舞台の夢

こんな夢をみた。


気が付くと私は舞台袖に立っていた。舞台の中央では、もう芝居が始まっている。辺りを見回せば、舞台袖では他の役者が、台本を一生懸命読み込んで、ブツブツと口の中で台詞の練習をしている。


私は自分の台本を取り出して、ページをくった。ところがその台本は真っ白で何も書かれてはいないのだった。これでは自分の出番が分からない。仕方なく舞台袖から他の役者の芝居をじっと見つめた。芝居は順調に進み、私は「自分は台本を持たされてはいるが、役者ではないのではないか」という気持ちになってきた。


そうこうしているうちに、それまで舞台で大立ち回りを演じていた役者が舞台袖に帰ってきた。彼は汗を拭うとすぐさま彼の台本を広げた。私は彼の背中越しに、そっとその台本を覗きこんだ。


彼の台本は私の台本同様、真っ白で何も書かれていなかった。私が何か分かった気持ちになり始めたその時、全ての照明が落ちて、芝居は終わった。

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