第124話 猫人族の里で救援活動


 俺たちが率いる巨人族の里救援部隊……気がつけば千人にもなる大部隊は、あともう少しで巨人族の領域に差し掛かろうとしていたが、その隣の猫人族の領域にも『穴』が出現しているのが確認できたため、そちらの方を浄化してから移動することになったのだったが……


『前方に猫人族の集団! 『穴』から逃げてきたみたいです!』


 部隊の前方で斥候をしていたミィナスが陣営半ばまで戻ってきて報告してくれる。目を凝らして魔力を集中して見てみると、猫人族が……家族単位でバラバラに……割とバラバラ……種族特性なのだろうか? やはり元が猫だからだろうか? いまいちまとまりがない感じでこちらの方に逃げてきているようだった。


『とりあえず話を聞きたいけど……誰がリーダーかわかりにくいな……』

『そうですね、猫人族は家族単位で動くと聞いていますので……誰に聞けば良いのか……』


 現地人のミィナスと話をしてもよく分からなかったので、俺は合流した猫人族達にとりあえず話しかけてみるが……残念ながら言葉が違う様で通じなかった……完全に獣人共通語のみを話す人達の集まりのようだった。しかたがないので獣人共通語を話せる巨人族のフェニーリャとミィナスを中心に情報収集をしてもらった。


『話をまとめると……『穴』の気配を察知したので荷物をまとめてさっさと犬人族の方に逃げてきた……と』

『ふむ……判断としては間違っていないな。妖魔は戦闘をしない限りはあまり動かない場合があるからな……』

『土地を捨てるとは……ワシらの常識では考えられんが……街に愛着が無ければそれも手じゃのぉ』


 ヴォルスとグニルーグが土地を治めているものの視点で納得している様だった。猫って場所にいつく生物じゃ……とも思ったが、危険だったらものすごい速度で逃げるよな……ってこの人達は猫人族か、地球の猫じゃないか?

 ふと考え事にふけっていると、通訳していたフェニーリャが猫人族の意見を伝えてくる。


『えと、あの場所はお気に入りなので取り戻してくれると嬉しい……取り戻せないなら犬人族の街に移り住む。だそうです』


『……まぁ、アレか……探知機にも6つ反応あるし……一気にやってしまおうか……『巨大穴』になられても困るしね』


 俺たちが方針を決めていると、怪我人を治しに行っていったチサトとシュウトくんが驚いた感じで戻ってきた。


『すごいわ! 怪我人が一人もいなかったわ!』

『良い逃げっぷりだったようです……さすが猫?』




 俺は前回の犬人族の時も思ったのだが……やはりこれは……とりあえずこの世界に詳しく割と公平な意見を聞けそうなヴィナルカに質問をしてみる。


『な、なぁ、ヴィナルカ、この世界の獣人ってのは……元の動物と近い性格を持つものなのか?』

『ええ、そうね。そのはずよ。神は神と獣をかけ合わせ知識を持つ生物を作り上げた。そしてその生物にその場所を管理させたのです……だったかしらね? 細かい所は覚えていないわ。神が獣人を作られた場所も今ではわからないし、何を管理させようとしたかは……歴史が失われた今ではわからない……謎だらけの逸話ね』


『ありがとう。次からは、なんとなく元となった獣達の性格を考慮する様にするよ』

『そうね、この世界の常識でもそんな感じで考えられているわね』


 俺がヴィナルカと話をしていると、気がついたらミィナスが彼女との間に入っていた。とりあえずここの所いい仕事をしているので頭をなでておいた。





 それから数刻後……


『犬人族すごい!』

『隊長格は別格ですね! セクティナ並に強いかも!』


 チサトとシュウトくんが犬人族の戦いぶりに感嘆の声を上げる。


 やはりあれだけの『穴』を出現させていたので中心には巨大な『巨大な穴』が出現していた。普通の『穴』は部隊を6つに分けても余剰な戦力だったので一気に浄化をし、終わった部隊から中心の『巨大な穴』の浄化……だったのだが、犬人族が想像以上に強く、通常妖魔くらいなら蹴散らし、阿修羅タイプだろうが、巨大タイプだろうが、戦士長クラスの大型な犬人族が数人集まると簡単に倒せるようだった。


