第3話 センケツノカノジョ
朝、俺は非常に憂鬱な気分で出社する。
今までも休日出勤は嫌だったが、彼女ができてデートの約束をしていたとなると嫌さ倍増だ。
「お、秋山お前も来たのか」
「おはようございます。岩田さん」
タイムカードを押して、部屋に入ると先輩である岩田さんがいた。岩田さんは社交的で誰とでも話せる人で、ちょっと厳しいところもあるけど、面倒見もよく、後輩が無理な指示で困っていたら上司に意見してくれたりもするとても頼りになる人だ。
「おう、おはよう。ってことは今日は俺と秋山と小野寺の3人か」
「小野寺もいるんですか?」
「ああ、今お茶を入れにいってくれた所なんだけど……」
岩田さんが言い終わる前に小野寺がコーヒーカップを二つのせたお盆を持って戻ってきた。
「お茶入りました〜って秋山さん!? 来てたんですかって……きゃあっ!」
俺に気を取られてか小野寺は躓き、コケはしなかったがカップはお盆の上で倒れ中のコーヒーがこぼれてしまった。
「ご、ごめんなさ〜い!すぐ入れ直してきます〜!!」
小野寺は慌ててもう一度お茶を入れに戻る。
「今日も元気そうだな小野寺は……」
「そ、そうですね……」
小野寺夏海はドジで抜けてるところも多いが明るく元気で人懐っこい性格なのもあり、みんなに好かれている。
「ま、今日は平尾課長もいないことだし! 3人でのんびりやるか!」
「そうですね!」
♢ ♢ ♢
「ううっ……こ、ここは……!?」
男が目を覚ますとそこは見知らぬ部屋だった。床には白いマットが引かれ、電気はついているが窓は全て黒いカーテンで覆われている。時計は見当たらず、腕時計を見ようとして自分が裸にされ、椅子に体を縛られていることに気がついた。
「ぐっ……!」
なんとか外れないかと体を動かすが、かなりキツく縛られており外れる気配はない。
「あれ?もう起きちゃった?まぁいいか」
扉が開き国民的ヒーローであるバッタ戦士のお面をつけ、白の長いTシャツをワンピースのように着た人物が部屋に入ってきた。声や体格からして若い女だと思われる。そして剣道の竹刀を持ち運ぶ時の袋のようなものを持っていた。
「だ、誰だアンタは!?」
「どうも初めまして、私は悪を成敗する正義のヒーローです……なんて♪」
面の女は縛られた男の前で『一心不乱』と書かれた竹刀袋から鞘に入ったかなり長い一本の刃物を取り出す。そしてまるで刀を抜くように刀身を現す。その姿はまるで日本刀のようだ。
「ま、まさか……それで私を!?」
「この包丁は悪を切る為のものです……私と望実の愛の
女はそう言うとその長い包丁を男の頭部目掛けて横薙ぎに振るう。
「うわぁぁっがぁあ!! 血、血がぁ!!」
刃は男の額を軽く裂き、血が溢れ出る。
「フフ、切れ味に問題はないわね」
女はお面のせいで表情は見えないが、語調から楽しんでるようにみえた。そして次は包丁を振りかぶり、男の左肩に振り下ろす。
「がはぁっっあぁぁっ!!」
男は声にならない悲鳴をあげる。肩から血が溢れ出し、白い床を真紅に染めていく。
「本当はもっと苦しめてやりたいんだけど、オッサンの声聞いても仕方ないのよね……っと!」
そう言いながら力を加え、より刃を食い込ませる。
「や、やめて、くれ……たすけて……」
男が助けを懇願したのが通じたのか、携帯のメッセージを知らせる通知音が鳴った。女は包丁を肩から引き抜き、台の上に置いてあるスマホを手に取った。
「あ、望実からメッセージきてる!今日は定時に帰るって!!じゃあさっさと終わらさせないと、シャワーも浴びなきゃだし!」
女はスマホを置くと、もう一度男の元へ歩み寄る。そして包丁を叫んで開いている口の中へ入れ、横へ口が裂けるように力を加える。
「んんぅぅぅっ!!!」
口の中には大量の血が溢れ出し、男は声をあげることも出来ない。男の口は左側に大きく裂け、まるで映画で見る特殊メイクのようだ。
「じゃ、これで終わりだね」
包丁の刃を首元へ沿わし、力一杯押し当てる。刃が首を切り裂き、血が吹き出す。大量の血液が刃を赤く染め上げる。返り血で白い服は真っ赤になっていた。そして最後に刃を引き抜く。まるでトドメと言わんばかりに男はぐたりとした。
「……私と望実の邪魔をする奴は許さないんだから。さ、後片付けしないと!」
………
……
…
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