第18話 辺境の町での買い物

 俺たちは、おそらくこの世界の服屋……古着屋に来ていた。おそらくがつくのは、雑貨屋に見えるくらい色々なものを置いているからだ。


「すごいですね、異世界だ!」

「う~ん、私の好きな感じの服が全然が無いよ! コスプレみたいになっちゃうよ!」

「セクティナ達に見繕ってもらえばいいんじゃないのか?」


 チサトさんがセクティナとアルミスをちらっとみた後、迷った感じで色々見回す。


「あ、店員さんがいい感じだ、店員さんに選んでもらう」


 そう言うと店員さんのところに行って何やら頑張ってジェスチャーでコミュニケーションを取ろうとしている。


「まぁ、たしかにセクティナはセクシーな感じだし、アルミスは活発な感じのする服だからセンスが合わないか」

「チサトも結構セクシー系なんですけどね」

「……そうか?」

「あ……えっと、今のは聞かなかったことに」


 まぁ、下着姿を見てしまった身としては分かってしまうが、確かに発育が良い方だった。だが性格が全然違うからおそらくセクシー系の服を着ることは無いだろう。


『セクティナ、普通、服、選んで』

『え? ……私?……』

『タクマ、セクティナ、服、選ぶ、良くない。私、選ぶ』


『え?』

『セクティナ、服、選んだ、私』

『タクマ、アルミス、選ぶ、良い』


 会話の横から入ってきたアルミスが服を選んでくれるらしい。なるほど……どこも生真面目系の人は服を選ぶのがなんか苦手な印象だが、ココでもそうらしい。会話の歯切れの悪いセクティナを初めてみた気がした。


 アルミスとホムの二人で俺たち二人の服を選んでくれる。大体3着分だろうか? なるべく普通の服を選んでくれたらしい。大航海時代の船員みたいな服になった。町を行き交う人達に比べると大分地味な感じだ。靴なども同時に選んでくれる。ブーツタイプとサンダルタイプの 2種類、足に合うサイズのものを見繕う。革靴か……靴擦れが心配だな……


 チサトさんは店員さんと仲良く? なった様で日本人から見てもそれなりに可愛い感じの服を選んでいた。わりと可愛い系の趣味なんだねなぁ、アルミスと似たような服を選ぶと思っていた。

 

 みんなが色々と選んでくれたものをまとめて購入し、新たに調達した背嚢に詰め込んでいく。結構な額になるらしく、全員分でイノシシの素材売却代の半分以上が飛んでいった。3人分の上下と靴を3種類か……日本の感覚だと10万もあれば全部揃いそうだが、ここは全部手作りだろうからもっと値段がするんだろうな……早めに貨幣価値を覚えないとな。それから今まで来ていた服を脱いでこちらの世界の服に着替えをする。前の世界の服はとても目立つので犯罪のターゲットになる確率が高く危ないそうだ。


 それから昨日立ち寄った役所に立ち寄り、またセクティナ達が色々と俺たちの話を通しているようだった。なんてお人好しなのだろうか? それともテンセイシャだからだろうか? まぁ、言葉を覚えてからしっかりと話しをすればよいか……

 話を終えたセクティナが小さな皮袋を渡してくる。ズシッとした重さで中には銀貨が大量に入っていた。


『タクマ 2人 殺す ご褒美』


『あ、ありがとう』

「おお、盗賊退治の報酬ですかね?」

「うーん、チョット思い出すと嫌な気分かもぉ……」

「確かになぁ、夢には出てこなかったからよかったけど、当面の軍資金になるかな?」


 職員さんが、例の説明本を持ってきて、貨幣の交換レートなどを教えてくれる。細かい物価などとの比較なども載っていて何を交換できるかなどがわかりやすく図解されていた。微妙に複雑なので、メモを取り出し交換レートなどを記述していく。俺たちが今もらった小銀貨60枚はだいたい30万円くらいなのだろうか? 3人で一月半はなんとかやっていけるのか?


