第83話 遺跡調査 新人探索者狩り
『まぁ、あちらからも探知で分かるわな……』
『どうしましょうか?』
兎人族のロコブリーがやれやれといった表情をし、狐人族のミィナスがちょっと不安げな表情で俺の方を見る。
『キョウカ達が来てからにしたいけど……まぁ、チサトがいれば大丈夫か』
『え、え? あたし? 責任重大????』
『入り口にチサトの盾出せば外にいる奴らは手を出せないんだけど……』
『だけど?』
『入り口を燃やされると……煙と「一酸化炭素」が……この世界だと、息ができなくなる空気が発生する、で伝わるかな?』
『ああ、火事の時に死んじゃうやつか……うーん……頑張る!』
チサトがやる気になってくれる。そんな俺達のやり取りを見て兎人族のロコブリーが心配そうに俺を見る。
『そんなんで大丈夫か?』
『大丈夫……だと思います。ちょっと耐えてれば、キョウカ達が駆けつけてくれるので大丈夫でしょう』
『ああ、あのねーちゃん強いんだってね。巨人族の彼も強いんだろ?』
『ええ、とても強いわよ。でも外を囲っている人たちだけなら私達だけでも行けると思うわ』
なんかみんながとても頼もしいな……しかし、妖魔を倒すくらいの勢いでみんな話しをしているけど大丈夫かな? 人間だよね、相手?
『あ~ ちょっとその前に……人間を殺すのには抵抗は……?』
『僕はもう無いです。決めましたから』
『……あ……あたしはちょっと……ダメかも……』
俺の質問にシュウトくんとチサトが答えるが、ロコブリーがその返答を聞いて意外な顔をする。
『賊に情けはかけるなって、先生に言われてるだろ? でもだめか?』
『こればっかりは……そのうち慣れるのかな……』
不安そうな顔でチサトが俺の顔を見る。俺も少しは抵抗があるが……生き抜くためには仕方がないと思うし、そもそも相手は手加減なんてせずに殺しに来るだろう。魔力がある世界なので、完全に戦闘不能にしないと回復されたり、残りの魔力を全力で放たれてしまったりすると反対にやられてしまう可能性があるからな……そう考えると恐ろしい世界だ……
『私も容赦する気は無いわ。これが噂に聞く新人探索者狩りね……』
『そうなんですね、それは聞いたことがなかったです。わたしも大丈夫ですよ。容赦無く行きます! チサトの分も殺りますよ!』
『ああ、もちろん僕もだ。一応ベテランなんでね……軽装のやつを狙わせてもらうよ。得意だから』
異世界人の3人が積極的だな……こちらはそれが当たり前の世界、価値観だからだろうか……さてと、そうするとやり方を考えねばな……
『んじゃ、チサトは盾で自分を守りつつ、怪我した人が出たら盾をキープして回復。後はみんな適当に打って出る……かな? 奥の5人が出て来たら、合図するからみんなチサトのもとに集まる……で行こうか』
『おい、それじゃチサトの魔力持たないんじゃないのか? 盾の魔法なんてエライ魔力使うだろう?』
『チサトに関しては大丈夫よ。今の所は魔力切れをしたことがないの。彼女』
『まじかよ……そんなの聞いたことないよ』
ロコブリーが素で驚いている。俺も魔力切れする常習者だから気持ちはすごい分かる。使い放題だったらどんだけ高威力の槍を投げられるんだろうか……
『後は、いきなり攻撃してこなかったら、ちょっと会話をして時間稼ぎかな』
『わかりました。ちょっと緊張しますね』
『ふふっ。私も少しは緊張しているわよ?』
『普通はするから安心しな』
異世界組が頼もしい……チサトの顔が少し青ざめている気がするのでちょっと不安だが……そんなことを考えていると外から賊から催促があった。
『おお~い。話はまとまったかぁ? 10数える。数える前に出てこいよ! でてこないと爆破石と火魔法撃つからな! ひとぉーつ』
『みんな、ちょっとだけ耳をふさいでね。大声だすから』
『分かりました』
『? ……ああ、なるほどね』
俺は声帯に魔力を込めて大声で、遺跡の中にいる4人にも聞こえるように返事をする。
『わかった!! すぐに出ていく! ただし、貴重で壊れやすい宝もある! 爆破石は使わないでくれ!!!』
『おおっ!』
『やっぱりあったか』
『うっせえな……バカデケェ声だ……』
賊達が俺の返答にざわつく。いきなり攻撃はしてこなさそうだな……俺はゆっくりと盾を構えて入り口から出て姿を晒す。一応魔力を軽く込めて魔法の盾を直ぐに出して逃げられるようにはしておく。イザとなったらチサトの盾魔法と回復魔法があるから気が楽だ。
