第十章 竜払い 後編(6)
非戦闘員はなるべく、建物の地下に避難してもらった。地下といっても、特別防災に特化したものではなく、普通の家の地下だった。入れない人も多く、代わりに頑丈そうな家に入っておいてもらった。
弓兵と銃兵も配置を終えた。それ以外の人たちの準備も終えた。
夕方になる少しまえ、短い間、地面を叩くような強い雨が降った。それで奴が身体に塗っていた泥がすべて流れ落ちていった。雨が止むと、竜の群れのなかに、白い竜が姿を現わした。奴にしても、今日で、すべて終わらせると決めているせいか、もう自身の白い特別な姿を隠すことはなかった。
「とはいえ、だ」
ホーキングが奴を見据えながら言う。
「奴もかなり警戒はしてる、群れの真ん中にいやがる」
おれたちは、人間たちの前に現れた白い竜を見る。
他の竜がまわりに多数いる、都を出て、あそこへたどり着くのは不可能にしか思えない。
「竜たちを操ってるのは奴だ。奴さえ仕留めれば他の竜も攻撃をやめるだろう」
確かなものはなかった。だが、おれにもそう思えた。他の竜たちには、意志を感じない。人がにくくてやっているような感じも怒りもない。ただ、魂のない作業をしている印象だった。
「どうやって近づく」
セロヒキが問う。
「他の竜の数をひたすら減らす、それからだ」
竜は百匹以上いる。準備はしたが、かき集めた兵力と、急造した武器だった、練習もできるやしない。
結果は、やってみないとわからないものだった。
「全員で竜を減らせるだけ減らす」
そういって、ホーキングは白い歯を見せて笑った。
「あとは俺とヨルで群れにつっこむ」
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