第104話 浄化作戦開始

 翌日の明朝、俺たちは朝ごはんを済ませた後、借り上げられていた宿を出発し、作戦会議室に向かう。レスタジン人達は先に作戦会議室で準備をしているので先に宿をたっていた。

 昨晩は宿につくとレスタジン人も俺たちも疲れがピークで、全員が早々に寝てしまった。そのせいで色々話をするつもりだったが詳しい話ができなかった。


『ああ、アルヴールたちとお話したかったのになぁ……』

『詳しい話は作戦終了後ですね。全員無事だと良いですね』


 チサトとシュウトくんは転生者たちと話がしたかったらしくしきりに残念がっていた。まぁ、作戦時間を考えると4日後にはみんなで祝杯を挙げられるはずだ。それから沢山話せばいい。



 俺たち作戦会議室につくと、レスタジン人達は探索者が着る標準的な革鎧と普通の服などを装備してお互い談笑などをしていた。見る限りはすぐにレスタジン人と判断はされないだろう。武器がちょっと独特かもしれないな、全員曲刀みたいだし。


『おお……なんか別人……ってか綺麗ねぇ……』

『へぇ……ウチ思うけど、ヴィナルカと同じくらい綺麗さだねぇ……』

『わざわざマスクで顔を隠すのはなにか理由があったんですかね?』


 レスタジン人の集団が昨日マスクを取った時点でかなりの美形揃いでびっくりしたところだったが、装備や髪をしっかりとセットした後に見るとまたモデルのような綺麗な人達の集団になっていた。『流星の狩人』のみんなが一様に驚く。


 ちょっと間を置いてからシュウトくんの疑問にヴォルスが答える。


『ああ、なんでもその昔、かなり大昔の話らしいが、レスタジン人の容姿が優れていたのでよく人さらいにあったり……争いの火種になったらしい。それから顔を出すのを禁止した……という言い伝え的な昔話がある……信じがたいと思っていたが……彼らを見ると信じてしまうな』


 ヴォルスの解説に、シャズイール達が驚いた感じで反応をする。昔話を知らなかった感じだな。


『そう……外の世界ではしっかりと語り継がれているのね……私たちは教義で決まっていたことをやっているだけだったわ』


『そうなんですよ~家族以外に見せちゃいけないんですよね、顔。理由や歴史は知りませんでした』

『あとさぁ、鏡もなかったしなぁ~作ってもいけないらしくてよぉ~なんつ~か、ホント変な国だったぜ。水に映る自分しか見たことなかったしなァ~』


 アルヴールとユズィの転生者組の話を聞くと、どうおかしいのか解説してくれてわかりやすい。シャズイールが二人の話を聞いてびっくりした表情をしているからなおさらそう思った。習慣になるくらいに普通に生活をしていれば日常を不思議と思わないものだものな。


『なんか色々宗教で縛っている国なんですねぇ、それにしても全員が美形ってのも凄いですよね……』

『ほんとに……』


 シュウトくんとチサトがマジマジと見ながら呟く。それに対してシャズイールが戸惑いの顔をしながら返答をする。


『私はあまりわからないわ……』


『あ~まぁ、私は美形になりすぎてびっくりですけどね、転生してから鏡はじめて自分を見たんですけど、どこの「モデル」かって感じですものね』

『ああ、おれも前世は、ゴツい系だったからよぉ~ なんつ~か、むず痒いぜ……』


 転生者の二人はマイペースな感じだったが、その他のレスタジン人の男たちがシャズイールとアルヴールと女性隊員をチラチラみて顔を赤くしているのが印象的だった。俺から見ても美人で色っぽい妖艶な親子って感じだものな……しかも母とは思えないほど若く見えるし……ひと悶着ありそうだ……




 そんなやり取りをしていると鉱石人の戦士と狩人達が支度を終えて作戦会議室に入ってくる。かなりの人数だな……20人以上はいるか? その後ろをドヴェルグ王国の戦士長達が続いて入ってくる。戦士長のブレズーグがシュウトくんに話しかける。