外に出ると、弓矢を構えた者、杖のようなものを構えた者、槍を構えた者、剣を構えた者……と人族のみ構成だった。以前も戦ったことのある賊みたいだな……中央には一回り身体の大きいいかつい髭面の戦士風の男がいた。ザ・山賊……って感じだな。
『ん~ あと4人だろ? 出てこい!』
ミィナスとヴィナルカ、ロコブリーが出てきた後、チサトが不安そうに出てくる。頑張れ……チサト。
『……おい! お宝はどうした?』
『……ほら、これだ。どうだ?』
俺はこの遺跡で見つけた砂時計のようなガラス製の魔石入りの置物を手に取る。これは見るからに壊れそうなんだよね……
『ああん? ……それっぽっちか?』
『お頭。あれ良い値が付きますよ……金貨50枚以上はしたような』
『チッ……面倒だな』
インテリっぽい風体の男が頭領に上手いこと話しかけてくれた。これでかなりの時間を稼げそうだ。値段がわからなかったけどこれ一個で車が買えるのか……
それからも頭領とインテリっぽい男が話続ける。これからどうするか的な感じだ。まわりを取り囲んでいる賊達も俺たちのことを値踏みしているようだった。楽勝と思われているんだろうな……
『お前ら、他にも隠し持ってるだろう? 出せ。出したらその横から武器を捨てて全力で逃げるのを許可するぞ……』
『お頭! そこの耳長族と狐人族は高く売れるぞ! かなり別嬪だ!』
『そうだ! かなりの上物だぞ!』
『あ~ それもそうだなぁ……全部欲しいなぁ……』
交渉しながらも賊たちの目がいやらしくなって行く。やばい、なぜか殺意が湧いてきてしまう……ミィナスも身を若干固くしている……あんな目にあっていたんだ……当たり前か……
そんな内心は怒りで煮えたぎっている俺の手をヴィナルカが後ろから触り思念伝達を使って話しかけてくる。
(タクマ、後ろの入り口の影に4人が戦闘準備を終えて待っているわ。いつでも突撃できそうよ)
(わかった、ありがとう)
(ありがとう。怒ってくれて……)
ああ、俺の思念読み取っちゃうんだったね。さてとやりますか。
『みんな。目をつぶれ!』
『えっ?』
『は?』
賊たちの間抜けな声を尻目に、俺は腰にぶら下がっている魔石ランタンに光の精霊と魔力を集中させ一気に光らせる。要するに、フラッシュグレネードの光魔法版だ。ちなみにコレをやると魔力の込め直しになるので緊急事態用らしい……突然の眩しい光に怯んだ賊相手に向かってチサトと俺以外が一気に突っ込んでいく。
一方的な蹂躙だった。奥に隠れていた4人に気がついている賊は少なかったようで全く対応できていない。真正面にいるに関わらず完全な不意打ちとなり、兎人族が魔法使いや弓使いを切り裂いていき、キョウカとエルドが相手の重戦士達を撲殺、もしくは吹き飛ばし、ヴィナルカが呆然とした賊達を片っ端から射抜いていく。勘のいい賊達は逃げ出そうとしたり、迎撃をしようと魔力をまとったりするが熟練した探索者レベルでは無い様で、ミィナスとシュウトくんが上手に鎧の隙間を槍で賊の胴や心臓付近を突いて駆け抜けていく。
俺も風の槍を迎撃しようと構えた賊たちにちまちまと当てて気をそらさせる。気をそらさせられた瞬間に仲間たちが突っ込んで狩っていく……対人なのに妖魔狩りの様に思えてくる……
そんな中でも頭領とインテリなどの幹部っぽい連中がなんとか持ち直そうとしていたが、キョウカの無慈悲な一撃とエルドの盾の一撃で文字通り吹き飛んでいく……ちょっと可愛そうだが……まぁ、こちらを襲ったんだから自業自得だな……魔力感知をしても賊の魔力が感じられない……手前にいた賊は倒せたな。
あれ? おかしいな……奥の5人は来ないぞ? ここにいる仲間全員が、奥の人間の存在に気がついているので、そこにいた30人近くの賊との戦闘が終わってもそちらに意識を向けたまま緊張状態を解いていなかった。
キョウカ達の目がかなりマジだ……魔力感知を覚えたら分かるが、一人だけ魔力がおかしいのだ。強い魔力に無理やり蓋をしているような変な印象だった。
やがてしびれを切らしたのか5人の内のおかしな魔力を持った人がこちらにゆっくりと近づいて来る。
『はぁ、たしか前もこんな感じだったな……以前は叔父さんが交渉に出てくれたんだったな……』
茂みの影からは以前も遭遇した共和国の見覚えのある黒剣使いが姿を表した。
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