■04 俺の提案
校内放送から間もなくして担任である高橋先生が教室に入ってくる。
高橋先生は1年の時も担任をしていた人で担当は数学である。
年齢は20代後半で真面目な女性教師という見た目をしているが、愛嬌があり生徒からも人気が高い教師だ。
「おはようございます。今年も私が担任を務めるからよろしくね! それじゃ、準備が整ったら体育館に向かうから準備をしてください」
入学式は体育館で行われるため、高橋先生の指示に従い俺達は体育館へと向かう。
体育館に到着すると、すでに新入生がぞろぞろ入り込んでおり、愛花を探すと比較的すぐに見つかった。愛花と目線が合うとニコっと微笑み、小さく手を振ってくる。
くそ、可愛いすぎる。
入学式は半分寝て過ごし皆が立ち上がった時に目が覚め、急いで立ち上がり教室に戻って席に座る。
ガラッ――
高橋先生が教室に戻ってくる。
「さて、入学式も終わったことだし、さっそく春休みの宿題でも提出してもらおうかしら」
俺も含めて大多数の学生から悲鳴に似た声が上がる。
「あはは……だろうと思ったから週末明けに延期しますね。みんなあと数日あるからまだ残っている人はやっておくように」
高橋先生はとても魅力的な提案をしてきたので、悲鳴を上げていた生徒は一気に歓喜の声に変わる。
俺も例外ではなかった。
高橋先生の
授業内容は殆どが春休み前の復習ばかりで、後半の意識はほぼ無いに等しい状態で授業を過ごしているとあっという間にお昼休みになる。
昼休みになると俺は思いっきり伸びをして、程よい眠気を吹き飛ばす。
すると、樹が俺の席に近づいてくる。
「お目覚めのようだな和樹、いい夢は見れたか?」
「お陰様で……ふぁぁ……」
俺はあくびをしながら適当に返答を返しておく。
「……山守君、学校初日から盛大に寝ていたけど、そんな調子で午後は大丈夫なの?」
恵も呆れながら話しかけてくる。
「さすがの俺も午後は起きてるって」
「本当かしら……」
「まぁまぁ、腹が減っては何とやらと言うし、学食に行こうではないか」
確かに俺も腹が良い感じに空いてきたので樹の申し出に乗ることにした。
「だな、愛花と学食前で待ち合わせもしているし早くいこうか」
俺達は教室を出て学食へ向かった。
学食前には既に愛花達が待っており、俺に気付いて愛花は手を振ってくる。
「兄さん、こっちです!」
「ごめんごめん、ちょっと雑談してたから遅れた」
俺は小走りで愛花達と合流する。
「愛花ちゃん、久しぶりだね! 元気にしていたか?」
「はい! 斎藤先輩も元気そうでなによりです」
二人は前から面識があるから問題なさそうだ。
「あ、あの……初めまして、私……小泉梓って言います。よ……よろしくお願いいたします」
問題ありそうなのは梓ちゃんの方で、緊張しているのが見てわかる。
「はっはっ! そんなに緊張しなくても食って食べたりしないから安心したまえ」
なんか変なことを言っているが突っ込まないでおこう。
「斎藤君、誤解されそうなこと言ってんじゃないわよ。後輩の子が怖がるでしょ? ごめんね、変なやつで」
大抵は豊崎が突っ込んでくれるからだ。
「私も初めましてかな? 橘アリサっていいます。お二人ともよろしくお願いします」
アリサちゃんは特に緊張した様子もなく、さらっと樹たちと挨拶を交わす。
「橘さんもよろしくね、私は豊崎恵っていうの。話の成り行きでお昼ご一緒することになったけど、これも何かの縁だから何か困った事が合ったら何でもお姉さんに相談してね」
「「はい!」」
豊崎はさっそく先輩風をふかしていたが、いい感じに1年生組の安心感を引き出してくれたようだ。
「さて、それじゃ人も混んでくる前に席でも取っておこうか」
俺は皆に告げると学食へ入る。
学食の席を一通り見て、6人が座れそうな空間があったのでそのテーブルへと向かった。
「さて、俺は席見張ってるから先になんか買ってこいよ」
「気が利くわね。それじゃ行ってくるわ」
「それでは行ってくる!」
「兄さんすみません。行ってきますね」
「……ありがとうございます和樹さん、行ってきますね」
「愛花のお兄さんありがとう! 行ってくるねー!」
俺の意図を組んでくれたのか、各々自分の欲しい食べ物を買いに行く。
軽食を買った樹が初めに戻ってきたので、バトンタッチするかのように席を任せて俺も飯を買いにいく。
食べるものは正直なんでもいいので、今日のおすすめと紙が張り出しされているカツ丼にでもしておこう。
俺が席に戻ると、既に5人が席に座っている。
こういう時は見知った者同士で固まって座るもので、見事に1年と2年が見合いするかのように対面に座っている。
俺も樹たちが座っている方に座るとカツ丼をテーブルの上に置く。
「おまたせ、それじゃ食べようぜ」
各々が頂きますをして食べ始める。
「愛花のクラスは昼休み後の授業ってあるのか?」
「はい、1限だけですがありますよ」
愛花は箸を止めて返答する。
「俺は2限あるから終わる時間が別々になるな。待たせるのも悪いし先に帰っておいてくれ」
「わかりました。それじゃ夕御飯の用意をして待ってますね」
俺は簡単な連絡事項を済ますと、瞬殺でカツ丼を食べ終わる。
腹八分目ぐらいには膨れたので満足しつつ、周りも見ているとだいたい食べ終わっていた。
「愛花、高校生活は楽しくやっていけそうか?」
食べ終わっていた愛花に向かって質問してみる。
「そうですね。梓ちゃんやアリサちゃんとも一緒のクラスですし、楽しくやっていけると思います!」
愛花は他の2人の顔を見ながら頷いていた。
「一緒のクラスになったんだ! よかったよ。愛花の事よろしくね梓ちゃん、アリサちゃん」
俺は二人に改めて愛花の事をお願いする。
「さすがの和樹も学校でずっと妹ちゃんの傍にいるって事は出来ないからな」
「そうね。学校でも兄妹同士でベタベタしてたらさすがに変な目で見られるわよ」
2人は俺の愛花に対する
「ふっふっふ……そこでだ! 今回俺は良いアイデアを思いついている!」
釘を打ってくる二人をよそに俺は愛花達に提案をすることにした。
「何ですか? 兄さん」
愛花が頭の上に?マークが浮かんでそうな顔でこちらを見てくる。
「それは……
5人に向けて俺は言い放った。
――――――――――――――――
「面白かった! 続きが見たい!」
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