第63話 探索者試験当日 前半



 仲間全員で狩りに行く出で立ちで探索者組合に向かっていると、隣を鬼人族の集団が歩いていた。


【えっ?】

【あ、あれ?】


【げっ……あなたたち】


 向こうの鬼人族達もキョウカに気がついて驚いていたが、キョウカがものすごい勢いで鬼人族のチームであろう集団に小走りで移動してリーダーらしき人を腕を抱えて引っ張っていく。残された鬼人族のチームメイトも戸惑っているようだった。

 何語がまったく分からなかった……異世界全部が共通語……だったら、キョウカとエルド、ヴィナルカとは仲間になっていなかったんだっけか……

 

 そして、しばらくしてから何食わぬ顔をしてキョウカが戻ってくる。


『ねぇ? キョウカ、突然どうしたの?』

『あ、ああ、……少しお話してきただけだ』


 鬼人族の集団を見ると、キョウカに連れられて行った人物を中心になんとも言えない顔をして色々話をしている。結婚させられそうになって逃げてきた……って言っていたからそのあたりの話かな?



『俺、少し、嫌な予感がしてきた……』

『エルドも会いたくない人いるのか?』

『うん。いる……』

『そうか……』




 ちょっとした不安を抱えながら俺たちはいつも訓練をしている訓練場に足を運んだ。そこが集合場所になっているはずだ。訓練場入り口に列ができていて色々な言葉で案内表の様なものや言語が飛び交っている。かなりの人数がすでに並んでおり俺たちは列の一番うしろに並んだ。


『おはよう。ランパルト。久しぶりね!』

『おお、チサト! 久しぶりだな。元気にしていた様だな。今日は頑張れよ』

『もちろん。 ランパルトはここでなにしてるの?』

『ああ、俺は……試験官ってやつだな。今は暴れるやついないか見張ってる。それにしても言葉がうまくなったな』

『ありがとう~ 今日はよろしくね』


 ランパルトや城壁修理に来ていた面々がチラホラとそこら中に立ってあたりを警戒していた。彼らの所属は探索者組合だったのか……てっきり建築関係の仕事の人かと思っていた。




 それから俺たちは受付と話をする。いつも見ない人だな。色々な所から人員が駆り出されているんだろう。


『それではこちらの内容を読んでから参加の記述をお願いします』

『わかりました』

『あら? そのお嬢さんも受けるのかしら?』

『はいっ! よろしくおねがいします』


 探索者試験には年齢制限と言うのは無いらしく、実力さえあれば大丈夫ということで仲間と話し合った上、彼女も一緒に受けることにした。先生とも話をしたがあなた達が私の教えたことを教えれば余裕でしょう……と期待の眼差しを彼女に向けていた。


 それから俺たちは筆記用に用意されたテーブルでそれぞれの参加用紙のプロフィールを埋めていく。


『ねぇ、タクマ。この所属チームってどうするの?』

『そうだったわね。決めてあるんでしょ?』


『……え?』


『タクマさん……厨二っぽくなかったらいい……って決めたっきり考えてなかったとかですか?』


『……え?』


 いつのまに俺が決める事になってたのか? なんでだ? 皆の目がちょっとじっとりしているのを感じ始めたところで俺に話しかけてくる探索者二人組がいた。この間の『穴』の時に会った顔だな……


『おう、『流星の槍使い』達じゃないか。あんたらがこれから試験受けるのか。 てっきりとっくに探索者だと思ってたぞ』

『あれだけすごい魔法の槍連発してたのにぃ、まだだったのね……意外~」

『えっと、なんで『流星?』なの?』

『お? 知らぬは当人ばかりってやつだな』

『物凄い魔法の槍を流星群のように撃ってたからそう言われてるみたいよ』

『な、なるほど……ありがとう』

『んじゃ俺たちは持ち場にいくから、試験がんばれよ。ま、おまえらなら余裕だろうけどな』

『そうね。うっかりミスしちゃダメよ』


 そう言い残すと探索者二人組は人のごった返す試験場の方に消えていった。


『じゃぁ、『流星の槍使い』で……』

『……私は槍使いではないわ……』

『俺も……』

『ウチも……』


『……『流星の狩人』で……』

『それいいですね! なんかかっこいい!』

『う~ん。 まぁいいかなぁ~』

『わたしは良いと思いますよ!』


 人に考えさせておいて勝手なことを言って……とも思うがそんな事を言っている暇はないな……俺が参加用紙に書くのを見た後全員がチーム名の欄に記述をした。ああ、なんか知らないけどチーム名がいきなり決まってしまった……まぁいいのか……