『シュウト、ヴォルス、皆に作戦を説明をしたい。頼めるか?』

『ええ、作戦自体は……参加する人、結構いる感じですね』


 それから大きな机に地図を敷き、ドヴェルグ王国らしい凝った駒をならべて作戦の解説を始める。シュウトくんとヴォルスが主導でわかり易く説明をしてくれる。鉱石人の参加人数が多いので、半数ごとに分け、『流星の狩人』チームと、レスタジン人チームの2つに分かれて作戦を実行することに決まった。


『『穴』からでてくる妖魔が多すぎる場合には必ず撤退を選択してください』

『怪我だけだったらあたしが治すわ! 絶対に生きることを選んで!』


 チサトが皆の不安を取り除こうと言った発言だったが、言い終わると、レスタジン人もドヴェルグ王国の戦士たちも膝まづき頭を垂れる……


『……だから、それはダメ! 嫌なの、普通にして!』


 チサトが本気で嫌がる感じだったので、皆が渋々と立ち上がる。あとで聞いたことなのだが、チサトの中では『神の力』は自分の力とみなしていないらしく、人の力を借りてやってるのに、色んな人に丁重に扱われるのがとても気持ち悪いそうだ。



『ヴァノマーパルの探索者組合からの伝令が到着しました!』


 俺たちがコメディの様なやり取りをしていると、鉱石人の衛兵の声が作戦会議室に響き渡る。部屋に現れたのは兎人族のレスターだった。あれ?ヴィナルカじゃないの?


『こちらは順調そう……だな? すごい人数だな。さて、時間もなさそうなので早速報告だ……丁度作戦会議中……あ、地図があるな、助かる』


 レスターは部屋に入ってくるなりあたりを見回し、別働隊の状況を説明してくれる。


『あちらの部隊が潰せた『穴』はここと、ここの2つ。後今日はこの『穴』の浄化になるだろう』


 レスターの説明を聞いていたヴォルスが険しい顔で質問をする。

 

『……思ったよりも遅いな……苦戦している感じか?』


『雑魚の妖魔がかなり出てくる感じらしいな。俺は戦っていなかったから分からないが……ラレスがヴィナルカに協力を要請するくらいだな。彼女の氷魔法で動きを封じてから一気に『穴』を封じないとジリ貧になるらしいぞ』


 ヴィナルカを取られちゃったか……たしかに彼女が闘技場で見せてくれた氷の魔法で一気に妖魔を凍らせて足止めをしているスキに『神聖球』を発動させて追加の妖魔がない状態で戦えば……あの人数なら安定して戦えるだろうな。


『こちらも戦力をまとめたほうが良さそうですね……』

『その様だな……シャズイール、『穴』の大きさなどは全部おなじなのか?』

『生贄にしている魔獣次第ね……私は突撃イノシシを生贄にしたから……ヒルシャル、あなたの隊はどうなの?』

『俺たちも突撃イノシシだなぁ……あれしかうまく誘導できないからな。おそらく全部同じ規模の大きさの『穴』だと思うんだが……』


 二人の発言に、レスタジン人だと気がついたレスターが驚愕の表情をしてこちらに質問をしてくる。


『た、タクマ、ど、どうなってるんだ? レスタジン人なのか? そこの軍団は?』

『呪いを解いたら仲間になってくれたのよ』


 チサトが自信満々に理由を答える。色々と詳細を話さないと信頼されそうにない気がするが後回しだな。レスターが分けわからないといった表情になっている。


『……ああ、まとめるとそうなるな。経緯はもうちょっと落ち着いたらちゃんと話す。今は『穴』の浄化が先だ。しかもかなり早めにやらなければおそらくダメだ』


『わ、わかった。とりあえず向こうに届ける伝令などをまとめておいてくれ……理解するのを拒否しよう』

『それが賢明かもな……』



 それからも若干の作戦の軌道修正を行いながらも作戦の開始となる。2部隊に分けるのは変わらなかったが、最初の『穴』までは全体でいくことになった。そこから『穴』の状況を見て随時対応となった。

