第12話 ツイオクノカノジョ②
「高校生になってからもずっと影から望実をみていた。クラスは一度も同じにならなかったけどね……」
「……」
「まず望実は野球部に入ったよね。中学時代もだったし。でも嫌な先輩にいじめられ、退部した」
隣子が言う話は全て本当の事だった。そんな話一度もした事ないのに。ここまで知っているということは小中高同じだったというのは本当なのだろう。
「頑張る望実の邪魔をするあの男が許せなくて殺したの。話があると言ったら簡単に家までついてきたからね。何度も痛めつけて、望実への謝罪をさせて殺したわ」
「そ、そんなことが……」
確かに俺は桜井先輩にいじめられていた。俺が辞めた後あの人は学校を辞めたというのは聞いたことあったが、まさか望実が殺していたなんて。
「まぁ流石に家で殺したからお父さんにバレちゃったんだけどね。今回は前と同じ手は使えなくて……それで死体を処理して消す事で行方不明になった事にしたの」
「それって平尾課長と同じように……」
「そう。お父さんが昔関わった事件の犯人がやってた手口なんだって。その時は結局犯人の仲間が自首した事で明らかになったって。……だから望実が言わなければ今回も私たちが捕まる事はないの♪」
笑顔で明るく楽しそうに話す姿はとても人を殺した話をしているようには思えなかった。
「その後は……って一気に話しすぎてあんまり頭に入ってきてないか。ごめんね望実」
「え、あ、ああ……」
まさか隣子がここまでヤバい女だったとは思わなかった。今までも少し変わっているとは思っていたが、人を殺しても全く罪悪感がない。まるで映画に出てくるサイコパスな殺人鬼そのものだ。
「ま、望実は警察が出てきて焦ってるみたいだけど、最悪そいつらも殺せばいいだけだしね」
そう言って不敵な笑みを浮かべる。その姿に俺は恐怖を感じる。口だけじゃない、この女なら本当に殺しかねない。そう断言できる。
「……やっと望実と付き合うことができた。15年間ずっと願っていたこと。今すごく私は幸せ。……だから邪魔するやつは容赦しない。絶対に許さない」
そう言うと隣子は一方的に俺にキスをし、立ち上がる。
「明日朝からバイトし今日は帰るね。ご飯一応作ったの台所に置いてるから。また明日ね望実」
そして部屋を出ていた。
平尾課長、高濱さん、桜井先輩。少なくともこの3人は俺のせいで隣子に殺された。……いやでも平尾課長と桜井先輩は別に死んでも構わないと思っていた。むしろ死んでくれと思っていたくらいだ。高濱さんも俺を振った時は後悔すればいいと思っていた。
俺は彼らの死を望んでいた……?
「……そ、そんな、いくら嫌いでも、ほ、本当に人を殺していいわけがない……」
俺は水でも飲もうと台所に向かう。台所にはラップに包まれたオムライスが置いてあった。
毎晩手料理をしてくれて、洗濯や掃除の家事もしてくれる。本当にいいカノジョだ。なのに……。
「どうして、どうしてあんな簡単に人を殺せるんだ……」
見た目も可愛いし、家事もできる。そんな側から見れば普通な女性が実は殺人鬼だった。それが俺には恐ろしくて仕方がなかった。
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