六本目『影から移る者』

 禿鷹の月住人ムーン=ビースト影から移る者クラヴィス』は、三人を敵として捉え、上空に浮上し、十分な距離を確保すると再び滑空し、その鉄球の様に硬い頭部を衝突させようとする。


「やらせんっ!!」


 パジェットは赤黒い茨を伸ばし、岩を呑み込む波の様にクラヴィスを捕らえようとする。それでもクラヴィスはその速度を緩める事無く、突き進む。

 すると、クラヴィスは螺旋状にその肉体を歪め、その姿を完全に消してしまう。


「何ッ!?」

「馬鹿ッ!! 影から離れろッ!!」


 驚愕するパジェットに対し、セオドシアが警告を出した瞬間、パジェット自身の影からクラヴィスが飛び出す。


「ッ!?」


 セオドシアの警告もあって、パジェットは無理矢理身体を反って衝突を回避する。しかし完全には避け切れなかった様で、額から血が噴き出す。


「くっ!? ……なるほど……『影から移る者』は伊達じゃ無いか……!!」

「影の中を転移する能力さ、一度潜ったら半径五十m以内のどの影からだって出てくるぞ!!」

「ふんっ、害鳥に相応しい意地汚い能力だ……」


 そう言って、パジェットは額の出血を抑える様に右手を当てる。

 するとクラヴィスはまた上空に浮上し、距離を確保する。


「二人共!! また来る……って、あれ?」


 デクスターのそんな警告を他所に、クラヴィスはあらぬ方向へと滑空する。

 一瞬、逃げるつもりなのかと考えたが、クラヴィスが次に取った行動は、今自身に起こっている闘争に勝利する為の一手だった。


「おいおい……おいおいおいおいおい……!?」


 クラヴィスが滑空した方向は家、店、あらゆる建物の壁や柱であり、クラヴィスは次々に突っ込んで行っては、瓦礫の雨を作り出して行く。


「きゃあああっ!!」

「うわぁっ!!」


 倒壊した建物は、逃げ遅れた人達に向かって降り注ぐ。


害鳥風情クソ鳥がッ!!」


 逃げ遅れ、倒壊した建物の下敷きなる所を、パジェットは茨で自身の方向へ引っ張り、寸前で助け出す。しかしそれだけではクラヴィスの破壊行為は終わらず、嵐の様に壊しては去り、壊しては去り……と繰り返す。

 パジェットはホワイプスの群れを退治した時の様に、茨を蜘蛛の巣の様に使って修復していく。


「ぐっ……デクスター!! 奴を狙撃して止めるんだ!!」

「う、うん!! わかった!!」


 防戦一方の態勢を変えるため、デクスターは弓を構えて弦を引き絞り、クラヴィスの破壊活動を止めようとする……その時だった、背後から殺意が船の上で感じた波風の様に胸を吹き抜ける。


「ッ!?」


 振り返ると、先程落下して来た女性の遺体が、精神異常患者の様な尋常じゃない雰囲気を持ちながら、むくりと立ち上がる。


「まさか……今なのか!? もう一体!?」


 見開かれた眼は、石炭の様な艶々とした黒を持ち、ざわざわと音を立てたかと思えば、毛髪が抜け落ち、皮膚が硬質化され、禿鷹の羽毛に生え変わっていく。骨格や筋肉に至るまで、その原型を殆ど失うと、自らの誕生を祝う様に、二体目のクラヴィスは背中に生える巨大な羽根を展開する。


