第120話 巨人族の里へ出発
翌日の早朝に俺たちは巨人族の里に向けて出発をした。
帯同していた鉱石人の職人たちは残念ながら戦闘では同行できるレベルに無いとグニルーグの判断でディネーブ城に駐留し、他の『流星の狩人』と『グロッドの巨槍』、ヴォルス、アルヴール、グニルーグの大所帯での作戦になっていた。
戦闘が予想されるので、飛ぶように跳ねる全力移動ではなく、魔力消費を抑えたジョギングの様な移動になっていた。今回はヴァノマーパルから持ってきた荷物を雑嚢に取りまとめて持ってきているが、戦闘になったら放棄することになってしまいそうだ……この世界で手に入らない大事なものは自分の普段遣いのポーチなどに入れて身につけておいた。他のものは……いざとなったら全部の道具や資材を現地調達だな……
『グニルーグよ、本当に感謝する……ここまで軽くて動きやすいとは……』
『本当ですね、割と見た目がいかついのに……ほんとうにすごいですよ、これは!』
隊の中央を並走して走るグニルーグにヴォルスとシュウトくんが感謝と賛辞を送る。
『そうじゃろう、そうじゃろう。ウチの腕利きの職人がわれこそはと作っておったからの。性能は折り紙付きじゃ』
『ウチの鎧も本当にありがとう……ウチ、こんな良い鎧初めて……』
『俺、感謝する……この鎧と盾ならみんなを守れそう。短期間でここまで……本当、ありがとう。』
キョウカとエルドも感謝の意を述べる。魔力を込めればかなり固くなり、しかも軽くて音を消す様に色々仕込みまで入れてもらっている……いたれり尽くせりの一品になっていた。正直過剰なくらいな気がするが……鉱石人が見た悪夢を回避するにはこれくらいが必要だと、職人達が気合を入れて頑張ってくれたらしい。
『フム……感謝はお主らが生き延びてから……お主達の口から職人たちに言うがええじゃろう』
仲間が褒められて嬉しそうな表情をしたグニルーグの返答を聞いた俺たちは思わず笑みがこぼれてしまう。こういう王だったから悪夢に振り回されずに、一致団結して前を向いて職人達も頑張ってくれたんだろうな……
【いいなぁ……俺たちも頑張って稼いであれだけの鎧と武器を……】
【ウチの里じゃ作れないだろうなぁ……】
【お前ら……災厄に行きたいのか?】
【あんま行きたく……いや……行きたくないな】
【鎧は欲しいけど行きたくないなぁ……】
【あんたたちにはエルドみたいな覚悟がないから必要ないわね……】
後ろをついてくる『グロッドの巨槍』が何やら内輪で話をしているが、獣人語? 亜人語? らしく、俺には聞き取りは出来なかった。
今回は戦闘をメインに担当をするのは俺たち『流星の狩人』になっていて、彼らには『神聖球』の運搬とその他かさばる野営用具などを持ってもらっている。彼らもかなり戦えるので荷物持ちとしては正直もったいないくらいだったが、『流星の狩人』のメンバーの非常識な強さを利用したほうが良いと快く引き受けてくれた感じだった。
『前方5町(550メートル)、蜥蜴人族の集落……えっ! 『穴』! 『穴』と蜥蜴人族が交戦中の模様です!!!』
先頭を索敵しながら疾走するミィナスが俺たちに注意を喚起する。
俺たちは各々が武器を構え足を早めて遠目に見てもややジリ貧な感じになって戦っている蜥蜴人族の援護へと向かう。ぱっと見た所はやっかいな巨大タイプや阿修羅タイプなどはいないのでそのまま突撃して浄化しても大丈夫そうだな……追加で出てこないと良いが……俺は意識加速された世界で戦術をいくつか考えるが、特に今回は考える必要もなさそうだ、『神聖球』をできるだけ早く起動させればそれで全てが終わるだろう。
『全員、そのまま援護に! フェニーリヤ、『神聖球』の設置をよろしく! フェニーリャを守るように突撃するぞ! 他の『グロッドの巨槍』のメンバーは離れた所で待機していてくれ!』
『了解!』
