第17話 冒険者ギルドと思ったら狩人協会だった

 小鳥たちのさえずりと屋根を飛び跳ねる音で目が覚めた。空が薄明るい感じになっているようだった。俺はベッドで身を起こしてしばらくボーッとする。ああ、やっぱり異世界のままだな……布がちょっと、いや、かなりゴワゴワしてざらつくな……


「ちょ、ちょっ! 千里! 上着着ろ!!!」

「え~、しわになるから脱いでただけだよ。あんた昨日、あたしの裸モロに見たくせになに言ってんの?」

「あ、あ、あれは事故だ! わざとじゃないって言ってるじゃないか!」

「ほんとにぃ?」

「お、音がしたから思わず見に行ってしまっただけで……」

「ほ・ん・と・う・に?」

「……うぅ……」


 どうやら昨日の水場での体拭きの時にトラブルがあったようだ。寝ぼけた頭でチサトを見ると、下着の状態で堂々とシュウトくんと話をしているようだった。色々吹っ切れたのだろうか? 日本での羞恥心があったらこの世界ではやっていけなさそうだものな。


「あ、あ! タクマさん、みちゃダメだ!」

「あ、タクマのえっち」


 シュウトくんが慌てて俺とチサトの間に入ってくる。チサトは別に隠す素振りも見せず、淡々とシャツを着ていく。


「子供がいる大人は落ち着いていて良いねぇ」

「お、男はみんなエロいんだ! ちゃんと隠せ!」

「うーん、最低限ちゃんと気を使ってくれるとうれしいかな? じゃないとおじさんが襲っちゃうぞ」

「……はい、わかりましたよっと」


 チサトが服を着てこちらに向き直る。なんかチョット照れている感じだけどなんだろう? そんな時にドアをどんどんと叩く音がする。


『チサト、タクマ、シュウト、朝、起きる!』

『起きてる!』


 チサトがドアの鍵を開けるとアルミスが元気よく入ってくる。


『買い物 行く!』

『行こう!』


 俺たちが宿に来た時と同じ様に荷物を持って出ようとすると、アルミスが止めてくる。


『荷物、ココよ』


 アルミスが宿に備え付けの鉄製っぽいクローゼットを開ける。俺は思わずこの治安の悪そうな世界での防犯を考えてしまう。


『盗む。大丈夫?』

『うん、大丈夫』


 俺たちが槍やら背負子やら重たい荷物ををしまっていく。


『あ、素材は持っていったほうがいいかぁ。背負子、イノシシ 皮 持っていく」

『わかったわ!』


『うーんと、短刀 持つ』


 アルミスが腰のベルトに巻きつけた短刀を指差す。自衛や防犯のためだろうか? 俺たちも腰にベルトを巻き付ける。スーツや学生服にベルトもなんかおかしな光景だな。大分汚れてしまっているのでクリーニングに出したい……が、汚れは完全に取れないだろうな……


 クローゼットを閉めると、クローゼットの中にあった部屋に付属の鍵のようなものをアルミスが取り出す。鍵を鍵穴にさすところまでやると俺に話を振ってくる。


『魔力 流す 鍵』


 俺は恐る恐る鍵に昨日やった魔力の流れを思い出し鍵に触れてみると鍵とクローゼットの扉が一瞬光り、クローゼットがガチャといった音を立てた。自動ロックみたいだ……


『んと、鍵 無くす 大変』

「『わかったわ』タクマ、お願いね!」

「おう」

『開ける 出来る タクマだけ』

『わかった』


 俺はショルダーバッグにクローゼットの鍵を入れる。魔力があると本当に変なシステムになるな。魔力には指紋みたいな見分け方があるのか? 何でも魔力で解決する世界なんだろうか?