「グォアァァァッ!!」

「うぐッ!? 来るなッ!!」


 デクスターは咄嵯に矢を放つが、クラヴィスはその矢を軽々と羽根で叩き落とし、勢いそのままに、嘴で啄もうとする。


「うわぁぁぁぁっ!?」


 クラヴィスの嘴がデクスターを喰らう……事はなく、セオドシアが自身の腕に喰らい付かせ、勢いを殺す。


「セオドシアッ!?」

「全く……子供は手間が掛かるね……!!」


 そう言うと、彼女はアイスピックの様に細く削り出した骨を取り出し、クラヴィスの右眼に突き刺す。


「グギャアアアアアアーーッ!!」


 苦痛の叫びを上げるクラヴィスは、セオドシアに突進し、彼女ごと螺旋状に畝りながら、影の中へと飛び込んでいく。


「そ、そんなっ!? セオドシアッ!?」


 ◆◆◆


 影の中は死体処理場の中に居る様な臭いが充満し、粘性のある泥の中の様に身動きが取れない。そんな中、クラヴィスだけは縦横無尽に動き、セオドシアをダーツの様に飛び交い、痛め付けていく。

 このままでは、飽きるまで遊ばれて殺される。だと言うのに、彼女の表情からは焦りは感じられない。


「馬鹿だなぁ……私が君を影の中に行くよう誘導したのさ……を使う為にね……」


 そう言ってセオドシアはアタッシュケースを開き、血液を注ぐ。


「来いッ!! 『潜みし牙を持つ者ファリス』!!」


 そう叫ぶと、ケースから青白い炎を灯された骸骨のファリスが飛び出し、クラヴィスの胸を引き裂く。


「グォアァァァァァッ!?」


 堪らず退いて体勢を立て直そうとするが、この泥沼の様な影の中を、ファリスは問題なく泳ぎ、その腿に喰らい付き、血が影の中で毛糸を浮かべた様になって走る。


「朔日から今日に至るまで、君達の事をどうやったら痛みを与えられるか調べ尽くしてきた……影の中がどんなものかも知っている……まぁ、道すがらファリスを手に入れたのは、よかったよかったと言うところかな」


 ファリスの牙を伝って、怨念の炎はクラヴィスの中へと侵入していく。

 その痛みは、体液を全て濃硫酸に変えられた様なものであり、クラヴィスは泡を吹き出し、宙に向かって踠き始める。


「グガガガガッ!!」

「イヒッ!! 自分のテリトリーで溺れる気分はどうだ〜い? ……っと、いけね……このままでは影に取り残されてしまうな……」


 セオドシアは溺れるクラヴィスに先程刺した時にも使った骨を突き刺し、再び螺旋状になって影の中から抜け出した。


「グギ……ギ……」


 影の外へ出ると、クラヴィスは痛みに耐えかね、肉体を手放し、中から青白い光が浮かび上がる。


「……私の勝ちだ、夜明けの世界でまた会おう」


 そう言って光を吸収し、改めて周りを見渡す。

 建物を茨で修復した形跡はあるが、二人の姿が見えない……どうやら、潜ってる間に何処かへ移動したらしい。


「やれやれ、面倒だな……」


 文句を垂れつつ、セオドシアは二人の元へと向かおうと歩を進める。

 が、二、三歩進んだ所で、彼女はピタリとその場に止まる。


「あの野郎……そういう事か……」


 セオドシアは、面白くないという様な顔をし、クラヴィスの魂の抜けた肉体へと戻っていった……。


 ◆◆◆


 一方、セオドシアが影から抜け出したのと同時刻。クラヴィスは破壊活動をピタリと止める。


「何だ……?」

「油断するなデクスター、何か様子が変だ……」


 すると次の瞬間、クラヴィスは羽を羽ばたかせ、衝撃波を生み出すと、砂埃を伴ってデクスターを吹き飛ばす。


「うわぁっ!?」

「デクスター!!」


 パジェットが何とか受け止め事なきを得るが、その間にクラヴィスは巻き上がった砂埃で出来た影の中に潜り、逃走を許してしまう。


「しまった!? 僕のせいで……!?」

「よせ、深追いする必要は無い……それにしても、あの様子……セオドシアの方で何かあったか?兎に角、一旦戻って……」


 彼女がそう呟くと、路地裏から何者かが近付いてくるのを察知する。

 敵襲かと思い身構えるが、白いローブがチラリと見えて、セオドシアである事がわかった。


「セオドシア!!よかった、無事───」


 路地裏から完全にその姿を露にすると、デクスターの表情は安堵から驚愕のものへと変わる。よく見ると、セオドシアは葡萄酒を頭から被った様に出血しており、白いローブを上から下へ滾々と流れる血で染めていた。


