第80話 遺跡調査 当たりの遺跡


『レスター、ここってハズレなの?』


『……すまない、ここはアタリだな、しかもかなりの……ここまでの資料は見たことがあまりないな。盗掘もされていない……帰ったら騒ぎになるな……』

『兄さん……だから魔術師組合に……』

『ああ、もう、悪かったよ! ここまでお宝あると思わなかったんだよ!』


 チサトの問いかけに兎人族の兄弟が口喧嘩を始める。まぁ、お宝を目の前に素通りしてはさすがに兄といえど怒るか……


『この間取りだと……あ、やっぱりこっちに扉がありますね』


『あ、シュウト! 開けてはダメよ!』

「シュウトくんストップ!」

『シュウト……慎重に行動しないと試験に落ちますよ!』


『あ……すいません。大丈夫です。次は相談しながら慎重にやります……』


 全員からの総ツッコミがシュウトくんに入る。ミィナスにまで突っ込まれるとは……


 俺たちが探索しているとシュウトくんが新たな扉を発見した様で周囲を調べ始めていた。文字が全然読めないので何がかいてあるかは分からなかったが、資料や図面などが大量にあったが金目の物はないようだった。紙であろう資料も200年以上は経った年代モノのはずだが、別に劣化しているわけでもなく普通にめくれる状態だった。和紙なのかなこれ? 暗い風通しのない部屋だったから保存状態がよかったのか? 謎だ。

 

 使い方はわからないが、計算機のようなものや、レトロな感じのテレビの様なものがあった。キーボードみたいなものもある……パソコンなのか? これ? ブラウン管か?


『レスター、こんな感じの時はどうするんだ?』


『……すまない……こんなに自然な感じ……盗掘されていない状態のものは初めて見る。たしか……その場合には保存しておけ……と言われた記憶があるな』

『ああ、なるほど……みんな、物色はするなよ。この場所はこのままにして探索者組合に報告するらしい』

『え~ 兄さん、マジ?』

『だなぁ……マジだ。先生に半殺しにされるぞ?』

『それも嫌だなぁ』


 キョウカ、ヴィナルカ、エルド、ミィナスの4人は文字が読めるみたいで資料を読みふけっているが、一応こちらを見て分かったの合図はしてくれる。調査している遺跡で古代の遺産が読める……なんて考古学的には凄い楽しそうだな。後で西方共通語を教えてほしいけど……そんな時間はないか?


『ねぇ、ねぇ、これ、お手洗いだ。「水洗式」みたい……随分「近代的」ね』

『あ、ほんとだ。「ロストテクノロジー」ですね、完璧に……』

『なにかしらの理由があって滅びたんだろうね……言葉も違うみたいだし』


『え、これで手を洗うのか?』

『兄さん、それ、トイレじゃない? 扉の前にあるボタンでライトが付くんだな……昔教習で教えてもらったような気もしてきた』

『俺たちは生きている遺跡なんて見たこと無いものな……』


 兎人族の会話を聞いていると、こちらの世界の常識の様なものが推察できて面白い。魔石は電池みたいな役割をしているが、そこまで潤沢になく、都市ではそこまで普及していないのがわかる。やはり遺跡があるくらいの時期がすごい状態だったんだろうな……


『事務所っぽいですね。武器庫とかあったら……役に立ちそうですね』

『地図……「見取り図」があればいいのにね』

『部屋の地図って言いかえれば伝わるかな?』


『兄さん、俺は部屋の地図……探してみるよ』

『任せた。俺はあんたらのやり方覚えさせてもらうわ……勉強になる』


 それから西方共通語を使えない5人で部屋を色々と散策する。なんとなく分かったのはここは普通の事務所って感じの部屋だった。6人勤務なのか? 机と椅子などの配置を見るに。見取り図は配電盤もどきの脇にあったのだが、建物全体ではなく、このフロアのみの見取り図だったがそれだけでもだいぶ探索が楽になるイメージだな。俺たちが調べている間もレスターは真面目にメモを取っていた。鉛筆みたいのもあるんだね……帰ったら雑貨屋で探さないとな。


「部屋が12部屋……円状って、変わったレイアウトだなぁ……真ん中空洞なのかこれ?」

「ねぇねぇ、これ、階段かしら? エレベーターみたいなのもあるわね?」

「エレベーターっぽいね……ショッピングモールよりは……狭いか? ここはどの部屋かわからないね……」

「トイレの位置がここだから……この部屋か、この部屋ね」

「あ、ほんとだ。せめて南北……あ、方角の決まりがわからない……」

「ちょっと情報なさすぎねぇ……」


 兎人族のレスターが俺の顔を見て通訳してよと言った表情をしていたので、二人の会話をかいつまんで訳してあげる。


『なるほど……この図面にはそういう意味があるのだな……地図……があるにはあるが……意味が違うとわけがわからないな。「エレベーター」と言うのは俺は知らないな……』


 レスターが納得した顔で返事をしてくれる。彼らと話をしていても地図の書き方は現在の異世界とだいぶ違うようだな。

 