 それから俺たちは1階に降りてセクティナたちと合流する。

 朝ご飯にソーセージを挟んだものをもらった。まんまホットドッグだな……流石にケチャップは無かったがそれっぽいソースがかかっていて美味しい。異世界なのに色々なものが日本と似すぎている気がしてきた。


「異世界のパンって固いんじゃなかったのか?」

「うーん、それは保存食のパンが固いんじゃないかな? 水分抜かないと早くだめになっちゃうし」

「これ、パンって言うより、ナンに近いね。塩が入っているのかな? おいしーね」

「よくわからない香辛料もはいってますね、ベトナム料理これ?」

「色々な国の料理に似ているようで似ていないのね~不思議」


『食器の使い方も上手かったし、こういうジャンクなものも大丈夫っと、食文化なども進んでいる感じだな』

『あなたはひたすら彼らを観察をしているわね……』

『みんなおいしそーでよかったね!』




 食べ終わると背負子を背負ってぞろぞろと6人で店を出て、目的地に向かう。昨日は夕暮れから夜にかけてだったので人通りも少なかったが、朝早いと言うのにかなりの人混みだった。当たり前だけど、電気で夜も明るい日本とは大分違うね……


「はぁ、もうファンタジーな人たちにも見慣れてきましたね。それよりもすごい人。あ! スリに注意ですよ! 定番ですよ! 定番!」

「あ、そうだね~って今貴重品持っているのはタクマだけでしょ」

「だね、チョット気をつけるよ、ありがとう、人波を見すぎて警戒し忘れていたよ」


 セクティナ達がわりと大きめの館に入っていく。俺たちも続いて入っていくと酒場の様な場所に掲示板やら受付やら何やら色々な施設を集めたような場所につく。


「お、おおお! 今度こそ! 冒険者ギルドだ! そうですよね?」

「アルミスが『イノシシ、売る』って言ってたけどそれね」

「冒険者ギルドがどんなところかが分からないけど、素材の審査をしている人となにか交渉している人なんかがいるね、狩人協会かな?」


 セクティナとホムがカウンターに話をしていると、裏手に回れと俺たちにジェスチャーをする。指示に従い裏手に回り背負子を下ろす。背負子を職員に渡すと背負子の外に縛ってあった皮、牙、箱の中から肉などを取り出す。


「あれ? あの肉大丈夫なんですかね? 腐ってない? なんで?」

「あれは冷蔵庫かな~? 魔法があればいけそうね」

「確かに氷魔法はありそうだね、なにもないところから火を出してたし」

「魔法教えてくれないかな? 魔法使いたいなぁ」


『おお、突撃イノシシか、今なら良い値段つきそうだぞ』

『あれ? なんでぇ?』

『隣国の奴らがそこら中に出没しているって噂があったからな。実際に目撃して来て逃げてきておるやつもいる、狩りに人が出られなかったからな、いつもより肉は高めで買い取るよ』

『良かったわ。臨時出費があるから臨時収入が多くて助かるわね』


 それからセクティナ達がギルドの受付けでなにやら話をしていると、上司らしき人が出てくる。俺らを指差しして何やら言っている。確か救援信号が出たから来たっていってたっけか?


「あ、救助代金とか取られちゃうのですかね?」

「……山岳救助隊に助けられた様なものだものね、たしか凄い額なんだっっけ?」

「あたしたち……無一文よ……」 


 それから上司らしき人が俺たちに話しかけてくるが、全く言葉がわからない。言葉の調子が何回か変わっている様に聞こえるので、色々な国の言葉を使い分けている印象を受けた。


『本当に通じていない様だな、さてどうするか……』

『たしか、少数種族用の言語講習なんかがあった様な覚えがあるが、それはどうだ?』

『そうねぇ、お願いしたいのは、私達が次の依頼から帰ってくるまでにそれなりに話が出来るようにして欲しいの。あとは魔力訓練とそれなりの日銭をかせげるといいのだけれども』

『うーむ、それならば魔力トレーニングしながら城壁の追加工事で日銭を稼いでもらって、午後から役所の言語教習かな? それならば問題無かろう。壁外に少し出ることになるが兵士もいるから安全だろう。タグはもう登録してあるのであろう?』

『それは大丈夫よ』

『ああ……魔力使いながら城壁修理やる訓練か、あの厳しいやつか……助かるよ』


『タクマ、シュウト、チサト、明日 仕事 言葉練習』

「『わかったわ?』なにをするのかしら?」

「ココまで言葉がわからないとかなり厳しいな……英語ならちょっとは分かるものな」

「ええ……本当に」


 それからイノシシの素材の売却賃を貰う。話しぶりからすると結構な額になっているらしいが、まだピンとくる感じではなかった。


『服 買う 行こう』

「『わかったわ! 服、買おう!』ショッピングね! ワクワクするわ」

『ふふっ、嬉しそうで良かったわ』


 俺たちはテンションの上がっていく女性陣の後を付いていくだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る