『犬人族はこんなに強いのに……苦戦していたわよね?』

『あ、千里、犬人族の場所には『穴』が12個出現していたんだって』

『……ドヴェルグ王国並だったのね……犬人族ってやっぱり強いんだ』


 ミィナスが犬人族の話を聞いていたので俺たちに解説をしてくれる。


『なんでも、族長さんの話では9個を浄化して神聖球を使い切ってしまって大変だったとかおっしゃられてましたね。倒しても倒しても出てくるから持久戦になっていたそうです』

『……なるほど……そういうことだったのね』


 俺は次の猫人族と巨人族の里近辺の情報と作戦ばっかりを考えていたので、終わったことを考えたりする余裕が無かった。色々聞いておいてくれて本当にありがたい。


 それからも普通の妖魔は各部隊が問題なく殲滅していき、それぞれの戦士長クラスが巨大な妖魔をなぎ倒し、厄介な相手は探索者達が集まって袋だだきにし……見ていても安心する戦闘になっていた。

 


『俺、巨人族の里、心配になってきた……何個『穴』をつくられているんだろうか?』


 戦闘を後ろで眺めながらエルドがボソッとした感じで呟く様に話す。たしかに犬人族の里で出現した規模の『穴』だったら……大惨事だろうな……


『巨人族の戦力って……』

『全部合わせれば犬人族と同じくらいになると思う……レスタジンのものが知っているならば……『穴』は12個か……みんな無事だと良いんだけど……』

 

 俺は手元にある『穴』探知機を使用してみる……最低8個は発生しているのだけはわかるが……円状に12個配置されていたら検知しきれない……やはり大変なことになっていそうだった。



● ● ● 



 犬人族の戦士長達数人が猫人族の里の戦闘終了後に集まり野営をしながら驚きと興奮の中で話をしている。


【いや~すごかったな】

【だなぁ……夢で見たより強い感じだな】

【死者なしだとよ……強いし、怪我しても治してくれるし、なんかいたれりつくせりの戦闘だな】

【ああ、ちぎれた腕をくっつけて治してもらえたそうだな……】

【なにそれ……おとぎ話みたいじゃん】


 犬人族の一人が、支給された戦闘食をかじりながら話す。どうやら特製の干し肉のようだ。


【ああ、そうだ、お前の言っていた、ほら、あれ、黒騎士だろ? 聞いてたよりも早くて鋭い感じだな。てっきり豪剣使いかと思ってたわ】

【ああ、そうだったな、まぁ、一対一じゃ勝てなさそうだったな……そうだ、あの噂の狂戦士は、なんか、こう……陣の奥で魔法撃ってるだけだったらしいぞ?】

【そういや前線では見なかったな……】

【里の防衛戦の時は仲間を治療する部隊だったみたいだし……なんか夢と違う感じだな】


 犬人族がお互いに顔を見合わせ、疑問の表情となる。


【そういや、共和国に突っ込んでいった鬼姫もいるし……なんか色々と違いすぎねぇか?】

【ああ、俺もその夢をみたわ。屈強な共和国騎士を蹴散らして行ってたな……まぁ、俺はその後やられちまうんだが……ドヴェルグ王もいるし……何かめちゃくちゃだな】


【なんかさぁ、里で治療してた人が聖女? 聖女が仲間なんだろ? なんかあの悪夢で見た大きな戦争起きないんじゃない?】

【だと良いな……】

【すでに聖女信者がウチの部隊にもいるから、今更……戦えは無理だろうな……】


 犬人族の一人が満天の星空を見上げてボソリと言う。


【なんか……悪夢のおかげで上手くいっている気がするな……】

【……確かに……】

【さすが神様……こうなることを予測されていたのだな】




△ △ △  聖騎士アルティア視点



 私は目の前の兎人族の戦士長と対峙していた……相手の速度はおそらくこの世界でもトップクラス。今までの試合を見てきても圧倒的な強さを誇っていた。私も剛力姫と影で揶揄されている様だが自分では速度の方に自信があった。

