金の矢、鉛の矢

碧月 葉

prologue: 落ちこぼれ

 学校って残酷だよね。

 そうは思わない?


 国語、数学、英語……全部点数化される。

 体育だって、どんなに苦手でもみんな同じことしなくちゃいけない。

 音楽もヘタでも歌わなくちゃいけないし、楽譜が読めなくても演奏しなくちゃいけない。

 手先が不器用でも、工作や裁縫でモノを作り上げる。


 そして、出来なければみんなの前で恥をかく。


 勉強は出来ない、運動もダメ、更に音痴な出来損ないの僕にとって、そんな場所を楽しむ事は難しい。

 殆ど上手くいかないのに、どこからやる気を引っ張り出せば良いんだろう。

 

 学校でやる事。将来困らない為って言うけどさ、本当に役に立つのかな?


 ニュースでやってるよ。

 今ある職業の多くが、AIに取って代わられて、将来無くなっちゃうんだって。

 

 その将来ってさ、遥か未来じゃ無いんだよ。

 ほんのちょっと先のこと。

 

 僕の今の苦しみはさ、本当に僕のためになるの?



「なんでできない!」

「やる気がない子」

「怠けている……」


 僕だって思ったよ。

 どうしてみんなと同じように出来ないんだろうって。

 何度も、何度も、何度も。

 やる気だけで万事上手くいくならさ、落ちこぼれる奴なんて、そもそも生まれないんじゃないかな?


 苦しいよ。

 

 どうしようもなく、不安、不満、時にイライラが込み上げてくる。

 

 僕にはなんの価値も無い。

 きっと生きていて意味なんか無い。

 居なくなっても良いのかな?


 考えちゃいけないって思っても、ふとそんな考えが湧く時もある。


 いっそ暴れちゃおうかな?

 「ダメ」って言われてることを、片っ端からやったらどうだろう?

 それで、何かが変わるだろうか。


 根性なしの僕ができっこない、馬鹿な考えがふらふらと浮かぶ時もある。

 

 僕はこのまま、クラスからも、学校からも、そのうち社会からもこぼれ落ちて、生ききれなくなって、消えるだけの人生なんじゃないか?



 ああもう。

 いつもこんなこと考えている訳じゃないよ。

 僕、中二だし。

 たまに考えるんだよ。たまにね。

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