第2話
町に続く道をアリスが歩いていると、一人の兵士が倒れていた。
アリスは兵士に駆け寄ると話しかけた。
「どうしましたか? 大丈夫ですか?」
「ああ、私は毒蛇に噛まれてしまったのです。毒は吸い出したのですが、腫れてしまって動けないのです」
そう言って兵士は脚の甲冑を外すと、左足首が酷く腫れていた。
「まあ、可哀想。ちょっと待って下さいね」
アリスは荷物の中から、所々赤い毒消し草と薬草を採りだし、良く揉んだ。
そして、携帯用の小さなすり鉢にそれを入れて、良く擦ってペースト状にした。
「これを塗れば、良くなるはずです。昔おばあさまに教えて貰いました」
アリスが薬を塗り、しばらくすると兵士の脚の腫れが引いていった。
「ありがとうございます。痛みがなくなりました。もう歩けそうです」
「良かった。私はアリス・スミスと言います。森の傍の古い屋敷に住んでいます」
兵士が兜を取ると、栗色の髪が風になびいた。瞳は黒曜石のように輝いている。
「私はブルーノ・ジェファソンです。エルバの町で兵士をやっています」
ブルーノはアリスを見つめて問いかけた。
「どちらまで行かれるのですか?」
「私もエルバの町まで」
アリスはそう言って、荷物を持って歩き始めた。
すると、ブルーノはアリスの隣にならんで、荷物を取り上げた。
「アリスさん、ずいぶん重い荷物を運んでいたんですね。私が町まで持っていきましょう」
「いいえ、大丈夫です。怪我が治ったばかりなのに、無理をしてはいけませんよ」
アリスの言葉にブルーノは微笑んだ。
「大丈夫です。こう見えて丈夫さだけが取り柄なので」
「……それでは、一緒に荷物を持っていただくと言うことでよろしいでしょうか?」
「分かりました」
アリスとブルーノは大きな荷物を真ん中にして、並んで歩いた。
「エルバの町までは後一時間ほど歩けばつくと思いますよ」
「そうですか? 思っていたよりも近いんですね」
アリスはそう言って、ブルーノを見上げた。
精悍な顔立ち、立ち居振る舞いの良さ、きっと町では女性にモテるのだろうな、とアリスは思った。
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