのでやんすかね。だって、皮が不味かったのは事実だし、クリームがたとえ美味しくても調和がとれていないのは間違いないでやんす。

 じゃあ、ほっぺが落ちたのはおかしいでやんす。

 もしかして、パティシエになるべきではないのかもしれないでやんす。



 あと、このやんすって口癖、飽きてきたでやんす。

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