『分かったわ』
『おう!』
『行くぞ!』
そのまま俺たちは背負っていた背嚢を地面に投げ捨て突撃を開始する。
△ △ △ 聖騎士アルティア視点
前回の国境でのにらみ合いの後、私は近隣でまた『穴』が出現したと聞き、騎士団を率いて『穴』の浄化作業を終えてからまた国境にある『自由と盟友の架け橋』に戻ってきていた。
あれから2日ほど経過しても、いまだに両国の軍勢が陣取っているのだが……しかも、どこからどう見ても軍勢が増えている……
やはり、ここで戦争が起きてしまうのだろうか……私はとても不安になってくる。
あれ? なんか様子が変だな? 私は馬の歩みを早め橋の近くへと近づく。
『じょ、状況はどうなっているの? これは?』
私は近づくにつれて橋の上が異様な雰囲気……いや、お祭りのような騒ぎになっていることに気が付き動揺をしてしまう。思わず近くにいた巨人族の兵士に話しかけてしまう。
『おお、アルティア様! おかえりなさい。騎士団のジェネラウール様があまりに暇なので「スモウ」大会をしようと話が出まして、「スモウ」をやっていたら、近隣の町から騒ぎを聞きつけた商人が出店を開き始めてしまいまして……まぁ、その、懸賞金も結構な……あ、すみません、次は俺の出番で……』
巨人族の兵士が鎧を脱ぎ捨て橋の中心に向って走り出す。周りも楽しそうな雰囲気になっていて拍手喝采が起きている……すでにかなりの試合を終えている感じだな……
この橋は馬車4台が余裕ですれ違うくらいの広さになっており、橋の中央に関しては円状の舞台の様になっており観光名所となっていたのだった。その中央に急造の「スモウ」をする舞台を整えていたようだった……私は闘技場の様な独特で異様な雰囲気に飲まれめまいがしてしまう……思わずレグロスを探すが……
『レグ……これは一体どう言うことなのかしら? あれ? レグ?』
周りを見ると、レグロスはいつの間にか私の側から姿を消しており、護衛の騎士団のメンバーしかいなかった。
『アルティア様、レグロス様はどうやらジェネラウール様と話し込んでおられるようです』
『え?』
私は「スモウ」の舞台の向こう側の相手陣営の方に視線を移し、レグロスの姿を探す。確かにアチラ側にいた。かなり真面目な話をしているのだろうか? 顔がなり真剣だ……私もすぐに行くか迷っているとレグロスがこちらの方に気がついたようで戻ってくる。
『ああ、すみません、情報交換をしていました。いやはやすごい状況ですね。私も出場しないかと誘われてしまいましたよ。精霊魔法無しの身体強化のみの「スモウ」ですね。いや~私も幼い頃やりました』
『レグ……そうじゃないでしょ、なんでこうなってるの?』
『……アルティア様? 呼び方?』
『ああ、ごめんなさい、レグロス……混乱してしまって……』
『まぁ、あれですよ、私達は事があるまで小競り合いなどせずに仲良くしていれば良いのですから、このままで良いんじゃないでしょうか?』
『……そう言うものなのかしら?』
私はいつもは信頼がおけるレグロスが……若干信じられなかったので周りの護衛の騎士を見回してみるが……誰もが困ったような表情をして返答をしてくれなかった。
一方、陣営を築いている両軍の兵士やジェネラウール叔父さんたちは楽しそうに「スモウ」大会を見物して大騒ぎをしている……どうしてこうなったんだろうか……
気がつけば隣にいたレグロスも巨人族の隊長や、犬人族の隊長や、兎人族の隊長たちとなにか話をしているようだったが、あまりの事に私は何を話していたかを聞く気にすらならなかった。
……あれ? 兎人族は……この前いたっけ? 私はやっぱり馬鹿なんだな……頭がついていかない……なんかもうどうでもいいや……
△ △ △
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