第4話 ギルド


かの女性はリコと名乗った。

王都を拠点とする私設ギルドのマスターだと言う。


昨日は、普段厳重に守られているはずの兵士用通行路から、

魔物に侵入されたらしい。

件の湖畔からは拠点の位置も近く、早くに異変に気付いたメンバーが

魔物を撃破、ハナを救出してくれたのだそうだ。


先に襲われた番兵は間に合わなかったと……


しかし、城壁外周辺は比較的に魔物のレベルも低く、

番兵が対処しきれないような魔物が来ることは想定外だったようだ。


謎多き強力な魔物の出現については、

王立騎士団とリコさんのギルドで、

追跡調査中とのこと。


ギルドメンバーについては、

最初に目が覚めた時に聞いた甲高い声の持ち主は、狩人サエさん。

ギルドの相談役として出入りしている戦士ダイさん。

マスターのリコさんから、それぞれ紹介してもらった。


助けてくれた張本人は、すぐに別任務で出ているため会えなかったが、

騎士のバトさんと言うらしい。


直接お礼をしたかったけど、一晩留守にしてしまったこともあり、

お婆さんの元へいち早く戻ることにしたハナだった。


「お婆さんへは騎士団から安否情報が行ってるから心配ないけど、

早く元気な顔を見せてあげてね」

と、最後までリコさんは優しく私を見送ってくれた。


なぜだろう、ハナはリコさんに昔から知っているような、

そう、まるでお姉さんのような感覚を覚えていた。

帰り道、とても心温まり、包まれるような気持ちになり、

家路までの足取りは非常に軽く感じていた。


城壁に囲まれた王都は季節感さえ乏しいけれど、

見上げた春の空は清々しいほどに青く、広がっていた……



続く。

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