 この図から読み取れる事は、先程シュウトくんが開けようとしていた扉を開けると違うフロアがあって、他に11部屋あり、エレベーターもあり……でてんこ盛りの遺跡になっているようだった。あの扉を開けると冒険が始まる……んだろうなぁ……



『さて、どうしようか?』


 俺は誰に話しかけるでも無くボソッと呟く。選択肢が多すぎるんだよね、今。安全をとってここで引き返すのも良いんだけど、新たな発見も……ちょっとウズウズしてしまうな。


『……なぁ、一応この先をちょっとだけ……調査すると、試験は終了になると思うんだがどうする?』

『兄さん……それいいの? って良いのか? 次の試験で使う予定だった遺跡はしょぼ目だけど未調査扱いだから……ここで調査すれば合格できるね……俺たちはいいけど、どうなの? ちょっと危険じゃない?』

『……余計なことを……ちょっと危険かもしれないが、見返りすごそうだからな……それに保存状態のここまで良い遺跡は初めてだからな……』


 兎人族の兄弟が俺をじっと見てくる。完全に期待の眼差しだ。




『ちょっと考えさせてくれ。あ、みんなどうだった?』


 俺たちの会話に気がついてか、いつの間にか全員がこちらの動向を気にしてか全員が集まっていた。


『ウチは探索してみたいな……ワクワクする』

『俺もしてみたい。資料を読む限りはここは普通の街? だったみたいだ』

『わたしはタクマに任せます』

『私も探索したいわ……だけど、危険になったら、宝を捨ててもすぐに逃げるのを全員が選択することが条件ね』


『あたしもどっちでも~』

『時短できそうなら……探索もしたいですし……うーん』



 みんながみんなワクワク感を消せてないんだけど……俺もしてるしな……とりあえず安全に、すぐ逃げられるようにしながらだな。


『じゃぁ、行こうか、ただし安全を確保しながら慎重にだ。危なくなったらすぐに逃げる感じで』


 全員から笑みが溢れる。大騒ぎしないあたりがブリィスラ先生に鍛えられている証拠だな。



 俺たちは危なくなったらすぐに逃げられるように、途中の扉につっかえ棒などをしてすぐに外まで走り抜けられる様に邪魔なものを片付ける。


『さて行きましょうか……』


 シュウトくんが若干緊張しながら扉のスイッチを押すと……外は真っ暗だった。ライトの明かりは今までいた部屋だけを照らしているようで、通路までは行き届いていないようだった。地図にあった円状の真ん中部分は吹き抜けになっているようで数階の階層構造になっているのがすぐに分かるくらいだった。結構広いな……落ちたら先が見えないな……ちょっと怖い。


『残念……灯りは無いか……それじゃ探索開始ですね』

『任せろ。俺が先頭に行く』


 兎人族のロコブリーが先頭になって索敵やトラップを見てくれる。試験になっていない気もするが、いいのだろうか? 


 俺たちは探索前に打ち合わせしていたとおり、階段を目指す。部屋などは後で探索するとして、このフロアが何回層あるか知りたかったのと、見取り図だけを持ち替える。書き写して帰ればそれだけで大金星……との事だったのでそちらを優先したのだった。


『おかしいな……変な魔力反応がある……』

『音も少し聞こえますね……うめき声ですかね?』

『ああ……変だな……』


 獣人の3人が聞き耳をたてて立ち止まる……魔力じゃない変な力を感じるな……なんだコレ……結構いる感じだが……


「あ、あの……めっちゃいるんですけど……たくさんいるんですけど???」


 チサトのみが変な反応をしている。俺たちは思わず顔を見合わせる。ちょっと集中して魔力感知をしてみるが……特には感じないが変な感覚は返ってくるな?


『ね、ねぇ、みんなわからないの……囲まれてますよ~ あの~ あたしだけの気のせい?』

『チサト、どっちの方向に何人いる? 教えてくれ』


 俺はチサトに質問してみる。仲間を見ても気がついているのは……ん?ヴィナルカも気がついているか?


『まわりに……10人……もっと多いくらい……下の方にもいるように感じるわ……あ、前からくる……』


 全員で前方に警戒し、ランタンのライトを前に向けてみると……妖魔の様なお面をかぶった干からびた人型の何かがよたよたとこちらに近づいてきていた。気持ち悪い……まるでゾンビじゃないか! 全員がなんとなくジリジリとまとまってくる。ヤバいな、後ろ吹き抜けか……突破して逃げるか……そんなことを思っていたら……


ドスン!


 上から干からびた妖魔もどきが降ってきた。


『ウォおおお!』

『ぎゃぁああああ!!』



 シュウトくんが絶叫し、チサトが女性と思えない声量で驚き飛び退く……真後ろにいたヴィナルカの体にあたりヴィナルカがうしろの手すりにぶつかり……手すりがそのまま壊れて抜け……て、ってえ? そのままヴィナルカが吹き抜けに落ちていく……俺は迷わず体に魔力をまとい意識加速を使った上で唖然とした表情のヴィナルカに飛びつく。


『タクマ!ヴィナルカ!』


 俺とヴィナルカにが落ちていくのに気がついたミィナスが絶叫をする。それを聞きながら俺たちは下へしたへと落ちていく……ヤバいなこれは……


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