第7話 ナゾメクカノジョ

「ええっー!? それってヤバくないですか!?」


 小野寺は大きな声をあげて驚く。

 俺たちは近場のファミレスに来ていた。俺は隣子が家で夕飯を作っているから軽めにと頼んだポテトを口に運ぶ。


「そうなのか? 俺は助かってるから別にいいんだけど」


 隣子のことを聞かれたので今のところ毎日家に来てもらっていると話したのだが、小野寺はかなり驚いているようだった。


「いくらなんでもやり過ぎですよ! しかも連絡もめっちゃ来るんでしょ?」


「ああ。でも最近は用がない時は30分に一回くらいになったよ」


「それでも多いですって! 秋山さんその人に相当束縛されてるんじゃないんですか?」


 小野寺は残り一口となったスパゲティを平らげると、心配そうな顔をしてこちらを見上げた。

 確かに隣子は少し変わってるとは思ったが、俺にここまでしてくれるというのが嬉しかったのであまり気にしていなかった。


「ま、まぁ、それだけ俺の事を好きでいてくれてるのは嬉しいしな」


「あと気になる所なんですけど、小中高と一緒だったんですよね?」


「俺はほとんど覚えてないんだけどな。向こうはずっと好きだったらしい」


「そんな事ってあるんですかね……。それで急に今になって告白、ですか。なんか怪しくないですか?」


 確かに客観的になって考えると、今になって突然俺に告白してきたのは変に思える。しかしだからといって隣子の愛は本気としか思えない。


「……考え過ぎだろ」


「なぜそんな昔から好きだったのにどうして今なのか、高校卒業してから今までの間は何をしてたのかとか、色々疑問はありますよ」


 そう言われると俺は隣子の過去は何も知らない。高校まで一緒だったということは、その後の俺の大学には来ていない。高校卒業からの6年後になぜ俺の前に現れて、俺に告白したのか。どうして俺の家が分かったのか。考えれば考えるほど謎が出てきた。


「……とりあえずこの話はやめだ。そろそろ帰らないと家で待ってるからな」


 俺は伝票を手に取りレジへ向かう。


「あ、私が払います! 私が無理言って誘ったんですから!」


「いや、いいよ。先輩らしい所見せたいし」


「そ、そうですか……。じゃあ次は私が奢りますね」


 なんか今さらっと次回もある発言をされた気がしたが、突っ込むと長くなりそうなのでここはスルーする。



………

……



「私の家はこっちなので。今日はご馳走様でした。……一応気をつけてくださいね、彼女さんには」


 俺は電車、小野寺は徒歩なのでここで別れることになる。


「大丈夫だよ、考え過ぎだ。気をつけて帰れよ」


「よかったら駅までついて行きましょうか?」


「いやいいよ、面倒だろ? 今日はゆっくり休んだらいいさ。明日は平尾課長戻ってくるかもしれないしな」


「げっ!それは嫌だなぁ……。じゃ帰りますね!お疲れ様でした!」


「お疲れ、また明日な」


 小野寺は平尾課長の名前が出ると露骨に嫌な顔をする。そして頭を下げ、帰っていった。


 さて、俺も帰るか。俺は駅の方へ歩く。

 歩くこと5分、駅が見えてきたので電車の時間を調べ隣子にメッセージを送ろうとした時だった。


「り、隣子?」


 駅の前に見慣れた黒髪ロングの女が1人立っていた。


「望実っ!」


 隣子は俺に気づくと俺の元に駆け足で近づいてくる。


「ど、どうしてここに?」


「望実が遅くなるって言うから待ってられなくて……来ちゃった♡」


 隣子は笑顔でそう言うと、俺の胸元に顔を埋めてこう言った。


「……あれ? おかしいな……?残業って言ってたのに料理の匂いがする。それに……女の匂いも、ね?」


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