第32話 ソウル

 8月21日。俺と伊集院君の二人は成田空港の国際線出発ロビーからゲートを通って成田発仁川国際空港行きの飛行機の搭乗ゲートに向かっている。


 7月の末にテレビで吸血鬼と思われる中年男を見つけた。この男を調べた結果、ここ最近に北の国家指導者の側近として頻繁に露出している人物なのに過去に何をやっていたのか経歴が全く分からないらしい……間違いない、この男は吸血鬼だ! 


 俺と伊集院君はこの吸血鬼を討伐もしくは捕らえることができないか検討した。その結果、俺と伊集院君は勇者と魔王なんだから十分に討伐できると考えた。だって俺たちはそれぞれの異世界で最強クラスだったんだからね? 伊集院君は魔法の射程が20mになって弱体化したって言ってるけど十分に恐ろしい攻撃だ。特に闇弾。


 それにアリスさんから能力を強化してもらっている俺たちのステータスはこれだ!



名前 御子柴平次

種族 人(男性) 

年齢 16  体力G  魔力F


魔法 水弾5光弾5土弾5風弾5火弾5

   闇弾5回復5睡眠5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

   神託5動物調教5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5老化緩和5

スキル 火魔法5水魔法5光魔法5

   神聖魔法5

   身体強化5毒耐性5麻痺耐性5

   剣術5聖剣術5槍術5神槍術5

   アイテムボックス5鑑定5

   異世界言語(万能)

称号 帰ってきた勇者

   亜神アリス軍団軍曹



名前 伊集院平助

種族 人(男性) 

年齢 16  体力G  魔力F


魔法 水弾5光弾5土弾5風弾5火弾5

   闇弾5回復5睡眠5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

   魔物調教5神託5動物調教5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5老化緩和5

称号 異世界から帰ってきた男

   魔王

   亜神アリス軍団軍曹



 俺は元から持っていたスキルに加えて伊集院君タイプの魔術を大量に転写してもらった。伊集院君は能力は余り増えていないけど、言語能力として英語、中国語、韓国語を知識転写してもらっている。日本で活動するときに使えると便利な外国語ということで俺ももらっている。


 それと動物調教5……アリスさんから強化カモメを2羽ずつもらっているんだけど……こいつらが恐ろしいほどの強さ。一対一で勝負したら俺たちだって危ない。こいつ等は飛行できるというアドバンテージが有利すぎる……


 アリスさんからは亜空間ルームコントローラーとM4カービン型個人携行神器を支給してもらっている。亜空間コントローラーはアイテムボックスの下位互換に見えるが生き物が入れるので緊急時のシェルターになる。M4カービン型個人携行神器は防御障壁が凄い。


 そして最後に俺の聖剣。俺の持つ聖剣技でその聖剣の能力を十二分に開放できる。負けるような気が全くしない。聖剣の見た目は中二病的デザインだからちょっと嫌なのだけど。




 ……というわけで俺と伊集院君の二人は成田発仁川国際空港行きの飛行機に乗って韓国に到着した。なお。親には九州旅行に行くといって出てきた。さすがに海外旅行だと許可がおりなさそうだったからね……


 仁川空港からソウルまでは高速バスで移動する。二人とも韓国語が完璧なので外国人旅行者とも思われないだろう。韓国では未成年者だけでホテルには泊まれないらしいけど探せば泊まれるところはあった。夕方にソウルで予約していたホテルにチェックインして一息つく。





「御子柴君、早速聖剣を出して吸血鬼が居るかどうか確かめてみてよ」


「うんわかったよ」


 俺はアイテムボックスから聖剣を取り出してエネミーサーチを試みる。


 聖剣がほのかに光り輝くとゆっくりとある方向に向こうとする……しかし反応は複数の方向から感じられて、一点に確定しない。これはターゲットの吸血鬼が複数いることを表している。聖剣を操っている俺にはちゃんと分解できるので複数の聖剣の示す方向を慎重に記録して地図と重ねる。



「多分これは北朝鮮の平壌だね。で、こっちは韓国大統領府。どっちも行くのは無理かなあ……これはソウル市内だけど何処なんだろう? 大統領府みたいな重要施設じゃなさそうだからホテルとか吸血鬼が潜伏するセーフハウスかな? これを目指して行ってみる?」


「そうだね。行ってみようか」





 俺たちはホテルから出ると聖剣が示す方向に向かって歩き出した。既に日没となっており辺りは暗い。ある程度歩いたら地図ソフトで位置を確認して紙の地図上でプロットしながら進む。時々聖剣を目立たぬようにコッソリと出して確認する。




一時間くらいかけて恐らく吸血鬼が潜伏しているであろうホテルにたどり着いた。周りを一周しても聖剣のエネミーサーチはホテルの方向を示すので間違いないだろう。



「このホテルだと思うけどどうする?」


「中に入ろうよ。「隠密」を使えばバレないだろうし」


「よし、行くか」



 俺たちは「隠密」を使ってホテルに入っていく。隠密を使っているから咎められることもない。ホテルの外に居る時から一階や二階ではないことは分かっている……聖剣のエネミーサーチは上下方向も示すのだ。多分4階以上と思われる。




