亡くし屋の少女は貴方に問う。
亡くし屋の少女、雪乃亞名は夜の学校の屋上に立っていた。短めのサラリとした黒髪を風で揺らし、その髪を顔にかからないように左手で耳元へとかける。
その前髪が少しかかった隙間からはとても深い青色をしていてまるで吸い込まれそうな瞳が覗いていた。
屋上にはもう一人少女が立っていた。こちらは今にも落ちそうな縁に立っていて柵に手をかけ辛うじて落ちないでいるようなそんな状況だ。
亡くし屋の少女は聞いた。
「貴方は、死ぬことが悪いことだと思いますか?」
と。
対して問われた少女は言った。
「だって、しょうがないじゃない。これしか、これしかないんだもの」
亡くし屋の少女は続ける。
「それは貴方が自ら選んだことですか? それとも誰かのせいにしたいからですか?」
と。
少女は震えながら答える。
「し、死んであいつらを見返してやるのよっ、遺書だってちゃんと書いてあるし」
亡くし屋の少女は伏し目がちに言った。
「死はそこにあるだけです。それでも貴方はそれを選びますか?」
と。
少女はそれに動揺し、
「それってどういうことなのよ」
と亡くし屋の少女を問い詰める。
すると亡くし屋の少女は、
「わたしは死んだことがないのでわかりません」
と答えた。
それに少女は憤りを感じ、
「いいから早くしてよ! 殺してくれるんでしょ!」
と叫び始める。
亡くし屋の少女は動じず、
「わたしは殺しません。亡くすだけ」
そう言った。
続けてこうも言った。
「死ぬことは悪いことだとわたしは思いません。けれどそれが自分で、自らの意思で選んだ『死』でなければわたしは亡くすことはしない。新たにそう決めたんです」
「貴方は死ぬことは悪いことだと思いますか?」
亡くし屋の少女は死神を雇う。 散花 @sanka_sweera
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