第27話 吸血鬼
【240日目 東京時間8月4日(木)1500頃 ワシントン時間 8月4日(木)0200頃】
ワシントンにある自宅で寝ているところを襲撃されたものの強化カモメに迎撃させて撃退、廊下に倒れている吸血鬼ソフィア・タッカーを囲んで私、エマ園長、茜ちゃん……三人とも無言である。
「あ、そうだ! 警備の人たちって、あの吸血鬼男爵に何かされたんじゃない?」
「確かに、さすがエマ園長。えっと……警備の人たちって5人が外に居るんだよね、亜空間ルーム開口部展開! よし、このソフィア・タッカーを亜空間ルームに入れて逃げられないようにしておこう。
それからマイホーム開口部展開! 茜ちゃんはまだ戦闘に慣れてないからマイホームに入ってて。私とエマ園長で警備の人たちを確認してくるから」
私とエマ園長は再びM4カービン型携行神器を構えて隠蔽障壁も作動させる。廊下を歩いて玄関からゆっくりと外へと出ていく。
警備員は5人まとまってエントランスから外れた芝生の上に突っ立っている。
何だろう……意識ないのかな? 五メートル以内に近づくと「ステータス」が通るようになる。
名前 ジュリアン・ライト
種族 人(男性)
年齢 29 体力 G 魔力F
魔法 ー
身体強化 ー
スキル ー
称号 ー
特に異常は無さそうだ。ソフィア・タッカーが持っていたスキル「精神操作」の効果なのだろうか?だったら私の神技である生命体干渉「治癒」で回復できるだろう。やってみるか。
ーー生命体干渉ーー「治癒!」
突っ立っていたジュリアンさんは急に精気を取り戻して辺りを見回しだした。その隙に他の4人にも「治癒」をかけていく。
ーー生命体干渉ーー「治癒!」
「ジュリアンさん、大丈夫ですか?ちょっと意識を失っていましたか?気分が優れないようでしたらよろしければ家の中に入って休んでくださいね」
「ああ、あー、はい大丈夫です……我々にはあっちのバンの待機場所がありますから……ありがとうございます、お嬢様」
「お体には気をつけてくださいね?それでは」
♢
私とエマ園長は再び家に戻るとマイホーム開口部を展開して二人してマイホームに入って開口部を閉鎖した。これで完全に安全である。亜空間ルームを開けてソフィア・タッカーを運び出す。
名前 ソフィア・タッカー
種族 人(女性) 吸血鬼
年齢 23 体力 G 魔力D
魔法 ー
身体強化 ー
スキル 精神操作E 噛みつきE 飛行E
変身E 血液操作E 怪力E
再生E 鑑定E 吸血鬼の種
称号 吸血鬼男爵の??
吸血鬼ソフィア・タッカーを再び囲んで私、エマ園長、茜ちゃん……再び三人とも無言である……しょうがないので私が話す事にする。
「というわけで第1回吸血鬼対策会議を開催します!」
「……吸血鬼なんてホントにいたんだね。茜ちゃんから話は聞いてたけど半信半疑だったよ。何しろ『異世界から帰還したチート野郎や吸血鬼。死霊使い。そして凶悪な宇宙人』って言われるとてっきり冗談なのかなと思っちゃって……ごめんね?」
「エマ園長、それほど自分を卑下することはありませんよ? なんなら私だって何一つ信じてませんでしたからね。茜ちゃんのいう事なら全て信じたいといっても過言ではないこの私、アリスが!