「ッ!? セオドシア、それッ……!!」

「ごめん、ドジ踏んじゃっ……た……」


 彼女はそう言って左右に二足三足蹌踉めくと、

 滴る血の重みに倒れるかのようにばったりと地に倒れ、意識を手放してしまうのだった……。


 ◆◆◆


「いや〜!! やっちゃったよね!!」

「『やっちゃったよね』じゃあないよ!! あんなに血を出して……心配したじゃあないか!?」


 セオドシアが倒れた後、二人は彼女を教会まで運び、シスターの手も借りて治療することで、大事には至らなかったが、傷が開かない様に現在はベッドで安静にしている状態だった。


「お前がこれ程までにこっ酷くやられるとはな……あのクラヴィスの仕業か?」

「は? んなわけなくない? 余裕勝ちだよ」

「じゃあ、なんでそんな怪我を?」

「だから、ドジっちゃったからだよ?」

「「「……?」」」


 どうも会話が噛み合わず、デクスターとパジェットには疑問だけがぷつぷつと湧いて出る。その後も何度も質問を繰り返すが、彼女の返答はどれもハッキリとしなかったり、意味不明だったりして二進も三進もいかなかった。

 次第にパジェットはそんな彼女の様子に苛立ちを募り始め、つい怒声を上げる。


「貴様ァッ!! わざとやっているんじゃあるまいなッ!?」

「な、なんだよう!? こっちは怪我人だってのに乱暴するのかい!? キャーッ!! 男の人ーッ!!」


 相手がどんな状態であっても、この二人は抑えるという事を知らないらしい。

 セオドシアの叫び声を聞いて、扉を開けて駆け付けたのは男の人……ではなく、シスター・セリシアだった。


「まぁまぁ、どうしたのです? そんなに騒いで……傷口が開いてしまいますよ?」

「シスター……!? ……申し訳ありません……しかし、コイツが中々事情を話さないので……」

「あれだけの怪我ですもの、まだ混乱しているのだわ。結果を急いてしまうのはアナタの悪い癖よ、パジェット」

(おお……あのパジェットさんが黙って叱られてる……凄い……)


 シスターは彼女にとって文字通り頭の上がらない存在なのだろう。珍しいものが見れたと感心しながら、セオドシアの方を見ると、シスターから見えない角度からこめかみに親指を当てながら、目と舌と残りの指をうねうねと動かし、小馬鹿にしていた。


(そんなんだから嫌われてるって言うのに……)


 デクスターは呆れながら、例のクラヴィスについて話を戻す事にした。


「あの影に入る能力、どうすればいいのかな……」

「擬似太陽があるとはいえ、この国にも夜は訪れる……そうすれば影は幾分かは減るだろう?」

「それでも街灯とかはあるからねぇ、まぁ、それは退魔師の例の茨でフォローに当たるとして……あぁ、でも暗闇の中じゃ、退魔師はいつも以上に役に立たなくなるしぃ……私もこの通り動けないわけだしぃ〜……」


