表の顔 #8

凛「朝日あさひりんです。今日から心愛の友達です!」


りく先輩「そっか!ここちゃんに友達ができたならいい事じゃん♪ よかったね!ここちゃん!」


心愛「...!は、はい...!」

(気まずい...朝も家に置いてれん先輩と二人で学校来ちゃったし...)


凛「ここだけの話、心愛のこと全部知っているので何かあった時は私にも相談お願いします。」


いきなり他の人に聞こえないよう小声で話す凛。


心愛「ちょ!?り、凛!?」


凛「いいから!それにうち他の子みたいにりく先輩に興味はありません。うちが好きなのはりょうだけなんで。」


りく先輩「そっか〜!それってなんだか面白いことになりそうだな〜?」


ニヤついていつも通りの笑顔で話すりく先輩。こっちで話しているとりょう君が近づいてきた。


りょう「...!今日は俺が部室に連れていく。どけ。」


私の腕を引っ張り、教室を出ようとするりょう君。


りく先輩「凛ちゃん?僕とこのまま放課後遊ばない?」


凛(!?そっか。わざと私を誘ってりょうの反応見てるんだ。りく先輩...この目...すぐに分かる。)

「いいですよっ!」


心愛「!?り、凛!?」


りょう「お前...!絶対ぜってー行くなよ?」


凛「え〜!いいじゃん!ダメって言うなら逆に放課後うちに付き合ってよ!買いたいものあってさ!」


りょう「そんくらい一人で行けんだろ。」


りく先輩「それなら僕と一緒に行こうよっ♪」

(凛ちゃん、俺のしたいこと分かってんじゃん。)


凛(りょうが仲のいい私を守ろうとしてるのに気付いてわざと...それならりく先輩も心愛と2人になれるからって事だよね...でも心愛とりく先輩って2人で大丈夫...?)


すると、りく先輩がりょう君や心愛に聞こえないように、凛の耳元でコソコソ話し出す。


りく先輩「全部心愛から聞いて俺と2人にすんの心配して悩んでんだろ?俺に任せろ。いいな?後からりょうと過ごすいい条件出してやる。」


凛「...!わ、分かりました...」

(なに...!?人が変わった!?少し怖い...うちが口で負けるなんて...心愛今日は許して...!)


りく先輩は凛の耳元から顔を離し、凛は少し険しそうな顔に変わる。


心愛「な、何を話して...」


凛「どこに行きたい?行きたいとこ教えて?って笑」


りょう「チッ...分かったよ。ごめんな心愛。すぐにもう帰るんだぞ?分かったな?絶対ぜってーに2人になんな。部活なんかどうでもいいから。」


心愛「わ、わかった...」


りく先輩「残念だなあ...ここちゃんのお友達って言うから遊んでみたかったのにっ。おいで?ここちゃん♪」

(計画とは違うけど、これでりょうから突き放せる材料ができたな。)


私の方に手を差し出すりく先輩

りょう君は眉間にしわを寄せ、あからさまに嫌そうな顔をしてこっちを見ている。

凛はさっきまでの笑顔に比べて何故か少し顔が強ばって見えた。


心愛「は、はいっ...」


りく先輩と手を繋ぎそのまま部室の方に向かい始めた。


凛「心愛〜!また明日〜!メールするね〜」


心愛「う、うん!!」(りく先輩、凛に何言ったんだろ...凛が言ってた事とは違う気がする。凛が嘘を...いや、そんなはず...それにりょう君と2人で過ごせるなら凛もこれで良かっはずだよね?)


りく先輩に手を引っ張られながら考えながら歩いていたその時。


ガチャ


ドンッ


いきなり廊下とは違う視界に変わる。


心愛「!?え!?」


りく先輩「なあ。俺といんのに他の奴のこと考えてんだろ」


周りを見るとたくさんの資料が並ぶ薄暗い部屋だった。

考え事をしながら歩いていた私はそのまま部室までの間にある資料室に連れ込まれていた。

私を壁に押し付け、手を顔の横につき、逃がさないと言わんばかりに膝を曲げ私の足の間に挟んでくる。もう片方の手で鍵を中から閉められた。


心愛(や、やばい...)


りく先輩「ほら、何か言ってみろよ。朝もれんとイチャイチャ登校したんだってな?俺ソファで寝てたの見えなかった?」


心愛「そ、そのっ...」


りく先輩「なに?俺のことも見てって言ったよね?なら今日このまま俺に付き合ってよ。」


心愛「え?」


チュ...