正直いって冗談も休み休み言いなさいよと思っておりました……申し訳ございません」
「……そのことはまあいいでしょう。私だって半信半疑だったし。御子柴君と伊集院君が同じことを言われたっていうからホントなのかなぁって思ったくらいだし」
「アリスちゃんちょっと待って。コリンズさんに相談してみよう。電話するから」
エマさんがビデオ会議に設定してコリンズさんに通話しようとして。
「アリスちゃん、開口部を開けて隠蔽障壁にしてくれない?圏外になっちゃってる」
マイホームを閉じてしまうと完全な閉鎖異空間なので当然圏外となる。隠蔽障壁をセットすると害のない電磁波は通すので携帯電話も繋がるのだ。
言われたとおりに隠蔽障壁をセットし終わったのでエマ園長が再度電話をかける。
「ああコリンズさん? いま電話良いですか?緊急事態です! とっても大変なことが起こりましたが私とアリスちゃん、そして茜ちゃんの三人で見事切り抜けました。勲章ものかもしれません。その件でみんなで話し合うからビデオ会議モードにしますよ?」
ミラ副園長にもビデオ通話を繋げてコリンズさんとミラ副園長がビデオ参加状態で先程の襲撃の状況を振り返ってみんなが気づいたことを話し合って一通り事実関係を整理し終わった。
「さて……この女吸血鬼ソフィア・タッカーと一緒に襲撃してきた黒髪の男ですが。
この男の名前は『吸血鬼男爵ジョセフ・ゲオルゲ』。残された右足を茜ちゃんが鑑定して判明しました。彼は強化カモメの攻撃魔法「土弾4」の攻撃を受けて右足を切断されて倒れていましたが突如床に沈むように消滅して逃走しました。
そしてこの二人の吸血鬼を含む六人の賊が迷いなくこの家を襲撃してきたということは恐らく私を追ってきたこと……このソフィア・タッカーは私がタンパで出会ってしつこく絡んできた女。その時から私を狙っていたのでしょう……
更には協力者がワシントン界隈にいて私の情報が漏れている事が危惧されるのです」
「アリス様、申し訳なかった。私も吸血鬼のことは聞いていたのに吸血鬼がワシントンに浸透しているなんて想定していなかった。
……しかしどのように対応するべきか……吸血鬼を判別するには『ステータス』が使える必要がありますね? しかし『ステータス』を使える者を大量に養成する訳にも?」
「コリンズさん、もうちょっと話し合って整理しましょう。
まずこの女吸血鬼のステータスは私の転写できる魔術とは根本的に体系が異なるようです。更に茜ちゃんや御子柴君のスキルとも違っていると思います。
ということは私を作り出した時空神とも、白い世界の女とも異なる神が創り出した世界から来たのではないかと思うんです。
この女吸血鬼ソフィアのスキルを消去もしくはコピーしようと試みましたが消去はできそうですがコピーは無理そうです。
要するにスキルを消去して無力化は出来そうです。
異世界イースで竜亜神の信者を上書きした実績がありますから吸血鬼ソフィアのステータスにある『吸血鬼男爵の??』これも上書きできる可能性があります」
「うん、なるほど……だいたい分かったような気がするよアリスちゃん……となると……
吸血鬼ソフィアが「睡眠」で眠っている間にスキルを全て消去。
で、いったん起こして尋問。
素直じゃなかったらもう一度睡眠で眠らせて『吸血鬼男爵の??』をアリスちゃんの力で上書き?」
「そんな感じでも良いし……あんまり気は進まないけど精神構造干渉による記憶サルベージを試みるのが手っ取り早いんだけど。
ただし吸血鬼ソフィアの記憶や人格を傷つけるかもしれないんだよね、他にやりようあるかな……?」
「吸血鬼ソフィアって元々は人間なのかな?」
「ステータスの感じから言うと人間っぽいんだよね。ステータスの種族が『人(女性) 吸血鬼』ってなってるから後から吸血鬼になったんじゃないかな?
イースでの『竜亜神の信者』の前例から言うと吸血鬼男爵に無理やり『吸血鬼公爵の??』にされた可能性があるなあって思ってて。
で、スキルの『吸血鬼の種』と言うのが怪しいなあと思うのよ。これを消したらどうなるか……」
「アリスちゃん『吸血鬼の種』を鑑定したら『この種を持つ者は吸血鬼のスキルを得る。この種を持つ者は与えた者の眷属となって逆らうことができない』って表示されるよ?」
「ええ? 『吸血鬼男爵の??』って『吸血鬼男爵の眷属』だったの? ……なーるほど。調教系のスキルだったのか……まあ、いずれにしても『吸血鬼の種』を消せば『吸血鬼男爵の??』は消えるのかな? でも神の知識が通用しない異世界のスキルだから怖いな……うーん、どうしようかな」
『アリス様、吸血鬼ソフィア・タッカーの記憶や人格を傷つけるかもしれないというご心配ごもっともですがリスクを冒すべきではありません。
例え記憶・人格を傷つけることになったとしても12月8日に想定される神としてのレベルアップ以降は精神の傷や欠損は修復可能なのではないでしょうか? 精神構造干渉による記憶サルベージを試みるべきだと思いますね』
「……うん。コリンズさんの言うとおりだね……では吸血鬼ソフィア・タッカーを『睡眠』で眠らせたまま記憶サルベージを試みてみましょう……」
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