小早川家の夏

容原静

個展 小早川春 果てない未来

個展 

小早川春

果てない未来



001 あげない夜

霧が覆っている。

黒線が幻と現実を乱している。

奥へ走って消えていく女性。

誰も彼女を追いかけようとしない。

総ては霧の中。

彼女が何を追い求めているかも分からない。

全ては曖昧である。


002 cat walk

工場のラインに猫が流されている。数多の猫。みな表情豊かだ。


003 死なないで

少女がトカレフを口の中に突っ込んでいる。

少女はマリアに祈るようにトカレフを持つ。

死なないで欲しい。

その想いは彼女には届かないのか。


004 エリーゼへ

エリーゼと呼ばれる女性がピアノの中で血塗れになって、死んでいる。

耽美でエロティック。しかし彼女はほったらかされている。


005 <塔>

現実には存在しない街の <塔>。

如何にも現実にありそうだが、ない。

しかしそのことに鑑賞者は気づかない。


006 白日

美人画。しかし彼女の顔は白く塗りつぶされていて見えない。

勿体無いと誰もが思う。

その気持ちは彼女には届かない。


007 雲

白い雲がただ描かれている。


008 姉

実の姉、小早川冬の肖像画。

冬に描かれたのか、冬の装いで何処か寒そうにしている。

現在の彼女を描かれているように見えるが、実際の彼女は牢獄の中にいる。


009 兄

実の兄、小早川秋の肖像画。

仕事を終えて、疲れきったときの秋が描かれている。


010 家族

小早川家の三人が描かれている。

古民家の軒下で集合写真を撮るように畏まっている。


011そうだ夢だ

女の子が部屋の隅で泣いている。

とても詫びしい絵。


以下省略

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