第5話[勇者誕生]

フッ、どうやら闇とは切っても切れない縁のようだな。

などと格好をつけてみたが、何も見えないのは辛い。

それにロクに身動きも取れない。

更に言うなら、男と女、子供の話し声まで聞こえてくる。


「さあっ、タッティーナ」

「お乳の時間ですよ」


タッティーナ?

お乳?

俺はこの時理解した。

産まれて間もない赤ん坊なのだと……。

つか、二十代半ばの俺がママのオッパイを吸うだと……。

冗談じゃない。

離乳食をくれ。

気合いで歯を生やすから離乳食をくれ。

そう強く念じても通じる訳も無く、赤ちゃんの本能なのか俺は母の乳房にシャブリつき、乳を吸い上げた。


「フフフ、よく飲む子ね」


「ああ、そうだな」

「きっと立派な勇者に育つぞ」


俺は乳を吸いながら、これからこの羞恥に耐えなければならないのかと絶望していた。


第5話 完

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