のどに詰まる
片葉 彩愛沙
のどに詰まる
親からもらったパチンコ玉を、宝箱に入れて、たまに取り出している。
自分はパチンコに行くことはないけど、捨てるのももったいない気がして持っているのだ。
しかし、私の親もパチンコに行っているわけではない。
ならこれはどこから巡ってきたのだろう。
「これ誰からもらったの?」
ダイニングでテレビを見て柿の種を食べている父親に聞いてみた。
「それ何ね?」
「パチンコ玉よ」
「そんなのあげたかな~? あんたがどっからかもらってきたわけじゃないのかね」
「そうだっけな?」
テーブルに置くと、カーーーーッと特有の高い音を出しながら転がった。
カンッと床に落ちる。それでも止まる様子はない。
こういうものはどうして止まらないのだろうと思う。
家が絶妙に傾いているのかなと、考えてみる。
冷蔵庫の裏側に行ってから、ようやく止まったようだ。
横から手を伸ばして、埃ごと摘まみ取った。
見ていると、もやもやする。出所がわからないパチンコ玉を持っていたって、何の得もないし。冷蔵庫の裏に行ったから不潔だ。
あと、私は口唇期が治ってないから、口に何度も入れた。アカン。急に実感して、これを捨てることにした。
家の外には、雑草が生えた駐車場がある。
自家用車が四台止まっていて、猫も5匹くらいいる。
猫ちゃんが飲み込んでしまわないように、肥溜めに投げることにする。
高くなって刈り取った雑草や、木の枝、収穫時期を逃した野菜などが捨ててある。
ちょうど、仏壇の花を買い替えたらしく、紫色と白色の菊が打ち捨てられていた。
ポーイと投げた。枝の間を抜けて、下のやわらかい部分に到達した音が聞こえた。
猫ちゃんはもう成猫ばっかりだから、潜り込むってことはないだろう。
何日か後、私はまた肥溜めを見に来ていた。そこに銀色の小玉はある。そのことを確認する。
猫ちゃんが飲み込んでしまってないか、心配なのだ。
今はうっかり忘れて、見に来なくて、無くなっていたらどうしよう。地面に埋まってしまったと考えるのが良いんだけれど。
今いる猫ちゃんが、子どもを産んだら、この肥溜めで遊ぶかもしれない。そうしたら、パチンコ玉を飲み込んでしまうかもしれない。どこか他人事の不安が、私に付きまとった。
どうしたらその不満がなくなるか。答えは分かっていて、またあのパチンコ玉を取り出せばいいのだ。
しかし、持っていても邪魔なのはわかっている。
ならどうしようか。
私が飲み込めばいいんじゃないかと、考える自分がいて、想像して噎せる。
のどに詰まる 片葉 彩愛沙 @kataha_nerume
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