『おおおお、タクマ! それはなんだ!』

「あ、タクマさん……見せちゃダメですよ」

「……あ」


 何も考えずに日本のメモ帳とボールペンを出してしまった。透明プラスチックなんてもちろん無いし、こんな小さなメモ帳もどこにもなかったものな……3人を含め、職員さんも珍しそうに見ていた。ホムが興奮していたので、ボールペンだけ手渡してみた。


『壊す、ダメ』

『わ、わかった』


 ホムが物珍しそうに詳しくくまなく見る。しばらく見ていると満足したのか返してくれる。なんとなく悟った顔をしていた。なんでだろうか?


『セクティナ、俺は早く依頼をこなして早く帰って来たいよ。完全なる未知だ』

『あなたがそんなことを言うなんて珍しいのね。死なないようにゆっくりやるのが信条じゃなかったの?』

『ついにホムの本気が見られるね!』


 職員さんがお金のレートの表と近辺の街の地図の紙を渡してくれる。普通に紙が流通している感じだな……もちろん図しかわからないので、後で勉強をする必要があるな。


「活版印刷チートも出来なさそうですね」

「3大発明だっけ?」

「確かにコレは印刷されたものだな、紙の質は悪いが十分伝わるな」

「学校のわら半紙のほうが綺麗ですものね」

「江戸時代のかわら版みたいだねぇ、木版をするやつかもよ?」


『やはり高度な文明がある所から来たんだなぁ……全く驚いていない』

『さっきのペンもガラス製なんでしょう? ものすごい技術ね』

『いや……ガラスでないナニカだった。ものすごく軽かったのだよ』

『ガラスじゃないのに透明なのかー? そんなものあるのかなぁ?』

『帰ってきたら、タクマたちの言語を私が学ぶぞ!』


 そんな話をしていると、大工の棟梁的雰囲気の牛のような人が部屋に入ってくる。かなり大きい……2メートル以上あるな。思わず見上げてしまう。


「ミノタウロスだ……ちゃんと服を着ている……」

「強そう……」

「フサフサだな、毛が」


『セクティナ、久しいな。んで、俺に用事ってなんだ?』

『久しぶりねランパルト、あなたにこの人たちの面倒を見てもらいたいの』


 ランパルトと呼ばれた牛人が俺たちを一瞥する。


『うーん……ちょっとひょろひょろ過ぎないか?』

『全員魔力持ちよ』

『本当か、ってこたぁ……しごく感じか?』

『ええ、そう言うことになるけど、お手柔らかにお願いするわ。午後からはここで言語習得教室に来て貰う予定だから、午前中だけね』


『……しゃべれないのか……』

『喋れないだけで頭はもの凄く良いわ、意思疎通も簡単だし』

『わかった、お前の頼みはそもそも断れないしな』

『ありがとう、ランパルト」


 セクティナが俺たちを見ながら話しかけてくる。


『タクマ、シュウト、チサト、明日、仕事、ランパルトと、大丈夫?』

『わかった よろしく ランパルト』

『ほぅ……よろしく』


「なにするんでしょうね? 言語チートないと異世界は厳しいなぁ……」

「なにするのかなぁ……」


『仕事、なに?』

『壁 作る』


『壁?』

『壁 作る 魔力 練習 お金もらえる』


「わかった・・?」

「壁の修理でも手伝うんですかねぇ」

「明日考えればいいのよ! わたしもわからない!」


『わかった 明日』




 その後、ランパルトの説明で、明日の3の鐘がなったらここに来るように言われた。3の鐘ってなんだ? って感じだったが、この町の中央に大きな時計があってそれの3の数字を指した時らしい。朝日が出てから3回目と言う意味らしい。朝9時位なのかな……良くわからないから早めに来たほうが良さそうだ。


 午前の壁修理を終えた後、午後はお昼を食べた後ここに来ればいいらしい。言葉の授業をしてくれるそうだ。毎日が大変になりそうだな。


 それから市役所を後にして宿に戻る。セクティナからは明日から2~3週間町を留守にするとの知らせを受けた。不安になるが、仕事を斡旋してもらったり、言葉の練習をさせてもらえるのだ。ありがたくやらせてもらうとするか……


 それにしても……言葉を覚えるまでは日本に帰られなさそうだな……頼みの綱である物知りそうなホムと意思疎通が未だに上手くできないし、そもそも帰る方法を知っている人がいたとしても言葉が通じないんじゃどうしようもない。文字も読めないんじゃ本どころか、看板も読めない……


 情報を得られないってことがどれだけ大変なのかを痛感させられる毎日だった。

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