狐と狸の妖怪に、何か用かい?
とほかみエミタメ
第1話
時は1980年代
僕の住むここ高知県でも、その恩恵を十分に受けており、当時小学生だった僕でさえ、何となく世間全体が明るいのを感じ取っていました。それ
さて、時を同じくして、毎週夕方に放送していた
例に漏れず、僕の通う小学校界隈でも、
その上で、更に熱烈なファンともなりますと、前述の本や玩具は勿論のこと、筆記用具やハンカチ等の文房具や、果ては
そして、何とその
当然、そんな
以上の理由から、
かくの
ここへ来て件の妖怪アニメも、若干の変化が御座いました。そう、基本は一話完結型の放送形式なのに対し、次回予告によると、来週と再来週は珍しく前後編の二部作構成になるとの事でした。しかも、悪役として登場する妖怪が、
12月と言えば
その事をふと思い出しまして、僕はAに「来週からの妖怪アニメを観る際には、狸の妖怪回なので、緑のたぬき天そばを食べようよ」と、提案します。
この時点ではAも、
しかし、僕が緑のたぬきに手を伸ばした瞬間に、
僕は「
いや、確かに僕もあの映画には
そうしますと、Aはより一層食い下がり、件の妖怪アニメの別の回に登場した、他の狐の妖怪の話を引き合いに出し、狐の妖怪の方がどれだけ素晴らしいかを熱く語り始めたのです。
こうなって来ますと、僕の方も意地になりまして、断固として緑のたぬきを譲りたくありませんし、Aの方とて、
議論は平行線の様相を
所が、この
……ほう、
……とまあ、
実際の僕は特に反撃する事もなく、先程のAの一太刀は極小ダメージにも
ええ、僕が弱っち過ぎる
僕自身、この時の
「こらこら、何してんねん
そんな
何とそこに姿を見せたのは、言わずと知れた、赤いきつねと緑のたぬきのCMイメージキャラクターである、Mr.Tだったのです。
Mr.Tと言えば、
そう考えれば、Mr.Tがお
しかし、Mr.Tが
「なはは、おっちゃんな、よう言われんねんそれ。めっさMr.Tにそっくりやんけってな。せやけど、あの人って、おっちゃんより
ふむ、
であるからして、飽くまでこのおじさんはMr.T似の一般人である事を、ここで強調しておかねばなりません。大事な事なのでもう一度言いますね。おじさんはMr.T似の別人です。
「そないな事よりな、おっちゃんは単なる通りすがりの旅行者やけど、ちびっ子の
おじさんのその問いに対し、泣いてばかりの僕では
とは言え、件の妖怪アニメの話をした所で、恐らくおじさんを混乱させるだけだと判断したAは「赤いきつねか緑のたぬき、どっちにするかで
それを受け、おじさんは即答します。
「それ分かるわ~。おっちゃんもな、うどんもそばもめっちゃ好きやねん。せやさかい、よう悩むねや」
僕とAは、おじさんの話に、黙って耳を傾けます。
「それよか、ここのスーパーの店員さんて、ホンマべっぴんさん
いや、今はそれ全然関係ないし、知らんがな。
「そやから、おっちゃんな、迷うた時は、うどんもそばも2つとも頼むねん。
おじさんのこの意見に、僕もAも、はっと気付かされるのです。
「まあ、こないな、しょうもない事で、いがみ合いとかアホらしいし、友達とは
そう言い終えると、おじさんはその場から足早に立ち去ろうとします。ですが、
そんな感じで、おじさんの一大スペクタクルシーンも
そうですね。素直に謝罪する事も
その
その心は、結局、件の妖怪アニメの前編放送回には赤いきつねを食し、翌週の後編放送回では緑のたぬきを食すと言う形で落ち着き、
もしかしたら、例のおじさんは狐か狸の妖怪で、僕とAの
だからこそ余計に、
その
狐と狸の妖怪に、何か用かい? とほかみエミタメ @Tohokamiemitame
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