第82話 遺跡調査 脱出
ドコン!ドカッ!
………………ドォン!! ドォン!!
遠くの上の階層で打撃音がした後、かなり落下した階下の方で落下音が聞こえる。キョウカとエルドが死人たちを弾き飛ばしてフェンスの下に吹き飛ばしているんだろうな……たまに魔力感知の波動がしていたので俺たちの位置はなんとなくわかっているはずだ。
『あの……ヴィナルカ……そろそろ……』
『……分かったわ……落ち着いたわ……』
何事もなかったかのように澄ました顔でヴィナルカが俺から離れる。なんかちょっと残念に思ってしまう俺は浮気性なのだろうか?
『上の方も調子よく降りてきてくれているみたいだから合流をするか』
『そうね。扉の前に張り付いていた死人はいなくなっているみたいね。上に登っては……ないわね。階段を使う知識が無い?音のする近くのフェンス沿いに沢山いるわね……思考力が落ちているのかしら?』
俺はかなり疑問に思った。ヴィナルカの探知って俺らより精度が高すぎじゃない?俺も確認のため魔力探知を飛ばしてみるが、そこまでの精度では感じられなかった。キョウカやエルドたちの位置はしっかりと分かるが、死人の感知は……いる場所すら定かではなかった。
『ヴィナルカはどうやって感知をしているんだ? 死人の位置が俺にはわからない……』
『あ、そうだったわね……これはチサトと私しかこのチームでは出来ないかもしれないわね』
『神の力? みたいなやつ?』
『そうね、そんな感じかしらね……』
ってことは回復魔法を薄く伸ばして……魔力感知代わりにしているのだろうか? 俺は何時も使っている回復魔法を薄く伸ばす感じで探知代わりに使ってみた……
『え? なにを??』
『あ、ちょっと回復魔法で探知を……あれ、なんか変な反応が返ってくるな……』
『変なことを思いつくのね……』
俺はそこら中から変な反応が返ってくるのに驚いたが、一番近い神像の上辺りを見てみると……あれって『穴』じゃ? 俺はあわててヴィナルカに話しかける。
『あれ! 見て!』
『え? なんてこと……『穴』が開いたままだったのね……いや、違うわ……大きくなっている……今開いたばかりかも……死人と妖魔がこの部屋にいないのはおかしいわ』
『……逃げよう!』
『分かったわ!』
ヴィナルカが急いで向かいのドアに向かい、先程と同じ様に扉を開けようとするが開かない……ああ、なんて事だ……俺は左右をキョロキョロと見渡し他に手段が無いか確認するが……ドアどころか窓もないなこの部屋……こじ開けようにも扉が先進過ぎるデザインのせいで指を入れる隙間がない……扉を破壊するしか無いか……
『破壊しよう!』
『出来るかしら……頑丈なのよね、この世代の建物は……』
『ちょっとだけやってみる!』
俺は愛用の魔鉱石の槍をドアの隙間に魔力を込めて突き刺す。ダメか……刺さるがすぐにこじ開けられないな……エルド製砲丸使うか……
『あっ、妖魔が出てきた! 小型ね!』
そう言うと出鼻をくじく様にヴィナルカが妖魔の心臓付近を射抜き魔石に返していく……回収出来ないとダメだったような気がするが今はそんな時ではないな。
俺はエルド製砲丸に魔力を結構込めて……ドアに思いっきり投げつける。
ドォン!!!
壁とか粉砕するレベルで投げたつもりだったが、扉にめり込み扉がひしゃげるくらいになっただけだった。でも隙間は人が通れるくらいには開いた。
『ヴィナルカ! 一応開いた、行こう!』
『わかったわ!』
開いた隙間から俺とヴィナルカが抜け出し、砲丸を回収した後に再び吹き抜けのフロアに出てきた。 目的の方向にあった階段を駆け上がっていく。ここからは敵にバレても構わない感じで魔力反応の強い仲間たちの方に走っていく。もちろん魔力強化で飛ぶように跳ねていく……魔力込めていいなら階段は楽だな。
階段を駆け上がって仲間と合流しようと前方を見たら、通路に新たに出現したっぽい『穴』から妖魔が漏れ出て戦闘になっていた。大型クラスも出ているな……仲間も落ち着いて戦闘をしている感じだ。
『みんな無事だな……健康そうな妖魔だね』
『そうね、干物みたいな妖魔ばかり見ていたからそう思うわね……行くわよ!』
ヴィナルカが魔獣製の矢を連射し、中型以下の妖魔を消し去っていく……俺はそのまま『穴』の脇を駆け抜けて、エルドと力比べになっている大型妖魔の首を槍で貫く。
『タクマ! ヴィナルカ!』
『おかえり!』
『話は後です! すぐに逃げましょう! 『穴』が大量発生中です!』
『わかった! すぐに行こう!』
『流星の狩人』は特に怪我もなく大丈夫なようだった。あれ?
