第2章 フィナーレと序奏
第9話 だから俺を巻き込むな (1)
あんなことがあったら、そりゃ興味本位で近寄ってくるわけないよな。
小山内も、その点じゃ普通の女子だった。
あれから3日経ったけど、何の接点もありませーん。
まぁ当然だな。
あっちは、クラスの人気者街道驀進中。
いまも女子が囲んで何やらお弁当談義で盛り上がってるみたいだ。
おれはホリーともう1人別の弁当友だちが出来て、まあのんびり街道??
「ホリー、それなんだ?キュウリの横に入ってるやつ。」
「あ、これチーズだよ。僕の好物なんだ。」
「ご飯にチーズって合うのか?」
「僕は好きだけど。」
「リゾットとかがあるくらいだから合うんじゃないのか?」
ホリーの味方をしたのが弁当トリオ3人目。
眼鏡の奥のクールな瞳がチャームポイントのクール系イケメンだ。
短めの黒髪も少し色白の肌も似合ってる。
その上なんか、勉強が出来るらしい。
本人は謙遜してたけど、課題テストの返却の時、それがバレた。
バレたって言い方は良くないか。
先生が「よく課題を理解してた」って褒めるって、やっぱりすごいよな。
なんで、俺なんかとクラスのイケメン2人が一緒に弁当食ってるんだよ。
一部の女子の俺への視線が怖すぎる。
小山内の方はいいよな。カーストで上の方の子達とつるんでても、男子の方はでれでれして見てるだけだし。まぁ、小山内がカーストの主だから、俺とは立場が全然違うか。
「うっそー!自分で作ってるの?」
という声がその小山内カーストから聞こえてきたから、おもわず見てしまった。
「うん。自分で作ったら好きなの入れられるからね。」
「この卵焼き美味しすぎ!」
「明日は私が卵焼き貰うからね。」
小山内が卵焼きを褒められて照れてる。
あれ、俺の知ってる小山内じゃないな。別人。中の人が入れ替わってるぜあれ。
なんてことを思って見るとも無しに見てると、なぜか視線が合った。
その瞬間思いっきり視線をそらされた。
あのやろ。
さて、今日は文化系クラブの見学最終日になる。
明日は帰りのホームルームのときに、入部するって決めたクラブを紙に書いて担任の今井先生に提出して、そのままクラブに参加することになる。
例外は、自分でクラブを作る場合だそうだけど、面倒だし選択肢に無し。と言って入りたいのがあるかといえばこれも無し。
「ホリーは入る部活決めたのか?」
「うん。僕は茶道部か、能研。」
俺はチーズを幸せそうに食ってるホリーに話を振った。ちな、能研てのは能楽研究会な。いずれも渋い。
「なんで伝統文化系なんだ?」
「いかにも高校生って感じじゃない?あと、せっかく日本人に産まれたんだから、なんか一つ身につけておきたいし。」
「せっかくのものまねの特技使えないんじゃないのか?」
「伝統の形式をまねるのには使えるんじゃないかなと思って。」
利休さん、こいつに茶碗投げていいぞ。
「ガイは?」
ガイってのが二人目のイケメンこと
伊賀郁人君ね。
一応言っとくと、ガイってのはホリーがつけた。
勘違いすするなよ。
こんな呼ばれ方しても平気な気のいいガイくんだ。
俺は、伊賀、って呼んでる。
「おれは、コンピュータ系かな。たぶん。」
「いかにもって感じだよな。」
「何だよそれ。とりあえず、プログラミングとかなんか作るの楽しいから。そういうテルはどうなんだ?」
「うーん迷ってる。なんか、いいのないか?できればなんか食える系。家に帰るまで腹減って腹減って。」
「そうか、自宅遠いからね。」
「そうなんだよ。でも俺、料理研究会とか、そっちは似合ってなさそうだし、作るより食べたいってことだし。」
「そういうのはなかったぞ。食べたいなら自分で作って食べなさい。」
「ねー。」
どうだ、俺は人畜無害だろ。だから、一部の女子、そんな目で見るな。
「ええーっ!」
また、小山内カーストから聞こえてきた、しかも何かハモってるぞ。
「毎日、全部自分で作ってるの?」
「あたしは無理。絶対無理。」
「茶色くないお弁当なんて自分で作れるの?」
まだお弁当談義か。同じネタでよく話しがもつな。
「凜ちゃんこれ、もう特技だよね。料理研究会でさらに研鑽してクラスのみんなにごちそうを。」
「それいいねー!」
小山内は「凜ちゃん」になったのか。
いやそれより、大事なことは料理研究会は俺の選択肢から消えたってことな。
もとから消えてたともいうが。でもどこにしよう。
そんな感じで昼休みは終わって、午後の授業の眠気との戦いも無事に終わった。
掃除の後は最後の見学の機会だけど、どこに行こうか。
ちなみに、「幽霊御用達部」って言われてるのもある。
おもに、運動部で活躍したい人は、年に一回の部誌になんか書くとかだけでいいぞって部だ。第2文芸部とか、クイズ研究会とかがそうだと言われている。
でも俺、運動部で活躍する予定もないしな。
とか思って、掃除の後、教室に戻ってくると、またあった。
いや、不自然だろ、掃除直後に机の上に紙くずがあるって。
俺にばかばか言う前に考えろって。
おれは、直ぐにその紙くず、いや、小山内の呼出状を手にとって隠した。
なにこれ、恋人からのデートのお誘い?!
とか言われる前にな。証拠隠滅は徹底的に。
教室にはまだまだ人がいるので、どこで開けたらいいか迷ったんだけど、便所だなやっぱり。
ってことで、行きたくもない個室スペースに入って確認した。
「見学に行かないで、職員室の前で待ってて。」
なんで?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます