四本目『潜みし牙を持つ者』

 セネリス連合王国。

 アイウス、グテルム、デフィデレ、アルドロフィトの四つの国によって形成される物的同君連合の国であり、国王と議会の仲は悪くないものの、議会の発言力が強い傾向が見られる国でもある。

 三人が向かうアイウスでは議員が亡くなり、現在アイウスの議員席を巡って、ヴォゴンディ家とムグラリス家は争いの準備を着々と進めている段階であった。


「いつ本格的に争いになるか分からんからな、出来れば近付かないでおきたい所ではあるのだが……他所の国に行くにも、そこを通らねばならないからな……」


 パジェットは仕方ない、と溜息混じりそう説明してくれる。


「争いって……議員ってそんなに重要なの?」

「議員って名前だけど、その実質は一国の主だからねぇ……にしても、こんな世界になっても権力争いとは、人間ってのは適応力あるよね〜」


 デクスターの言葉に、セオドシアは呆れたような口調で皮肉を飛ばす。



 地図を持ち、この辺りの地理に詳しいというパジェットに従い、一行はアイウスへと向かっていた。

 砂漠越え、山道に入り暫く歩くと、やがて前方に巨大な壁が見えてきた。

 高さはおよそ十メートル程だろうか。その向こうに港らしきものが見える。


「あそこから旅客船に乗って行けばアイウスに辿り着ける。乗船出来るか聞いてくるから、少しここで待っていてくれ」


 そう言い残し、パジェットは門番の方へと歩いて行く。

 門の前には船を待っているであろう人達が、ぞろぞろと集まっていて、デクスターは初めて見る大勢の人間に面を喰らっていた。


「うわぁ……こんなに人が集まってる所、僕初めて見たよ……」

「そうかい、それじゃあ慣れなきゃな。これからもっと大勢の人のいる所に行くのだからね」


 そんな、セオドシアの何気無い一言に、デクスターは胸を踊らせる。

 この旅を初めてから命の危機ばかり感じていたが、やっと憧れの旅の形に近付けた様な気がして、出発を待ち遠しく思う気持ちが強くなっていた。

 しばらくすると、パジェットが二人の元へと戻ってくる。


「馬は後で別の船に乗せなくてはならないが、三人分は取れた。荷物の申請はしておいたからあそこで目薬を点しておけ」

「目薬? なんで?」


 デクスターがそう聞くと、パジェットには「行けばわかる」とだけ言われ、門に押し込まれる。


「一体なんだって言うんだ……あっ、そう言えばセオドシアのケースの中身、見られてもいいの……?」


 前に一度、セオドシアのケースの中身をデクスターは見た事があり、その時見た時にはケースは底無しの深淵であり、不審極まりない代物である事は間違い無かった。そんな彼の心配を他所に、セオドシアは自信満々な表情をしている。


「ヒッヒッヒッ……このケースはただ収納が便利というだけでは無いのだよ……まぁ、見ていたまえ」


 セオドシアは門番の前に行き、ケースを開く。

 すると、どう言うわけか中に広がっているのは深淵ではなく、普通の旅行鞄に入っている様な衣服だとかの諸々が入っていた。


「ふむ……通ってよし。向こうで目薬を点してから入国して下さい」

「はいは〜い、お勤めご苦労様でーす」


 ほら言っただろう? と言いたげなドヤ顔とウィンクをセオドシアはデクスターに向ける。思えば、セオドシアは自分と出会う前から旅をしているのだから、こういった場面は自分よりも慣れっこなのだろう……


「いや、慣れてたら地図持ってるか……」


 セオドシアに続きデクスターも荷物検査を終えると、パジェットの言う通り目薬を点される。


「あの……これって何の意味が……」

「ん? そのまま中に入っては目をやられてしまうので……これはその予防です」


 予防? 目をやられる? 意味がわからなかったが、門番に促され、デクスターは恐る恐る、港に向かう為に壁の内側へと入っていく……。


「……わぁ〜!? スゴ〜イッ!!」


 淡い紫の光に一瞬眩むと、デクスターの目の前に広がっていたのは透き通る程に青い空と青い海であった。

 初めて感じる強い日差しに、肌が少しチリチリという痛みさえも、デクスターの胸を震わせるには十分だった。


「先の目薬は環境に適応出来るよう魔術の施された特別性で……擬似太陽の空を見るのは初めてだと思ってちょっとしたサプライズのつもりなのだが、どうだろうか?」

「最高だよパジェットさん! ありがとう!!」


 デクスターは煌めく太陽に負けないくらいの笑顔を見せると、パジェットもその頬を緩め、優しい表情になる。


「でも、外からは暗く見えたのにどうして?」

「結界が貼ってあって無駄に霊力を使わないように、それと月住人に灯りによって集めない様にするための二つの役割を担っているんだ」


 パジェットの説明に感心していると、旅客船の上からセオドシアの声が聞こえる。


「先生〜!! その話長くなりそうですか〜? そんないつでも出来そうな話するくらいならさっさと乗りましょうよ〜!!」

「……全く、こちらの空気を察して貰いたいものだな……」

「アハハ……まぁ、セオドシアの言う通り、さっさと船に乗ろうか。大きい船も初めてだし」


 こうして、三人はアイウス行きの船に乗り込み、出発するのであった。


 ◆◆◆


 船内はデクスター達以外にも勿論居て、デクスターはこんなに大勢乗っているのに沈まず、常に高速で海面を駆ける船に目を丸くしていた。パジェットが言うには、『もぉたぁ』だとか『すくりゅう』だとかを使い、高速の移動を可能にしているらしいが、それを聞いてもデクスターにはまるでピンとこなかった。とはいえ、知らなかった知識を獲得し、少し成長出来た気になれたのが、とても喜ばしかった。


「まさか船に乗れる日が来るなんてなぁ〜……こんなに大勢の人と一緒の空間にいるのだって初めてだしなんか落ち着かないや……セオドシアは……あれ? いない? どこ行ったんだ?」


 横を振り返ると、そこにセオドシアの姿は無く、見渡してみると、船尾の方で何やら棒を振っているのが見えた。


「……何やってるの? セオドシア」

「釣りだよ。見てわからないかい?」

「釣りって……多分だけど、この船そういう事する場所じゃないよね? しかもこんなに速く動いてるのに食い付く魚なんているのかなぁ?」

「チッチッチッ、わかってないなぁ、このスピードで動く釣り餌に掛かる魚だよ? 余程強靭な骨をしているに違いないだろう? 私は常に最高クラスの品質を求めるのだよ」


 そういうものだろうか? いや、そういうものじゃないな。

 デクスターは世間を知っているわけではなかったが、セオドシアの行動が世間一般常識から逸脱してる事くらいはわかった。


「余った肉は君にくれてやろう!」


 そう言って、セオドシアは釣れるのが確定している様な調子で意気揚々と釣りに勤しんでいると、パジェットの言っていた『すくりゅう』の渦に釣竿が巻き込まれてしまう。


「「あっ」」


 そのまま引っ張られると釣竿はセオドシアの手を離れ、そのまま『すくりゅう』に吸い込まれる。元々ボロい釣竿だった事もあって、絡まったりとかはせず、バラバラに砕け散るだけに済んだのは不幸中の幸いだった。


「こんな……こんなはずじゃ……畜生ォ持って行かれた…………!!」

「ほら言わんこっちゃない……」

「畜生……返せよ、たった一本の釣竿なんだよ……退魔師の身長だってくれてやる、だから!! 返せよ!! たった一本の釣竿なんだよ!!」

「……なんだか知らないけれど、パジェットさん以外にも凄く敵を作った気がするのだけれど……」


 このまま相手にしていても疲れるだけなので、デクスターはパジェットの元へと向かう。彼女はセオドシアと違って、乗客用の椅子に座りながら読書に勤しんでいた。


「……平和だ……」

「……? どうかしたのか? まぁ、大方あの死霊術師絡みだろうが……丁度いい、ここに座りなさい。君には色々と聞きたい事があるんだ」

「僕に? いいけど……」


 パジェットに促され、デクスターは彼女の隣に座る。

 デクスターは彼女の年齢は知り得ないが、隣に座る彼女の座高は自分よりも少し小さく見えた。


「……すまない、やっぱり一席分空けてくれないかい? 君にそのつもりは無いのは知っているが、何故か小馬鹿にされた気分になるんだ」

「え? あっ……そう? そう言うなら……(気にしてるんだ……背が小さいの……)」


 言われた通り席を一席分空け、気を取り直して話をすることになった。


「死霊術師……セオドシア・リーテッドの旅の目的は何だ?」

「目的? 朔の向こう側……本物の太陽の光をもたらすとかなんとか……」

「光を? 何故?」

「何故って言われても……なんかウザいって……」

「馬鹿にしているのか? 隠しても為にならないぞ」


 悪事を働いた子供に詰め寄る親のような口調でデクスターにパジェットは詰め寄る。


「ほ、ほんとだよ……セオドシアがそう言ってたんだ」


 デクスターがそう言うと、パジェットは尚更怪訝そうな顔をする。


「……たった数日間一緒に過ごしただけの人間の言葉を信じるのか?彼女の過去もよく知らないのにか?」

「え? それは……考えたことなかったな……」


 デクスターにとって彼女は自分の命と父の尊厳を守ってくれた恩人であり、確かに性格はいいとは言えない人物ではあるが、悪人ではない……

 いや、思いたくないと言うのが正直な所だった。


「僕は……」


 デクスターが正直に思う所を言おうとすると、突然獣が角を打ちつけているような底知れない重さがある音が響いた。


「何!? この音!」

「……どうやら質疑応答はまた今度になりそうだ」


 パジェットは本を置き、立ち上がり、音のした方へと向かう。


「僕も行く!!」

「いや、君は死霊術師を探せ、役に立つかもしれないからな」


 デクスターにそう命令し、音のした船底室の方へと向かうと穴が開いているようで、海水がドンドンと侵入してくる。

 パジェットは茨を張り巡らせると、板の様にしてそれを塞いだ。


「よし……取り敢えずの応急処置は済ませて……」


 パジェットはそう言いながら自身の背後に向かって後ろ蹴りを喰らわせる。


「グギャアアアッ!!」


 そこには船客の一人であろう男性が立っており、パジェットに蹴飛ばされると、その姿を異形に歪ませ、『蹂躙せし者ホワイプス』としての正体をあらわにする。


「お前が穴を開けたのか? ……いや、お前達ホワイプスにそんな脳味噌は無いな……リーダー格はどこだ?」


 そう問い掛けた所で、ホワイプスは唸るのみであり、パジェットのトドメの一撃によって強制的に黙らせられる。

 すると、奥の方から潜伏していたホワイプス達がぞろぞろと湧いて出てくる。


「一匹見たらなんとやら……か、その魂、主の命により返して貰う」


 ◆◆◆


 一方その頃、デクスターの方はと言うと、パジェットに言われた通りにセオドシアを探していたのだが、一向にその姿を発見出来ずにいた。


「もぉ〜! どこ行っちゃったんだよ肝心な時に〜!!」


 文句を垂れながら走って探していると、何かに足を滑らせ、転倒してしまう。


「痛ったぁ〜……何だ? 海水の……水溜り……?」


 デクスターが通った所を見ると、そこにはここが海の上とは言え、あまりにも不自然な水溜りがそこにはあった。


「これは、一体……」


 立ち上がって確かめようとすると足を上げると、どろりと靴底から何かが伸びているのに気付いた。