兎人族の二人は? 魔力感知をすると隣の部屋にいるが……あ、脇の扉から飛び出てきた。何してたんだ?
『ああ、良かった、行きますよ!』
ミィナスが兎人族の二人を見ると安心した感じで二人を誘導する。ミィナスを先頭に俺たちは降りてきた階段を魔力全開気味で駆け上がり、襲いかかってくる死人と妖魔を打ち払いながら強引に進んでいく。吹き抜けの中空にも『穴』ができていてそこから妖魔が這い出て……来たと思ったら落ちていった……あれ?……この高さだと死なない? 妖魔も落下したらぐちゃぐちゃだよな?
案の定凄まじい音と叫び声が最下層の方から聞こえる。『穴』の出現位置はそこまで考えられていない感じだな……誰かが意図的にやっている感じもするが出現位置はアバウトなのか?
『なんか大丈夫そうですね。フロアに出現……するとしても通路の面積が狭いから『穴』が上手に出現していませんね』
『ほんとに……発生条件はあるけど、位置は指定できていない感じだね』
『あとでここの遺跡に調べに来ると『穴』発生する原因がわかるかもしれませんね』
この施設は通路がそれなりに狭く、吹き抜けの地形のおかげで妖魔とそこまで出会うこともなく、出会ったとしてもエルドとキョウカが吹き抜けに吹き飛ばし……俺たちはそこまで苦労することもなく、部屋やら階段やら色々迂回しながら元いた場所まで駆け戻ることが出来た。あちらのチームも苦労しながら降りてきてくれていたんだな。ミィナスが完全にルートを間違えること無く誘導するのも凄いな……女子って地図把握能力が低いんじゃなかったのか? あれは地球だけの話なのか?
『全員いますね? 閉めますよ!』
『大丈夫よ! みんないるわ!』
シュウトくんが最初に探索していた部屋に入り扉を閉める。やっと逃げ切った……でもそこまで疲れていないな……色々とラッキーが重なったな。
『この扉は……妖魔じゃ開けられないよな?』
『魔力を込めて壊そうとしてもなかなか壊れなかったから大丈夫だろう』
『大型は通路を登れない感じでしたから、安全でしょう……なんか『穴』の欠陥を見た気がします』
『それにしても不思議だったわね、チサトがドアに魔力を流すと開くなんて』
『偶然ね! 魔石が「カードキー」だったら開くと思ったから魔力を流してみたらうまくいくなんてね』
『千里の直感は馬鹿にならないからなぁ……良く当たるし』
『なによ! 当てずっぽうって何時も叱るくせに!』
『それはテストの時にやるからでしょ……』
全員が逃げ切った安心感からか一気に気が緩む。俺も思わず地面に座り込んでしまう。ヴィナルカも疲れていたようで俺の脇に座る。そこにミィナスが俺の近くに駆け寄り俺の状態を心配そうに確認してくる。
『大丈夫ですね……怪我の後もない……スンスン……ちょっとヴィナルカの匂いが強いですが……』
『えっ? あ、落ちる時に抱きかかえてたからかな?』
『そ、そうね、色々と助かったわ!』
『……ん? なにかありました?』
『あ……特に、うん、無いよ。あ、シュウトくん、助かったよ。例の浮遊魔法が上手く行った』
俺は変な空気になりそうだったので慌てて話の方向を変える。
『良かったですよ……いきなり飛び出すと思いませんでした。無事で良かったです。上から見てたら干からびた妖魔が群がって見えたのでハラハラしましたよ』
『え? そんなに?』
『そうよ、ちょうど魔石ランプに照らされるように妖魔が「蟻」のようにわらわらと。ちょっと気持ち悪かったわ!』
全員の表情が明るくてよかった。迷惑かけちゃったからな……それにしても……みんな背嚢がものすごくいっぱいのような気がするんだが? 俺の視線に気がついた兎人族が反応をする。
『あ、タクマ、取り分は気にするな! 山分けって話になってるからな!』
『タクマ達が妖魔を引きつけてくれたので俺たちはかなり楽にお宝探索出来たよ』
『武器庫らしきものもあったしなぁ~』
『ほんと、未調査の遺跡は金になるって話は本当だったね。兄さん』
『ああ、本当に助かった。借金が無くなるな』
兎人族の兄弟の顔がホクホクだ……どれだけの収入になるんだろうか……
『そっちは、その、なんだ? 順調に探索出来たって感じなのか?』
『ああ、タクマ違う。探索、目的じゃなかった。最初戦闘なった。思ったより妖魔こないからおかしい思ったら、階段壊れて進めなかった。チサトが近くにあった扉の装置に魔力流す、開くのに気がついた。壊れている階段が多くて避けていったら偶然色々見つけた』
『ああ、そうだよ。別にお前らの事心配してなかったわけではない……ついでだ。ついでなんだ』
