■02 妹の友達

「「行ってきます」」


愛花と一緒に家に向かって行ってきますと言って歩き出す。

意味ない事だと理解しているが、子供の頃からの習慣というやつだ。




家から出ると静かな住宅街が視界に広がり、通勤や通学をする人がチラホラいる。

俺は愛花の歩く速度に合わせながら歩く。


「兄さんと一緒に通学するのって久しぶりですよね、兄さんが中学を卒業した時以来でしょうか」

「だな、中学と高校をもう少し近くに建ててくれたら問題なかったんだけどね」


俺は愛花と久しぶりの通学に少し緊張しながら話す。

以前通っていた中学は、今向かっている高校とは逆方向でとても一緒に通学なんてできなかった。


「あと、今日から通う学校だけど、丘の上にあるから坂道が結構続くから朝から疲れるんだよな」

「ふふ、朝から良い運動が出来ていいじゃないですか」


愛花は笑いながら答える。


「はは、ポジティブ思考で何よりだ」


俺は乾いた笑いをらしながら話す。


「たしか、愛花って中学の時はあずさちゃんとよく通学していたけど、高校に入ってからはどうなの?」

「はい! 梓ちゃんも同じ高校に入学しているので一緒に通学する約束をしています! 確か、待ち合わせ場所にもう少しで着くと思いますが」


愛花には小学生の時からの友達であずさちゃんという仲良しの女の子がいる。

よく家にも遊びに来ていたので、俺とも面識がある子だ。


俺は愛花の交友関係には常にアンテナを張っており、愛花と仲良くなった相手とは一度話をして、その人となりを理解した上で排除するか、受け入れるかを決めている。

その結果、梓ちゃんは一発OKでとてもいい子だった為、すぐに受け入れているという訳だ。




そんなことを考えていると、少し先のカーブミラー下にポツンと立っている見覚えのある子が見えてきた。

その子は俺たちに気付くと手を振ってくる。


「……おはようございます! 愛花ちゃんに和樹さん!」

「おはよう、梓ちゃん!」

「おはようございます! 梓ちゃん」


梓ちゃんと合流すると、俺と愛花は梓ちゃんと挨拶を交わす。


「……今日からまた和樹さんと一緒に通学できるようになって嬉しいです!」

「ありがとう! 俺も同感だよ」


彼女は小泉梓こいずみあずさちゃんで非常に温厚な子でおっとりとした雰囲気を常に出している非常に心優しい女の子だ。

髪型は黒髪のおかっぱで手入れが行き届いたセミロングの髪の長さだ。

まさに癒し系の梓ちゃんが愛花の友達になってくれて素直に嬉しいし、今後も愛花と仲良くしてもらいたいと思っている。


「それじゃ行こっか」


俺が先をうながそうとすると梓ちゃんが腕にしてる腕時計を見る。


「……すみません。もう1人、待ち合わせしている子がいるんです」


梓ちゃんがそう言うと、遠くから小走りで近づいてくる子が見えてきた。




「ごめーん! ちょっと遅れちゃった!」


近づいて来るや否や謝罪から入ったこの子は橘アリサ(たちばな)ちゃんだ。

金髪のボブカットでカチューシャリボンをつけており、アメリカの父親と日本の母親のハーフで小学校卒業までは日本に住んでいたので日本語は非常に上手く話せる。


父親の仕事の都合で小学生卒業から中学生2年までアメリカで過ごした後に日本に戻ってきたが、愛花達と出会い友達になったようだ。


「……アリサちゃん! ……もう、来ないかと思いましたよ」

「おはようございます、アリサちゃん。高校でもよろしくお願いします」

「ごめんごめん梓っ! 愛花もおはよう。新しい高校でもよろしくね!」


アリサちゃんは愛花達と挨拶をし終えると俺の方を見る。


「あ! 愛花のお兄さんじゃないですか! おはようございます!」


俺の存在に気付くと元気よく挨拶をしてくる。非常に気持ちのいい挨拶だった。


「おはようアリサちゃん、相変わらず元気だね!」

「ふふんっ! それが私の取柄みたいなものですから」


アリサちゃんとは愛花が中学3年の時に家に呼んだ事があるので面識はある子だ。

最初はあまり元気がなかったが、次第に元気ハツラツっ子へと変貌へんぼうしていった。




各々挨拶を済ますと愛花は俺の方を見る。


「それじゃ兄さん行きましょうか」


ニコッと笑顔を俺に向けながら話しかける。


「だな、それじゃ行こっか」


俺は妹の交友関係が良好で心底安心しながら答える。


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