 相手の高い技術とかなりの速度の連撃に木剣と盾をあわせて弾き、いなし、切り返し……良い。やはり試合は良い。私を楽しませてくれる。

 私は振るう木剣に段々と魔力を練り込み威力を上げていくと兎人族の戦士長の木剣が相手の手から弾き飛んでしまう。ああ、もう終わりか……もっと続けたいのに……


『ま、参りました……』


 周りの観衆からは歓声が上がる。私は「スポツチャバラ」の大会では負けたことが未だにない。私を倒せるものは未だ出てこないのだろうか……




『……アルティア強いな……あれ、真剣だったら俺もすぐ殺されるな……』

『そうですね……仲間だったら心強いですが……』

『私では相手になりませんな……』


 エフルダム王国騎士団の面々が「スポツチャバラ」の大会を見ながら感想を言い合う。大会が実施されてからすでに2日が経っていた。その間にも両陣営に続々と人が集まり一触即発……ではなく、ただのお祭り騒ぎになっていた。



『何をのんきなことを言っておられるのですがか……』


 エフルダム王国の陣営にレグロスが呆れた顔をして入ってくる。その両脇には犬人族と小鬼族が控えるようについてきていた。


『おお、レグロス! 首尾はどうだ?』

『首尾も何も、打ち合わせ通り事は進んでおりますよ。帝国までの街道に糧食の補給地を2箇所設置。道中の氏族達には連絡済みなので、進軍をしてもいきなり攻撃されることもありません』


『おお、それは行幸。してその者達は?』


『はい、最新の情報を持った者たちを連れてきました。要約しますと……国境沿いにはやはり悪夢の予測の通りに帝国軍の陣が敷かれている様です。およそ1万はくだらないとの事』


『なんと……動きは?』


 帯同していた身なりの良い小鬼族が答える。


『はい、それが全く動きが無く……陣を敷いて、訓練をしたり、カードゲームをしているだけだったり……統率はとれているのですが時間を潰しているだけに見える感じです』

『む、むぅ……やはりダムの決壊を予測しているのか? 引き続き監視をよろしく。』


 そのやり取りを見てレグロスがジェネラウールを避難する様な目で見る。


『ジェネラウール様……この事を知っておられたので帝国までの街道の整備と糧食を用意させたのですね?』

『ああ、まぁ、知っておったな。はは……』


『なぜ教えてくれなかったのですか? すぐにでも出向かなければ危険としか思えないのですが?』

『まぁ、あれだ、順番があるのだよ。おそらく帝国軍の奴らも悪夢を見ている。それを前提で動かねばならん』


『……ダムの決壊後動くと?』


『まぁ、そうだな……まずはそっちだ。して犬人族のそなたは?』


 犬人族が犬人族独特の敬礼の様な動作をしてジェネラウールの問いかけに答える。


『はっ。私めの方は『聖女』様達が率いる救援部隊の状況を知らせに来ました』

『ああ、ディネーブ城からの救援だな……』

『はい、どこからの救援かは……すみませんがわかりませんが、救援部隊千人が隊長格を筆頭に巨人族の大里に向かっております』

『せ、千人?? 獣人達が千人? あの兵揃いが? う、多いな……あ、巨人族の大里とは……ダムの脇だったかの?』

『そうです。元はダムを守るために作られた街と聞いております』


 女騎士のレジェリンスが思わず会話に口を挟む。


『私のみた悪夢とあまりに違いすぎますね……これでは予測が……』

『あ、聖女様たちは『穴』探知機を持っておられますので、随時浄化されながら移動されているそうです。おかげで我が里も助けられました』


ジェネラウールが驚いた表情をして聞き返す。

 

『探知機とな?』

『はっ。『穴』の方向がわかると言うことです。精度もかなりのものだと』


『完全なイレギュラーですね』

『ですね……『大きな穴』は出現しないのかしら?』

『だとすると崩壊もなさそうだな……』


 その場に集った者たちでしばらく議論が続くと外で大歓声が上がる。どうやらアルティアがまた勝ち上がったようだった。


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