私の太陽
@rimano
第1話
新幹線の発車を伝える音が鳴り響くホーム。
不安よりも大きな期待。
隣で心配そうにしている母に、私は大丈夫、という気持ちを込めて両手に荷物を抱えたままぎゅっと抱きつく。
「頑張ってね、ちゃんとご飯たべるのよ」
大好きな地元を離れるのは自分の夢と理想のため。今日のことは一生忘れないだろう。
わたしは明日、念願だった企業に入社する。激動の時代、波乱の就職活動を勝ち抜き手に入れた内定。
初めての一人暮らしに、初めての仕事。環境も一変するだろうけど、全て自分が望んだこと。
それはわかってはいたけど、車内に入り指定の窓側の席に座ると一気に不安な気持ちになる。反対側の窓を探すと、こちらに笑顔で手を振る母がいた。隣に座るサラリーマンのおじさんのせいで見えたり、見えなかったり。
母も私が自慢なのだ。やっと育て上げた1人目の子供が旅立つ時。親子の別れ。
恥ずかしいけれど、この瞬間は今だけだと思い、私も手を振り返す。隣のおじさんはぎょっとした様だったけど、全く気にならなかった。新幹線が動き出し、母が完全に見えなくなる。途端に、涙が溢れ出した。おじさんに見られないように窓に顔を背ける。どんどんスピードをあげて走る新幹線と車内の案内のアナウンス。
今まで育ててくれてありがとう。感謝しています。
そんな気持ちが素直に出てきて自分でも驚いた。おじさんは何かを察したようにこちらの様子を伺うのをやめ、タブレットの操作に専念することに決めたようだ。
私はそのまま涙を拭うことなくこの気持ちに浸ることにした。東京に着くまで後2時間ある。それまでに落ち着けばいい。
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