「何だこれ……粘液?」


 よく見ると、粘液を含む海水の水溜りはデクスターの靴底以外にも続いており、少しずつ、視線をずらして行くと、それは海へと続いている様だった。


「まさか……嘘だろ!?」


 デクスターは慌てて走り出す。


「セオドシア!? どこだ!? 返事を……」


 海面に向かってそう叫ぶと、そこには彼女の履いていた靴がプカプカと浮かんでいた。


「なっ……何ィィィッ!?」


 デクスターが驚愕の声を上げると、その靴を何者かが飲み込む。

 しばしの水あぶくの後、その異形が姿を現す。

 頭部は左右に張り出してその先端に目と鼻腔があり、シュモクザメの様ではあるが、決定的な差異はその頭部から下が人間の体で出来ており、その肌は瘡蓋の様にザラザラとした鮫肌で出来ていた。


「鮫の月住人ムーン=ビースト!? セオドシアは引き摺り込まれたのかッ!?」


 鮫の月住人は驚愕するデクスターを他所に、水中から腕を振り上げ、水圧の斬撃で穴を開いていく。


「なっ……やめろッ!!」


 デクスターはそれを阻止する為に弓を構えて矢を射る。

 しかし、矢は水中に着水するとその威力が弱まり、まるで意味のないものとなる。


「クソッ!! これじゃあダメだ……もっと威力のあるものじゃないと……」


 パジェットが戻ってこない所を見るに、そちらでも問題が発生したようだ。

 そうでなくても船体の修復の為に残ってもらわなければならないので、どの道助けは期待できそうにない。どうしたものか考えあぐねいていると、この船の船員達がデクスターに駆け寄ってくる。


「君! ここは危ない! すぐに船内に……」

「月住人だ!! もっと威力のあるものは!?」

「何ッ!? ……だったらこっちにもいいもんがあるぜッ!!」


 そう言って船員達が持ってきたのは対月住人様に設計された銛の発射台だった。


「使ったことはあるの!?」

「無いッ!! 今まで一度も襲われた事がないんでなッ!!」


 船員の一人が鮫の月住人に狙いを付け、銛を放つ。

 しかし月住人のスピードはそれを上回り、簡単に避けられてしまう。


「クソッ! 駄目です船長! 速すぎます!!」

「チィッ……練習はサボるもんじゃねぇな……」

「……僕にやらせて!」


 苦戦する船員達に、デクスターはそう提案する。


「なっ……坊主何言ってんだ!? 俺たちですら扱えないってのに子供のお前が……」

「いや、やらせてやれ」


 船員達がデクスターの提案を否定する中、船長だけは一人、その提案に賭ける。


「なっ……正気ですか船長ッ!?」

「テメェらだって当てられてねぇじゃねぇか馬鹿野郎!! ……それに、この坊主のさっきの弓……一度しか見てなかったが、腕はある様だぜ……」

「……ありがとう……任せて!」


 デクスターは船長の許しを得て、銛の砲台を構える。

 ゆっくりと塩辛い空気を吸い込み、一気に吐きながら照準を月住人に合わせる。そして引き金を引く……その時、月住人は背鰭を揺らしながら船体に体当たりをする。


「うわぁっ!?」


 その振動で倒れそうになるデクスターを船員達が支える。


「やっこさん、本能で坊主を怖がってるようだぜ!!」

「一発あの気味の悪いド頭に突き刺してやんなッ!!」

「……うん!!」


 デクスターは再び呼吸を整え、照準を向ける。

 体当たりによって船が嵐に見舞われた様に荒れるが、支えのお陰で、狙いも、心も、凪の様に穏やかになる。


「……ここだッ!!」


 次の体当たりの瞬間に合わせ、銛を放つ。

 銛は、離れすぎた両目の内の右目に突き刺さり、その鮮血を飛び散らせる。


「「よっしゃああああッ!!」」

「……ギャアアアアアスッ!!」


 デクスター達が肩を組んで命中を喜ぶと、鮫の月住人は水圧の斬撃をやたらめったら撃ちまくる。


「火事場の馬鹿力かぁ!? 坊主伏せろッ!!」


 デクスターは船員達に守られるようにして、甲板にその身を伏せる。


「……あれ?」


 しかし、いつまで経っても訪れる筈の衝撃は訪れず。どころか水飛沫の音すら聞こえなくなっていた。顔を上げ、確認してみると、鮫の月住人は青白い炎に照らされる固い骨格によって拘束され、その体を動かせず、苦痛に悶えていた。