『兄さん、アイツらなら大丈夫だろ? って言って漁ってたじゃないか』
『言ってたな……』
『言ってましたね……』
『うるさいな……』
兎人族二人……兄の方が強欲だったのか……真面目っぽい雰囲気だったのに。
『後は昔ここでも戦闘があったみたいで……人骨が結構転がっていたよ。武器庫周りにも骨があったから……ウチが思うに、突然『穴』が出た対応をしてたら全滅した……って感じみたいだね』
『僕もそう思いました。脱出口は上層階に4つしか地図からは読み取れなかったので……ここは裏口だったみたいですね。正面玄関はこちらじゃない方みたいです』
『窓が天井に大きな穴があるだけで……天窓なのかしらね?』
『ここは「シェルター」……この街だけで暮らしていく感じの施設だったみたいですね、階によっては「プラント」……野菜などを育てる施設っぽいのも有りましたし……』
『ウチはそこまで分からなかったよ……シュウトたちの世界はこんな感じだったのか?』
『ああ……すいません……これもよく僕たちの世界の物語である話なんです……建物の構造は似ているのでそうなんじゃないかと……』
『なるほど……物語が進んでいる国だったのか……アルティアが喜びそうだな』
『え? 何でアルティア?』
それまで会話に参加していなかったヴィナルカが会話に参加をする。
『アルティアは、その……恋物語が大好きなの……その、彼女は沢山持っていて、私も借りていて……ええ、文字の勉強のためよ。もちろん。それで、その。面白くって沢山借りてたの』
『ああ、なるほど……「文学女子」だったのか』
それでここの神殿にいた時のヴィナルカの行動と様子と思考がおかしかったのか……恋物語なんて知らなかった方が幸せ的な? ヴィナルカがもじもじしている感じで可愛らしいな……目が合うと彼女の目が臥せってしまう……
『アルティアは「恋愛小説」好きだったのね!「少女漫画」的な感じかしら?』
『え? そうなの? 「体育会系」じゃないのか?……まぁ、本の新刊を買えなくて泣いてたっていってたし……この世界だとどう言う扱いなんだろう? ただの本好きって扱いじゃないのかなぁ?』
それからも話が脱線しながらもお互いの報告をすませていく。お宝を得たとあって全員がかなり饒舌になっていた。俺たちもおそらくこれで試験が終わりになるだろうと言うこともあって浮かれた気分になっていた。後は何事もなく街に帰るだけだな。
遺跡を出る時に、念の為に事務所の机やら出入り口を塞ぎバリケードを作っておいた。上層の古代遺跡と近代的な古い遺跡……の間には石棺の蓋でも置いておこうと言う話になり、エルドとキョウカ、シュウトくん、レスターの4人が残って妖魔達が漏れ出ないように作業をすることになった。残ったメンバーは一旦外に出て今夜の野営の準備をすることになった。
『いるな……』
『いますね……』
先行していた兎人族のロコブリーとミィナスが同時につぶやく……もちろん俺とチサトは気がついていないので何がいるかわからない。
『あなた達すごいわね……あら? だいぶ沢山のお客さんね……試験官ではなかったのね……』
ヴィナルカが魔力感知をしたようだったが、試験官? 何のことだろう? よくわからないことを言っているな。俺も試しに魔力感知をしてみる……
『ヴィナルカ、どういうこと? あたしわからないんだけど?』
『野営している時に遠くに1人ほどウロウロこちらを探っている人がいたの。てっきり試験官がもうひとりいてこちらを見ているかと思ったのだけれども……』
『あ~それは無いな。今回の1班2班の試験官は先生が『まとも』なやつを選んだらしいからな。監視役はいないよ。まぁ、他の班の試験はどうやってるかは知らんけどねぇ』
ヴィナルカの説明にロコブリーが反応する。ちなみに俺は全く気がついていなかった……さすがヴィナルカ。俺も続けて感知をしてみると周りには……30人くらいの人間型の何かがこの遺跡の入口を囲っているようだった。あれ?その向こうにも5人いるな……合計35人か……奥の方が魔力反応が強い気がする……こちらが頭領か?
『おーい、魔法と爆発石を投げ込まれたくなかったら出てこぉーい!』
『いるのはわかってるぞ! そこの5人だ!』
おそらく賊の頭領らしき人物?達がかなりの大声でこちらに話しかけてくる。爆発石……って結構高価じゃなかったっけか? さてどうするか?
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