その瞬間キスをされたかと思えば鍵を閉めていた手も使い私の手を抑える。

逃げられずそのまま強引に舌が入ってきて、力が入らなくなってきて、また息苦しくなり涙目になる。


りく先輩「着いてくるか?」


心愛「ん...はっ...はひっ(はいっ)...」


りく先輩「いい子っ。」


近づいていた体を離し、私の頭にそっと手を乗せて撫でると、私の手を引っ張り資料室からでた。薄暗い資料室とは別に夕日が入ってくる廊下の窓に少し眩しくなった。


りく先輩「じゃあ今日は部活なし!休み♪」


資料室を出た瞬間から人が変わったかのように夕日のように明るくなるりく先輩。


心愛「で、でもそれってれん先輩が...」


りく先輩「ま〜だれんのこと言うの?」


心愛「ご、ごめんなさいっ...」


りく先輩「ここちゃん?僕はここちゃんのこと襲いたいんじゃなくて好きなんだよ?警戒ばかりされてるけど僕と今日過ごしたらわかると思う。れんと平等にとは言わないけど今日は僕のことを見てて。」


心愛「は、はいっ...ちなみに何するんですか...?」


りく先輩「ん〜?内緒っ!ちょっとまってね〜」


そのまま手を繋ぎ、外まで連れて行かれた。校門のところで立ち止まり、自分のスマホを出して誰かに電話するりく先輩。

りく先輩の横にいるからか、周りは物珍しそうに私を見てくる。


りく先輩「迎え来て〜。うん。そう、いつものところ。」


周りに見られているのは気になるけど、今まで友達っていう友達を作ったことがない私は誰かと放課後にまるっきりこうやって過ごすのが新鮮だった。その新鮮さから警戒心も忘れて少しワクワクしていた。


心愛「あの...電話の相手って...」


りく先輩「あ、れんのことばっか話して僕のこと話してなかった笑 僕の両親海外で仕事しててお金だけ仕送りなんだ〜。今のは専属の運転手♪」


心愛「せ、専属って...!りく先輩もお金持ちなんですか!?」


りく先輩「れんほどではないけどね笑 だから昔から親繋がりでれんと仲良いんだ〜」


心愛「な、なるほどですね...」

(私にはついていけない世界だ...)


りく先輩「あ、ついたみたい!」


そう言うと私の手を引っ張って校門からでて人当たりの少ない近くの路地裏に向かった。

そこに行くと見るからに高そうな車が止まっていた。私たちがその路地裏に現れると運転手がドアを開け待っている。りく先輩は繋いでいる手を引っ張りその車まで歩いて行った。


心愛(うわぁ...すごい...ドラマでしかこんなの見た事ないよ...)


りく先輩「ほら、乗って?」


いつの間にかりく先輩は車に乗っていて、座席の隣をポンポンしてくる。


心愛「は、はいっ...」


バタンッ


りく先輩の隣に座るとドアが閉まり車が動き出す。


りく先輩「さっき位置情報送った場所までお願いっ♪」


運転手「わかりました。」


初めての出来事に緊張し、体がこわばる。


心愛「...!」


緊張しているのが伝わったのか私の手を握ったかと思えば指を絡ませ自然と恋人繋ぎに変えるりく先輩。

驚いたと同時に何故か少し落ち着き、りく先輩の顔を見上げると、りく先輩もこっちを向いて優しい表情で微笑みかけてきた。


心愛(あれ...?私の知ってるりく先輩?こんなに優しい表情してたっけ?そう言えばいつも目を逸らしちゃってちゃんと顔みて話したいことないかも...綺麗な顔...)


りく先輩「そんなに見つめられると僕も照れちゃうな笑」

(なに?そんなに見つめてきて可愛すぎるっ...このまま俺のものになっちゃえばいいのに...)


心愛「あ...!ごめんなさい...//」


照れながらも新しい街の風景を窓から見ているとりく先輩が話しかけてきた。


りく先輩「ほら、もうすぐ着くよっ」


車が止まると出て直ぐにあったのはゲームセンターだった。


心愛「ここですかっ?」


りく先輩「うんっ!僕UFOキャッチャー得意なんだ〜!」


心愛「私、友達いなかったし親ともあんまり来たことなくて...楽しいです!」


りく先輩「もう!?早くない!?笑」


心愛「この騒がしそうな感じが楽しそうでずっとこうやって誰かと行くことに憧れててっ」


りく先輩「じゃあいっぱい楽しもっ!」

(こんなに笑顔で楽しそうな姿初めて見た...昨日れんにもこんな表情見せてんのかな...)