「オギィィァァァッ!!」

「この能力は……セオドシアッ!?」

「──全く、海中で服を着替え直すなんて初の試み、中々に骨が折れたよ?」


 声のした方を見ると、海面に立ち、意地の悪そうな笑みを口元に浮かべていた。


「何だあの嬢ちゃん……海の上を立ってんぞ!?」

「奇跡の技だ……!!」


 そんな船員達の反応耳に入り、セオドシアは満足気な様子で更に口角を上げる。


「う〜む!! その反応実に良し! ……実際の正体は教えないでおこうか……」


 セオドシアがそう言いながら足元を見ると、そこには鮫の月住人を拘束しているのと同じ固い骨格……『珊瑚礁』によって足場が作られていた。


「流石擬似とはいえ太陽の下にある海は違うね、豊富な生命の数だけ死骸も沢山あったよ……特に、珊瑚は私と相性抜群だ」


 珊瑚は刺胞動物門に属する動物であり、発達した固い骨格が特徴である。

 セオドシアはこれによって海に引き摺り込まれた後、傷付いた傷口から漏れ出た血液で操り、自身を囲ってエアースポットを作り出し、ちゃっかり濡れた服を着替えた後に浮上してきたのである。


「さて、『潜みし牙を持つ者ファリス』よ……さっき振りだけれど君とはもうお別れの時間だ」

「グッ……ガァァァァッ!!」


 セオドシアにファリスと呼ばれた月住人は、暴れて抵抗しようとするが、珊瑚は更に侵食し、怨念の炎によって苦痛を強めるだけだった。


「​───なんだ、もう行くのか? ならこれも土産に持ってけ」


 そんな言葉が聞こえたかと思えば、赤黒い茨が伸びてファリスに倒したホワイプス達を括り付けていく。


「パジェットさん! 良かった無事だったんだ!!」


「愚問だ、あの程度ものの数ではない……しかしアイツらに邪魔され穴の修復に手間取っていてな、そしたらそっちの方で片付けてくれた様なので、こうして仕上げに参加しに来た」


「フッ……それじゃあ、冥土の土産も渡した事だし……私から最期にこんなプレゼントを送ろう…………窒息死だ」


 そう言うと、珊瑚礁はファリス達を地獄からの亡霊の様に、深海に深く深く……更に深くへと沈んでいく。


「それじゃあ、夜明けの世界でまた会おう」


 沈みゆくファリスにそう言って笑うセオドシアの目が、その時デクスターには偶蹄目に見られる悪魔の様な目に見えた。


 ◆◆◆


「ん〜……少し怪我はしてけど、ひと泳ぎした後は気持ちいいね〜……」

「全く……お前がもう少し早く浮上していればもっと早く済んだのであってだな……」


 港に着くなり口喧嘩を始める二人を、デクスターはよく飽きないなと思いつつ眺めていると、背後から先程の船員達が話しかける。


「おう坊主! さっきは助かったぜ!!」

「いい感してるよなぁ〜……旅人にしとくにゃ勿体ないぜ〜……」

「馬鹿野郎、テメェらこれから旅立つ友に後ろ髪引かれる様な言葉掛けんじゃねぇ!! ったく…………またいつでも遊びに来いよ、そん時ゃ俺達も練習しとくからよ」

「!!……うん! 行ってきます!!」


 旅先で出会った友からの激励に、デクスターは元気に別れを告げる。


「ここが……僕にとって初めて訪れる国……!!」

「あぁ、行こう!」


 こうして、三人はアイウスに辿り着いた。

 この国で、彼らにとって初めての苦難が待ち構えているのだが……。

 この時はただ、新たな出会いに期待を寄せるだけだった。

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