 そう言いながら、その場に居る全員の視線が、一人に対して向けられる。


「───またぁッ!?」

「仕方ないな、頑張ってくれ、デクスター」

「うん、よろ〜」


 驚愕するデクスターを他人事の様に……実際他人事と思っているのだろう、そんな適当な激励の言葉を投げかける。


「クソ〜……なんで僕ばっかりこんな……」

「まぁまぁそう言うなって、それにまるっきり一人ってわけじゃあない、助っ人も送ってやるよ」

「助っ人……?」

「超強力な……ね」


 怪我をして動けずにいる癖に、完全犯罪を思い付いた完全犯罪者シリアスキラーの様に不敵な笑みを浮かべる彼女のその言葉に、デクスターは不安を感じずにはいられなかった。


 ◆◆◆


 アイウスの街にて、デクスター達を襲った禿鷹の月住人、クラヴィスは、擬似太陽の光の消えた闇夜の空の下、屋根の上で次の獲物を選んでいた。


「…………?」


 ふとクラヴィスは違和感を感じた。

 それが何かは分からない。ただ、緊張感だけが、ひしひしと伝わってくる。

 次の瞬間、クラヴィスが感じた気配が消える。

 だが、


「見つけたぞ!!」


 クラヴィスの背後に現れたデクスターが大声を上げる。

 クラヴィスは即座に振り返り、デクスターに襲いかかるが、デクスターはその攻撃を避け、距離を取る。


「あっぶね!? 声掛けなきゃよかった……」

「グルルルァァァ……」


 唸り声を上げながら、クラヴィスは浮上し、得意の頭突きを仕掛ける。


「やっぱり来た……!!」


 しかし、それは先の戦いで織り込み済みである。デクスターは自分の足元……屋根の下に潜む『助っ人』に目をやり、その名を叫ぶ。


「来てッ!! 『三位一体の者スリペクトゥム』!!」


 その叫び声によって、屋根のを突き破り、クラヴィスの首を掴む。


「グエッ……!?」


 出て来たのは、セオドシアの死霊術の証である青白い炎に奇妙な模様の付いた骸骨だった。その身体はファリスの胴体、ホワイプスの脚、クラヴィスの羽根を持つ合成獣キメラの姿で出来ていた。


「おぉ……凄い……!!」

「……ガァッ!!」


 クラヴィスは腕を振り解き、飛んで逃げようとする。スリペクトゥムは、ファリスに備わっていた刃でアキレス腱に突き刺し、そのまま屋根に押し潰す。


「グッ……グアアアッ!?」


 クラヴィスは、街灯の灯りによって生まれた影の中に沈み、拘束から逃れようとするが、その光が突然無くなり、影も何もあったものじゃない暗闇に包まれる。


「どれ、見えないが……間に合ったか?」


 そこには、街にある街灯を全て茨で覆い隠し終えたパジェットの姿があった。


「流石です!! パジェットさん!!」


 この暗闇の中では、動ける者は限られる。

 この場に於いては、朔の下、人を狩る存在である月住人と、その朔の世界で同じく狩る者として生きた、デクスターのみ……なのだが、


(クソ!? なんで見えない!? 光に慣れ過ぎたのか……!?)


 デクスターの目は、擬似太陽の下に晒された事で、目が元に戻るまでに時間が掛かってしまう。

 すると、骨が崩される音が闇に響く。


(ッ!? セオドシアのキメラがやられたのか!? 血が足りなかったか……)


 デクスターは、徐々に戻る視界で、弓に矢を携える。


(落ち着け……慌てたら、何も見えなくなる……)


 デクスターは、昔、父から言われた言葉を思い出す。

 落ち着くんだ、焦りは、見える筈のものを見えなくし、獲物に漬け込まれる隙になる……そんな、父の言葉を思い出し、深呼吸をする。

 目がダメなら、耳で探せ。

 デクスターは、音を頼りに、矢を放つ。

 放たれた矢は、風切り音を鳴らしながら、何かに刺さる。


「ギャアアアアアッ!?」

(当たった!! けど仕留めたわけじゃない!!)