『はい……それでは『流星の狩人』様、これからはしばらく個人での試験となりますのであちらの方に移動をお願いします』




 集合場所には既にかなりの人が集まっていた、この世界に来てから一箇所にこれだけの人が集まっているのを見たことが無いな……4~500人はいるのだろうか? いろいろな種族がいるからよく把握しきれない。


『それでは今から探索者適性試験を行う。初週はチーム毎ではなく個人になるので注意してくれ! それでは係の者が番号札を配るから首からかけておいてくれ。しばらくしたら案内をするからそれに従って試験を受けてくれ。今回は人数が多いから半分は騎士団訓練所で試験を受けてもらうからしっかりと話を聞いてくれよ!』



 俺たちは案内がされるがままバラバラに探索者組合の試験会場や教室に用意されたテーブルと椅子に座って筆記試験を受ける。この世界のインク壺につけるインクペンにも割と慣れてきたな……試験の問題は話し言葉で書かれているので思った以上にできる感じだ。そう言えば以前契約書などの正規文書を見せてもらったが、予想通りにほとんど言葉がわからなかった。公式文書になると難しい単語の羅列をするのは何処の国でも一緒の様だった。

 周りをこっそりと観察すると、結構な人が悩みながら問題を解いているようだった。あまり文化水準は高くないのだろうか?


『それでは、筆記試験終了。ペンを置いて紙を裏返してそのままに。名前と番号を確認してくれ。書いていないと失格だぞ。名前の確認はしろよ? 毎回書き漏らしがあるからな? あ、インクの蓋は閉めてくれよ!』


 小一時間ほどすると試験官からの合図があった。ほぼ全員が名前と番号を見直していた……この辺は日本人……地球人の方がテストを受ける機会が多いから楽だな。


『では5の鐘に訓練場に集合。休むなり、食事をするなり好きにすると良い。5の鐘とは時計の針が一番上を向いたときだ。間違えそうな人間は訓練場にいたほうが良いぞ』



 試験が終ると同時に自然に仲間と合流する。


『……ウチ、すごく出来た……』

『俺も、試験簡単だった』

『それは良かった。確かに先生に教えてもらったやつより簡単だったな……』


 問題のありそうな二人が簡単だった……と言っているから仲間全員大丈夫だろう。試験問題の用紙に名前さえちゃんと書いていれば……




 休憩しようと探索者組合の建物を出ると、所狭しと露店が並んでいた。完全にお祭り状態だな……試験を受けている人間の他にも付添の人だったり……なんか親子みたいのもいるな……探索者ってこの世界ではどういう扱いなんだ?


『おお! 本当だ醤油っぽい匂いもする!』

『「ラーメン?」「蕎麦?」「うどん?」「麺」がありますね! 懐かしい!』


 シュウトくんとチサトがウキウキした感じで露店に走り寄る。店主の鬼人族の人がこちらをちらっと見ると無い事もない振る舞いをしているように心がけているのがわかる。明らかに緊張をしている。キョウカ……そんなに圧をかけなくてもいいじゃないか……


『オイシイ! でもなんか違う! でもオイシイ!』

『ああ、近い、近いんですけどね……でもオイシイ』


 二人が越に入った感じで蕎麦をすすっている。俺は隣の露店にあった牛丼もどきを頼んでみる。ご飯だな……醤油もどきベースのなんか近い感じの牛丼だな……

でもうまいな。


『ああっ! 「牛丼」まであるんですか!』

『あたしソッチのほうが良かった!』

『後で食べればいいだろ……』


 完全に二人のテンションがおかしい。気持ちはわかるが……あまりにおいしそうに食べていたからだろうか、露店に人がどんどん集まってくる。ちょうどよい客寄せになってしまっているな。


『あら? オイシイわね。タクマの国でもこれが食べられたのね?』

『そうだね。何でもかんでもこの味だったな。「大豆」を「発酵」……ごめん言葉がわからないや……』

『そうね、私たち難しい言葉はまだわからないものね』


 大豆を発酵させる麹菌……なんて言葉がわかるわけないな……日常会話でもやっとなのに。それにしてもこの世界に来た先人たちの頑張りだろうか? 醤油を作ってしまうなんて凄い根性だな。それともこの世界にもとからあった? 謎だ。


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