第34話 捜 索(1)

 俺と伊集院君は「反応速度」と「飛行」「隠密」を併用しつつM4カービン型神器を構えて隠蔽障壁を展開しながら空中を機動して異空間の外に飛び出した!



 スイートルームのリビングには拳銃を手に持った男が一人こちらを向いて立っている! 行動加速をしている俺たちにとっては静止しているも同然なので落ち着いて空中で姿勢を制御しつつ「睡眠5」を放つ。「睡眠5」が命中した男はゆっくりとうつ伏せに倒れていった。



 俺は部屋に敵が残っていないか「探知」を併用しながら室内を検索する。いないようだね。



『よし、伊集院君。敵はいないみたい。「反応速度」は魔力の消費が激しいから解除しよう』



 そう言いながら伊集院君の方を見ると、精気の無い虚ろな目をして突っ立っている! おかしい! 直後に体全体にゾワッと悪寒を感じる!



 「反応速度」と「飛行」を再起動して部屋の角隅に高速移動、隠蔽障壁を展開して防御しつつ身構える! 



 部屋を改めて「探知」で検索、視線でもチェックするも何も見当たらない。ヤバい、想定外の強敵が居る!


MP amount 49/100 remaining time 155


 魔力残量が49%だ! このままのペースで魔法を使い続けるとあと155秒しか持たない!

 俺はアイテムボックスから亜空間ルームコントローラーを取り出すと亜空間ルーム開口部を展開して中に入り込む。開口部に備え付けの隠蔽障壁を取り付けたところで起動していた魔法をすべて停止した。伊集院君の方を見てみると床に沈むように落ちていった。またしても吸血鬼スキルによって異空間に囚われてしまったのか。


 ーそうだ、ここからなら携帯が! ダメだ10日間の間にバッテリーが切れていたーじゃあどうすればいいのかー















【265日目 東京時間8月31日(水)21時頃 アメリカ大使館別館】



 エマ園長がみんなを見回す。



「千葉県S市の御子柴君のお母さんから電話だったんだけど御子柴君と伊集院君が旅行に行ったきり帰ってこないんですって。


「えーと御子柴君のお母さまが仰るには、8月21日に伊集院君と一緒に九州旅行に行くと行って出かけたけど帰る予定の一週間後になっても帰ってこない。

旅行会社に問い合わせたらツアーはキャンセルされていてツアーには参加してないって。で、携帯電話、メール、SNSどれにも反応が無くて警察に届けた。それで知り合である私のところも電話してきたってわけ。アメリカ大使館でバイトしてるからね、彼らは」


「うわーなんかヤバい雰囲気がする。吸血鬼に襲われたかな? でも彼らにはアメリカで吸血鬼に襲撃された話はしてないし彼らを吸血鬼が狙うかなあ。ありえなくはないのかあ。しかしツアーをキャンセルって自分たちでしたんだよね。どういうことだろう?」



 うーん。彼らがどこに行ってしまったのか。消えてしまったのか。さっぱり分からないし、手がかりがない。ミラ副園長が言うように吸血鬼のことを話してないんだから吸血鬼絡みではないと思うんだけれど。



「アリス様、何か捜索系の神技、魔法はありませんか?」




「そうだ! アタシは御子柴君と一緒に異世界に飛ばされて同じパーティで過ごしたから知ってるんだけど御子柴君の『聖剣』は御子柴君の持っている『聖剣スキル』を使って『エネミーサーチ』って技が使えるんだよ。もしかしたらそれを使って人類の敵でも探しに行ったのかな。夏休みで暇だったから」



「ん? 茜ちゃん、それって敵の居場所を探知するスキルなのかな? なるほど、そんな便利技が。そういえば茜ちゃんの『お宝探知』は? スミソニアン自然史博物館で変な『黒くて丸い石』を探知したじゃん。

御子柴君が持ってる『聖剣』を探知できるんじゃない?」




「うん基本的には出来るんだけど、あの子たちは聖剣とかアリスちゃんにもらった神器とかはアイテムボックスに入れっぱなしでしょう? なんか異空間とか亜空間だとすぐ近くじゃないと分かんないんだよね」


「異空間にあっても近くなら分かるってのも凄いね。そういえばあの子達って強化カモメを連れて行ってるはずだからー カモメ達に取り付けた魔法を使えるようになる『淡く輝く球体』は探知できるのでは?」


「……探知できるかも。えーとアメリカに居た時にはー 飛行機でワシントンからタンパに行く時に途中まで半分くらいの距離? ワシントンの強化カモメの『淡く輝く球体』をギリギリ探知できたな。ちょっと暇だったから試してみたんだよね。ちなみにアメリカ政府に渡した巨大永久発電機の場所は地球上のどこにあっても分かるよ」




「であればアリス様、明日は学校の登校日なんですがお休みしていただいてー私の方でアメリカ第5空軍に要請をして航空機を出してもらいましょう。そうですね、この際贅沢は言えませんからC-17を横田から飛ばしてもらって関東から九州、沖縄。そして北海道まで戻ってもらえば日本全国を探索できるでしょう」



「アリスちゃんアタシ地理的な距離があんまりわかんないけどコリンズさんの言ってることでいいのかな?」


「うん良いと思う。手がかりが他に全然ないんだからやってみようよ」









 その後、コリンズさんから先任書記官のJCS空軍中将さんに頼んだところ直ちに統合参謀本部に指示が行っていつものCー37BガルフストリームG550ビジネスジェットが横田に引き返して明日の朝に私たちを乗せて飛行してくれることになった。すみませんありがとうございます。



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