 俺たち二人は階段を使って上がっていく。4階まで登ったら水平方向を示すのでこの階にターゲットがいるはずだ。



「よし。この階だ。この廊下の先だね、M4カービン型個人携行神器を出して防御用障壁を展開しておこう。あと強化カモメたち、敵が近いから援護してね」



 俺と伊集院君はホテルの廊下を進む。10mおきにエネミーサーチをかける。





「この部屋だね……如月さんがいたら「鍵開け」ができるんだろうけどいないからな。闇弾を使ってドアのキーボックスを消滅させるかね?」


『闇弾はかなり大きい発射音がするから良くないと思うよ? それより強化カモメ君に外に出てこの部屋を窓側から観察できないかな? ここからだったら窓際まで20m以内だろうから窓の外の強化カモメと念話が通じるだろうし……どうなの、強化カモメ君?』


『……やってみよう。ちょっと待ってろ……』



 強化カモメはあっという間に飛び去って外への出口を探す。5分くらいして念話が繋がった。



『……マスターたちの目の前の部屋に窓に着いた。広い部屋にテーブルがあって男が二人座って話している』


『カモメ君、部屋の中に入れるかい?』


『……窓が閉まっているので入れない。だがレベル4攻撃魔法の使用許可があれば侵入できる。ただし少々音がする。隠密を使っているので我自体は見つからないと思うがね……』



 俺は伊集院君と顔を合わせて頷きあう。やってみよう。



『レベル4攻撃魔法じゃなくて一番目立たない火弾3を使って侵入してくれ。部屋に入ったら男二人を「睡眠」で眠らせて?』



 強化カモメは直ちに「火弾3」の連発で窓ガラスを蒸発させて部屋に侵入、男を「睡眠4」で眠らせたとのことで、引き続き廊下側のドアを開放するよう指示する。強化カモメってメチャクチャ役に立つ……素晴らしい。




 俺たちが部屋の中に入るとそこは広い客室でスイートルームのようだった。男二人はリビングにあるテーブルに突っ伏している。突っ伏している男たちのステータスを確認する。



名前 ミハイル・ポポフ 

種族 吸血鬼(男性) 

年齢 562  体力 G  魔力E

魔法 ー

身体強化 ー

スキル 闇魔法D 土魔法C 火魔法D 

   精神操作D 噛みつきC 飛行C 

   変身C 血液操作C 霧化C 

   怪力C 再生C 鑑定C 種まきC

称号 吸血鬼士爵



名前 キリル・ペトロフ

種族 吸血鬼(男性) 

年齢 441  体力 G  魔力E

魔法 ー

身体強化 ー

スキル 闇魔法D 土魔法C 火魔法D 

   精神操作D 噛みつきC 飛行C 

   変身C 血液操作C 霧化C 

   怪力C 再生C 鑑定C 種まきC

称号 吸血鬼士爵



「……間違いないね吸血鬼だ。本当に居たよ」


「……どうする?」


「この吸血鬼たちを亜空間ルームに放り込んで撤退しよう。ここにずっと居るわけにはいかないから」



 俺は亜空間ルームの開口部を展開しようと亜空間ルームコントローラーをアイテムボックスから取り出そうとしたとき。いきなり浮遊感に襲われたかと思うと激しい衝撃を体に受けて一瞬気を失ってしまった。







 意識を取り戻した俺は…………あたりを見回すが真っ暗で何も見えないので光弾5を加減して光を生み出す。高さが2mほどの漆黒の空間が広がっている。素早く周囲を見渡すが360度同じである。


 3mほど離れたところに伊集院君が倒れていた。近寄って状態を確認すると息はしているようだ、良かった。


 俺は神聖魔法の「治療」を伊集院君に掛けてみる。俺のスキルの神聖魔法はアリスさんとか伊集院君の「回復」とは違って本当の意味で病気やケガを治すことが出来るチート魔法だ。


 でもよくよく話を聞くとアリスさんの「生命体干渉」「治癒」は病気やケガは勿論、時間が余りたっていなければ死者までも復活させるというとんでもない技だった……上には上がいるなあ。


 とか考えているうちに伊集院君が意識を取り戻した。



「伊集院君、大丈夫かい? どうなったか分かる?」


「……いいや分からない。なんか落とし穴にはまった感じなのかな……?」


「うん、そんな感じ。ここは多分吸血鬼のスキルで生み出された異空間だよ。俺たち閉じ込められたってことだと思う」


「ええー、ヤバい、脱出できるかな? 僕たち親にもアリスさんとか如月さんとかにも黙って韓国に来ちゃっているから……『念話で呼んでみようー強化カモメ君!  ダメだね。念話繋がらない』

……どうしよう? 親に怒られるよ」


「伊集院君、落ち着こうよ。いろいろ試してみよう」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る