第肆話 空いた席
昨日あんな事があったにも関わらず、学校は通常通りあるのだ。それは勿論、妖怪や物の怪、怪異が壊した建造物などは全て“能力”で直せるからだ。壊した場合などはその直す
(完璧なまでに修復が完了してる。昨日今日で直せるものなんだ…)
言うわ易しとはまさにこの事。寸分の狂いも無く、元の形に戻っている。いつ見ても驚かされる。
「凪おはよ」「真季波くんお、おはよう」
「2人ともおはよう。一緒に来るんなら俺も誘ってくれよ」
2人に近づきながら軽口を叩く。
「あれ、トトさんは?」
「と、トトさんならここに」
八城さんは自分の持っていた鞄を下ろし、チャックを開いてみせた。中を覗くと教科書の隙間に丸まって寝ているトトさんの姿があった。
「トトさーん朝ですよ〜」
「か、か、か、可愛いかよ!」
颯はテンションがおかしい。さっきまで普通だったのに…昔から猫を見ると猫の方に向かっちゃうんだよな。
トトさんはゆっくりと起き上がり欠伸をしながら鞄から出てきた。
「
「あ、すみません」
「トトさんおはよう」
「おう、凪坊おはようさん。そしてまあ、そいつにはいいや」
「ひどい!!」
朝から元気で良かった、のか?教室の後ろの方で喋っていると前の扉が開く。
慌ててトトさんを体の後ろに隠す。見られたら小言を言われるに違いない。
隠した俺の背中をちょいちょいと突きトトさんが答える。
「凪坊…私は妖怪でも珍しい“人に見える妖怪”だが妖怪に変わりはないのだぞ?自分の姿を他人に見えなくする事くらい造作もない」ヒソッ
「あ、そっか」
あまりに周りに馴染み過ぎて妖怪であるという事を忘れていた。
授業が始まり、それぞれがノートをとったり先生の話を聞くなか俺は…集中ができていなかった…
(トトさん…空中でクルクル回ったりみんなに見えないからって俺の前に来て変顔するのやめて…)
笑いを堪えるのがきつい。やめてくれ。
「では真季波くん、続きから文章読んでくれる?」
「え、あ、はい」
(やばい、トトさんに気を取られ過ぎて先生の話聞いてなかった…)
俺があたふたしていると隣の席の女子生徒が続きの箇所を指で示してくれた。
無事読む事ができ胸を撫で下ろす。小声でありがとうと伝えると彼女はニコッと会釈をし前を向いた。真面目な性格なのだろう。困っている人を放って置けない。そんな風に感じた。後でちゃんとお礼に行こう。
その後、トトさんに気を取られることもなく落ち着いて授業を受けることができ無事に終わりを迎えた。休み時間に入り教室を出る彼女を呼び止める。
(確か名前は…)
学校が始まり最初の授業でした自己紹介の時のことを思い起こす。
「
「何かしら?」
急いでいるみたいだから手短に話そう。
「さっきの授業、ありがとう!教えてくれて。助かった」
「そう、なら良かったわ。私急いでいるから失礼するわね」
そう言い彼女は足早に階段を降りていった。お礼も言えたし良かった良かった。けどなんでそんなに急いでいるんだろ…
その後の授業も順調に進んで行き、あっという間に放課後となった。が、先の休み時間から放課後まで、俺の隣の席は空席となっていた。
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