第6話 天才高校生探偵現る!
確認しなくても相手は妹の
知らんぷりをするのもかわいそうなのでスマホの画面を確認すると、なんとメッセージアプリに新着が五十件近くもきていた。
授業が終わりのわずかな時間に大量に文章を送ってよこす美琴に驚きを通り越してもはや呆れてしまう。
アプリを開いて内容を確認すると『授業お疲れ様です』、『次の授業はなんですか?』、『疲れていませんか』とか最後の方になっていくと『どうして返信してくれないの?』『もしかして嫌いになったの?』『お願いだから返事をよこして!』などヤンデレ臭を
こんなに
鳦のデート以来、美琴の束縛がかなり酷くなっていき、お互いが離れて行動しているときはメッセージアプリの通知音や電話の着信音が鳴り止まないのだ。
今もこうして通知のバイブが爆速に響いてるいるせいでスマホが使用できない。
頭を抱えて席に座っていると背後から鳦の声がした。
「おい、なに疲れ切った顔しているんだよ」
「これのせいだよ」と真は制服のポケットに指を差した。
すると突然、鳦は真のポケットまさぐり勝手にスマホを取り出してしまう。
「勝手に人のポケットをまさぐって、スマホを取り出すな!」
「別にいいでしょ。変なことするわけでもないし」
平気な顔をしながらスマホのメッセージアプリを開いた。
「うぉ~。お兄ちゃんモテモテだね」
「妹にモテてもしょうがないだろ」
「なるほどね。原因はこれね」
「最近、美琴の束縛が激しくて精神的な疲労が半端ないんだよ……」
鳦は力強く真の背中をビンタというカツを入れる。
「そんなことぐらいで疲労した顔するな。昼休みになったら相談に乗ってやるから、それまで頑張っていろ!」
そう告げて鳦はチャイムが鳴る前に隣のクラスへと戻っていった。
それから昼休みになり鳦は再び真のいるクラスへとやってきた。
「ウィース。悩みを聞きにきたよ」
「相変わらず元気だな」
満面の笑みを見せながら鳦は前の席を借りて真と向かい合うように座る。
真は父親の再婚や、新しくできた母親のこと、それに美琴のことなどを洗いざらい鳦に話した。
「それで真は妹の美琴ちゃんとの距離をおきたい、ということだな」
「ああ。兄妹になったばかりでけど兄離れをしてほしいと思っているんだ」
「なるほどね。結論から言わせてもらうと無理だな諦めな」
「は?」
あまりの答えに思わず口を開けてしまう。
「だって、母親以外に心を開いた人物ができたんだよ。それに心を開いたのが異性となると余計だよ」
「じゃあ、俺はこのままずっと美琴の束縛に耐えなくちゃいけないのか?」
「一時的にかまってほしんだけだと思うよ。時が経てばいずれ兄離れするから気長に待っていればいいんだよ」
あくまでも
現に今も鳦との食事中にもスマホのバイブレーションが止まらず起動しているのだ。
授業も終わり真は自宅に帰ると、いつものように美琴が出迎えてくれた。
「お兄さん、お帰り。」
「ただいま、美琴」
真は自室に行き、部屋着に着替えてリビングに戻ると美琴が勢いよく抱きついてきた。
最初は胸がドキドキしてはいたが今は耐性がつき、なんとも思わなくなった。人は苦手なことでも慣れさえすれば、なんとも思わなくなるのだと身体を持って実感する。
「暑苦しいよ美琴」
「……嫌だ。ずっとこうしていたい」
美琴に抱きつかれながらソファーに腰を掛け、リビングでくつろぐことにした。
ほんとは美琴の腕を振りほどきたいが、鳦の言う一時的な甘えの行為だと思いながら仕方なく我慢をすることにした。
「ねぇ、お兄さんから女性の匂いがするんだけど……」
「ん? そうか」
身体中の匂いを嗅いでみたが女性の匂いなんてしなかった、むしろ真は女性の匂いなんてわかるわけがない。
「もしかして、また鳦さんと一緒に下校したの?」
「え!? まあ、そうだけど」
「ねぇ、お兄さんと鳦さんはお付き合いしているの?」
鳦の唐突な発言に、真は少し取り乱す。
「つ、付き合ってはいないぞ」
「そう、ならよかった」
不敵な笑みを美琴は浮かべながら真の膝に頭を乗せて膝枕にし、頬で膝をスリスリしてきた。
さすがにドキッとしたが平常心を保つように美琴をなるべく意識しないようにした。
鳦のアドバイスの通りに美琴をこのままにしていいのか考えてしまう真であった。
翌日、学校での休み時間に友人の男子高校生と会話をしているとき、同じクラスの女子生徒が真に話しかけてきた。
「真君、ちょっといいかな?」
「どうしたの?」
「ごめん。クラスの皆から集めた数学のノート取りに行かないといけないの。私一人じゃキツいから一緒に職員室に行って運ぶの手伝ってくれない?」
「わかった。俺でよければ」
了承した真は、クラスの女子と一緒に職員室に向かうのだった。
以前は女性に対して免疫がなく断っていたところだが、
二人で廊下を歩いて行くと隣にいる女子生徒が話をしてきた。
「真君さ、最近クラスの女子と打ち解けるようになったよね」
「まあ、確かに。今まで女性が苦手だったんだけど、ここ最近は免疫が付いたからかな」
「苦手なことを克服するよう努力した真君はすごいね、尊敬しちゃう」
「そんな、努力なんてしてないよ」
明るい笑顔で言われると真は俯いて頬を赤くしてしまう。
新しい母親と妹ができたおかげで他の女子生徒とこうやって楽しく会話ができることに二人に対して真はとても感謝をする。
職員室で先生から朝に提出した数学のノートを受け取り、女子生徒と半分に分けて自分のクラスに戻る最中、
「ねえ真君?」
「どうしたの?」
急に女子生徒はサクランボのように頬を染める。
「あのね……その……彼女とかいるの?」
「えっ! いやいないけど……」
急にとんでもない発言をしてきた女子生徒に驚き戸惑ってしまう。
「そうなんだ。あのさ――」
二人で階段を上っているときに事件が起きた。
急に顔を引きつり身体がよろめいたせいで階段から足を滑らせ、そのまま下に落下してしまう。
咄嗟に真は持っていたノートを捨て、彼女の身体を
物凄い衝突音が室内に響き、上に覆い被さった女子生徒は必至で真に声を掛ける。
「真君! 大丈夫、怪我はない!?}
「いてて、大丈夫だよ……多分」
「一応保健室に行かないと――立って!」
女子生徒が手を差し出そうとしたときに、急にまた顔を引きつった表情をする。
「どうしたの? 具合が悪そうだよ」
「急に……お腹が……」
女子生徒はお腹を押さえて
階段から落ちたとき、お腹を強打したんじゃないかと思った真は、女子生徒の肩を取り急いで保健室に向かった。
保健室に入り、保健室の先生に先ほど起きた事情を説明した真は階段で散らばったノートを片付けないといけないので、保健室から出て行こうとしたとき、先生の高い悲鳴が聞こえた。
「どうしたんですか!?」
真は咄嗟に先生の元に駆け寄る。
「痣が……」
カーテンの隙間から信じられない光景が真の目に映った。
なんと女子高生の腹部に大きな痣ができていたのだ。
その光景を目撃した真の脳裏にある出来事が頭をよぎった。以前デート中に起きた鳦と同じ症状で痣の位置も同じ、これは偶然なのかと疑ってしまう。
怖くなり保健室から出て廊下を歩いて行くと、一人の男子生徒が真に話しかけてきた。
「真君、君に話があるんだけど今日の昼休みに理科実験室に来てくれないかな」
「君は?」
「僕は同じ学年で四組の
大林清次。黒髪ショートヘヤーの長身ではあるが顔の血色が悪く、毎日不衛生の生活を送っているんだと見てわかる。
「こちらこそ――」
「天界真。家族構成は父子家庭であるが、最近父親の再婚で新しい母親水無月瑠依子と妹の水無月美琴の四人家族になり楽しい生活を送っている」
「どうしてそこまで知っているの!?」
家庭の事情に詳しい清次に驚きを通り越して恐怖を抱く。
再婚したことはわかっていたとしても、母親と妹の旧姓は真と父親しかわからない。
「今、真君に起きたことは偶然ではないよ。詳しい話しは理科準備室に来てくれ、待ってるよ」
「ちょっとま――」
そう告げて清次は去って行った。
この一連が偶然じゃないとしたら一体、真の身になにが降りかかっているのか鳥肌が立つほどの恐ろしさを感じた。
昼休み清次が待っている理科準備室に向かった。
理科準備室に入ると、テーブルの席でココアの入ったティーカップを持ちながら清次はニッコリと笑顔を見せる。
「待ってたよ、真君」
真は向かい合うように席に着き、先ほどの件について聞いてみた。
「清次君。さっき保健室の廊下での件について話しを聞きに来たよ」
清次は戸棚にある空のティーカップを取り出してココアを作り、それを真に手渡ししてから話を始めた。
「実は真君は気付いていないと思うけど、この痣の件は今回だけではなかったんだよ」
「どういうことなの! 他にも被害者が出ていたの!?」
「うん。しかも何故か真君と話した女子だけが起きているんだ」
「どうして……」
まさか自分がきっかけで周りの女子生徒が被害を受けているとは想像していなかった。
「原因はまだわからないが、僕もいろいろ調べているんだ」
「清次君は一体何者なの?」
清次は席を立ち上がりすました顔でこちら見つめ、
「僕はね不可解な事件を解決する少年探偵さ」
「しょうねんたんてい?」
一瞬、某探偵アニメの影響されたんじゃないかと思ってしまう。
真の考えていることを把握したのか清次はいくつかの雑誌を広げて見せてきた。
どれも『未解決事件を解決した天才高校生探偵』と記載された文章が書かれていた。
「ほんとだったんだ……」
「これで納得いったかい?」
「納得はしたけど――まさか今回の不可解な事件は俺がしたって思っているの!?」
自分は
「最初は僕も思っていろいろ真君の身の回りを調べていたけど犯人ではないとわかったから安心して」
それを聞いた真は胸に手を当てて
「よかった……」
「だけど君に関わることは確かなハズなんだ、だからこれを君に渡しておく」
清次は胸ポケットから一枚の紙切れを渡してきた。
手渡された紙切れは名刺だった。名刺に記載されている人物名を見ると、
「『霊媒師
「未解決事件には霊媒師の協力も欠かせないことだってあるんだよ。もし今日暇だったらその霊媒師に会ってほしいんだ。一応連絡はしとくから」
「わかった。一応行ってみるよ」
「協力感謝しているよ」
昼休みも終わり真は理科準備室から出て行った。
一体自分の身になにが起きているのか本当に怖くなりながら残りの授業を受ける真であった。
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