すると、車と同じように恋人繋ぎをし私を引っ張るりく先輩。


心愛「わぁ...このストラップ...かわいい...」


周りを見渡して1番に目に入ったのはUFOキャッチャーに並べられている小さなキラキラしたピンクのクマのストラップがあった。


りく先輩「これがいいの?」


心愛「えっ、その...可愛いなって思って...」


そう言った瞬間、お金を入れ私が可愛いと言ったピンクのくまを狙いはじめる。

2回失敗してそこまでしなくてもいいと思った私はりく先輩を止めた。


心愛「い、いや、大丈夫ですよ!そんな...!」


りく先輩「いいからっ♪」


すると3回目にして欲しかったピンクのくまが落ちる。落ちたクマを取るりく先輩。


りく先輩「やった〜!」


心愛「すごいです!可愛い〜!!」


りく先輩「はいっ!あげる♪」


心愛「い、いいんですか!?」


りく先輩「ここちゃんのためにとったんだよ〜!ほら、他にも欲しいのあったら教えて♪」


心愛「えぇ!ありがとうございます!ほ、他にですか!?」


りく先輩「うん!僕こうやって取るだけで楽しいから笑」


その後からは美味しそうなお菓子が並んだところで私が目に入って美味しそうって言ったものをどんどん取っていくりく先輩。たまに私もしてみるけどりく先輩みたいに上手には取れなかった。


りく先輩「お菓子いっぱいだ〜笑 ここちゃんがこんなにお菓子好きなんて知らなかったっ笑」


そう言ってお店の大きな袋にいっぱいいっぱい詰められたお菓子を嬉しそうに私に見せてきた。


心愛「お菓子昔から好きで...笑(料理めんどくさくてお菓子をご飯変わりにしてたなんて言えない...)」

「それにしてもこんなに良かったんですか?」


りく先輩「いいのっ!ここちゃんは楽しかった?」


心愛「はいっ!楽しかったです!」


りく先輩「じゃあご飯でも食べに行こっか!食べたいものとかある?」


心愛「ご、ご飯ですか!?何でも大丈夫です...!りく先輩が食べたいもので!」


りく先輩「ほんとにいいの?じゃあ決まりっ!こっから近いから歩いていこっか♪」


心愛「はい!」


昼間に比べ少し涼しい夕方に、真っ赤な夕日で綺麗に赤く染まる空。少し人通りの少ない道に入っていった。すると、2人とも携帯の通知が何度もなりスマホを確認する。


りく先輩「うわやっべ、れんからめっちゃグループトークに通知来てるよ笑 見た?」


心愛「えぇぇ...見てないです...!」


------------トークグループ-------------

れん先輩〔誰も来ないなんて聞いてない。俺が今日部活中止って言ったか?〕


りょう〔すみません。僕は試験の追試があります。心愛は今日は体調悪そうだったので寮に帰るよう言いました。携帯も見てないみたいです〕


れん先輩〔りくは?〕


りょう〔さっき窓からみたらスキップしながら帰ってました。〕


れん先輩〔そうか、わかった。りく。明日来なかったら生徒会の仕事また押し付けんぞ。〕

----------------------------


りく先輩「あいつ...これめちゃくちゃ怒ってんじゃん...」


心愛「フフ...ハッ...フハッ...笑」


りょう君の裏切りに思わず笑いが込み上げ、口を抑えながら笑ってしまう。


りく先輩「なーんでそんなに笑ってんのかな〜?」


心愛「い、いやっ...!それは...!」


チュッ...


いきなり私の顔を覗き込み、口を抑える私の手を、握っていた手と反対の手で離して、先輩の唇が私の唇に優しく触れる。


りく先輩「お仕置き♪」


心愛「...//」


いつもの強引さとは真逆の優しく触れるキスと、手を繋ぎながら外でされる恋愛漫画のようなシチュエーションに思わず照れてしまう。


心愛(や、やばい...なんでりく先輩にこんな照れて... 私...)


りく先輩「ん?顔赤くなってるよ?僕に惚れた?」


心愛「そ、そんなこと...!ほら!あの!夕日のせいですよ!」


りく先輩「まあそういう事にしとこうかなっ♪ あ、もう着くよ。」


心愛(あれ...?見たことある道...あっ...!!)


見たことあるログハウスに驚いた表情を隠せない。


りく先輩「あれ?もしかしてれんと昨日行った?」


心愛「は、はいっ...」


りく先輩「え〜、僕最初に行きたかったな〜...同じところでも良かった?」


心愛「はい!ここの料理美味しくてすごく好きでした...」


りく先輩「ならよかった!ほら!れんのことは気にしないで食べようよ♪」


相変わらず恋人繋ぎをしたまま先生がいるとわかっていて扉を開けるりく先輩。


チリンチリーン


先生「んんんっ!!!んんんん(たすけて)っ!」


そこには年上の金髪でショート。ピアスを沢山していて綺麗な顔立ちをした女の人が先生を机の上に押し倒した状態で無理やりキスをしていた。

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