 再び矢を携えようとするが、その一瞬の隙にクラヴィスは頭突きが飛んでくる。


「チィッ!?」


 デクスターは体を右に傾け、避けるが、左肩にもろに受けてしまう。


「がぁッ!? この轢き逃げ野郎……肩が……!!」

「デクスター!? 大丈夫か!? 何があった!?」


 これでもう矢は射れない……しかし、


「大丈夫!! ただ肩が外れただけだし、それに……お陰でハッキリと見れるようになったぞ……畜生!! かかって来い!!」


 追い込まれ、目も戻り、腹も据わった。

 やる事は変わらない、あの月住人に、この矢を突き刺す。

 その覚悟を持って、無事な右腕で矢を握りしめ、次の襲撃に備える。

 そして……


「ガァッ!!」


 クラヴィスは暗闇からデクスター目掛け、その頭突きを浴びせようと飛び掛かる。

 デクスターは、その頭突きに向かって走り、あともう少しで衝突という所で、屋根の上に身体を滑り込ませる。


「ウオォォォォッ!!」


 そして、握りしめたその矢を、クラヴィスの眼球に矢に突き刺す。


「グギャアアアアアッ!?」

「ま……だ……!!」


 それだけでは終わらせない、デクスターは飛び去ろうとするクラヴィスに脚を絡めてしがみつき、矢を更に深く突き刺す。

 クラヴィスは苦悶の叫びを上げながら、飛ぶ力も失い、そのまま別の建物の窓に突っ込む。


「今の音……デクスター!?」


 パジェットは茨を緩め、街灯の光を漏らし、何が起こったかを確認する。


「……やはり、勇者だな、お前は……」


 そこには、クラヴィスを倒し、Vサインを掲げるデクスターの姿があった。


「えへへ……けど、やっぱり痛いや……」


 デクスターの身を挺した行動により、クラヴィスは倒され、この日は皆無事に朝を迎える事が出来たのだった……。


 ◆◆◆


 翌朝、デクスターの肩は脱臼で済んでいた様で、シスターの治療によって多少違和感はあるものの、問題なく動く事が出来た。


「……だからって、買い出し行かせるか普通……絶対セオドシアもう動けるだろ……」


 セオドシアは、あの後も怪我人なのをいい事に、今まで以上に我儘な注文をし続け、


「デクスター君のスープじゃなきゃや〜だ〜!!」


 と、年齢を問いただしたくなる様な癇癪を起こされ、渋々材料を知っているデクスターがお使いをする事になった。


「全く……セオドシアの奴覚えてろよ……」


 そう言いながら、自分の買ったものとシスターから貰った財布の中を確認する。得意料理である野菜スープの材料自体は揃っているが、まだ中身に余裕があった。


「……何か精の付くものでも入れてあげるか……」


 一応、怪我人だし。そう思って、デクスターは精肉屋にまで足を運ぼうとすると、後ろから何かにぶつかる。


「うわっ!?」

「おっとごめんよ〜!! 子供は急に止まれないんでね〜!!」


 ぶつかって来たのは自分より少し歳の低そうな子供だったようで、謝りながらどこか急いだ様子で走っていた。


「いてて……何だよ……あれ? あっ!? 財布が無い!? ちょちょちょっま、待ってよ!!」


 デクスターは、あの子供が財布を盗んだと気付き、人混みの中を逃げて行く子供を追いかける。子供は、ドブ鼠の様にすばしっこく、簡単には捕らえられなかった。


「待ってよ!! そのお金はスープの為に必要なんだ!!」


 子供は、そんなデクスターの叫びもどこ吹く風で、路地裏の方へと入っていく。デクスターも追いかけ、路地裏の奥へと入っていく。

 どうやらそこは行き止まりになっている様で、追い詰める事に成功する。


「……ハァ……ハァ……ようやく追い詰めたぞ……さぁ返せ! 早く!」


 息を切らしながら、デクスターが子供を睨むと、子供はニヤリと笑い、口を開く。


「ばーか、お前が追い詰められたんだよ」

 その言葉の後すぐ、デクスターの後頭部に強い衝撃が走る。


「ガッ!? セオ……ド……シ……」


 そのまま意識が遠のき、デクスターの意識は深い深い闇の底へと消えていく。


「──悪いな、これも全ての為だ」


 消え行く意識の中、そんな言葉が、最後に聞こえた気がした……。

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