第19話

 ウォーウルフを討伐に行くために、アリスは早起きをした。

 アリスは荷物を肩掛けカバンに詰め、出かける準備を済ませてブルーノを待っていた。

 外はどんよりと曇っていて、アリスをより不安にさせる。

「おはようございます、アリスさん」

「おはようございます、ブルーノ様」

 

 ブルーノは動きやすそうな鎧を身にまとい、小さな袋を腰に付けていた。

 反対側の腰には、大きな剣をぶら下げている。

「ブルーノ様、剣は重くないのですか?」

「これは、色々な戦いに一緒に挑んできた相棒みたいな物ですから、気になりませんよ」

 そう言うとブルーノは剣を鞘からすっと引き抜き、構えて見せた。


「心強いです。ありがとうございます、ブルーノ様」

「お礼はウォーウルフ達を倒してからにして下さい。アリスさん」

「そうですね。では、行きましょうか」

「そうしましょう」

 アリスとブルーノは荒れ地の道を、エルフの谷に向けて歩き出した。


 しばらく歩くと、スライムが現れた。

「きゃっ」

「アリスさん、大丈夫ですよ。スライムくらいなら素手でも倒せます」

 ブルーノはそう言ってスライムを素手で殴ると、スライムは逃げていった。

「ブルーノ様はお強いんですね」

「一応、国の第一騎士軍の隊長ですから」


 その後は、乾いた風のなか、ただ黙々とエルフの谷を目指し二人は歩いた。

 半日も歩いただろうか? やっと、エルフの谷の入り口が見えた。

「それでは私が先に入って、エルフの谷のレーンさんを探してみます。ブルーノ様。」

「分かりました。ウォーウルフがいるかもしれませんから気をつけて下さい、アリスさん」


 アリスは辺りを見回しながら、エルフの谷の中に入っていった。

 エルフの谷には怪我人があふれていた。

「人間までやってきたのか!? なにをする気だ!!」

 エルフの傷ついた青年が、アリスを怒鳴りつけた。

「私はエルバの森に住むアリスと言います。レーンさんを訪ねてきました」

「レーンは戦いにウォーウルフに敗れて、あの家で寝ています」


 アリスは青年の指さした方にある赤い屋根の家に向かった。

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