 兎人族のレスターは別働隊にこれからの作戦を伝えに早速旅立った。


 レスタジン一行と、ドヴェルグ王国の部隊が移動を開始する。『流星の狩人』は特殊な装置でできた『触手の穴』を消せるかどうかのテストをしてから合流する手はずになった。


『ではチサト様!お気をつけて!』

『おめぇ、よぉ~すぐに向こうで会うんだから別れはいいだろぉーが』

『うるさいわねぇ、敬意が足りないわよ!』

『嫌がってるのわかるだろぉーがよぉ~』

『うっ……私が言いたいだけよ!いいじゃない!』


 相変わらずの転生者漫才を聞きながら俺たちは『触手の穴』の方に向った。




 俺たちは『触手の穴』があった地点に移動する。周囲は枯れ木と枯れ草だけになっており、死の空間にいる感じだ。まわりは生き生きとした緑の自然が見えるのでちょっと不気味だな……


『触手が出てないですね……』

『そうですね、魔力感知しても存在を感じませんね……『穴』の向こう側にいるのでしょうか?』


 シュウトくんとミィナスが上空に浮かんでいる『触手の穴』をみながら何やら話している。『触手の穴』は上空30メートル地点くらいまで上昇してしまっていて、手出しがしにくい感じになっていた。


『ちょっと試しに魔法撃ってみますね』


 そうシュウトくんが言うと、炎の槍の魔法を『触手の穴』に撃ってみる。到達する付近になると『触手の穴』から黒い触手が出てきて、まるでタコの捕食のように炎のやりを包み込み消し去ってしまう。魔法を吸収しているのだろうか?


『それじゃぁ、あたしが軽くやってみるね……』


 神聖力をためたチサトが前回の弱めで上空の『触手の穴』にむかって塊を撃ってみる……が、到達する辺りで『触手の穴』がスライドするように動き更に上空方向に動いてしまう。


『やっぱり逃げられるわね……どうするのこれ?』

『さぁ……どうすればいいんだろ……』


 チサトの質問に誰も答えられなかった。じっと『触手の穴』を観察していたミィナスが異変に気がつく。


『あれ? 『触手の穴』 の周りにある魔力の流れが減りましたね』

『え? 魔力の流れ? なにそれ?』

『あ、魔力視をかなり強める感じにしてみてください。そうすれば見えるかと思います』


 そこにいた一同が集中しだすと、たしかに魔力の流れみたいのが『触手の穴』方向に流れている……放射状に7本くらいあるな……さっきまで8本だったってことか?


『ほう……これは……『穴』に魔力が流れていくなどはじめて知った……研究が捗りそうだ』

『ウチ、気が付かなかった……魔力視も魔力をかなり多めにすると色々見えるんだねぇ、そっちも知らなかった』


 ヴォルスとキョウカの異世界の達人クラスの二人も知らないんだったら……俺も知るわけはない訳で……レーダーの威力を上げて小さい情報まで拾う感じなんだろうか? 


『今回の『穴』全部で12個の予測。2個防いで、ラレス達別働隊が2個浄化。今どちらか浄化したとしたら……残り7個なる。あってる?』

『ああ……なるほど、そうなりますね。やはり周辺の『穴』を全部浄化すればなんとかなりそうですね』



『それじゃぁ、この『触手の穴』は放置して、周辺の『穴』の浄化作業の方に行こうか。この『穴』の監視を怠らなければ大丈夫だろうね、すみませんが連絡の方おねがいします』


 その場に来ていた鉱石人の衛兵二人がコクリと頷き砦の方に戻っていく。俺たちは浄化作業をしている地点へと移動する事となった。


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