第15話 辺境の町に着く
俺たちは街道を歩きながら雑談をしはじめる。城壁も近くなり騎士団が近くにおり、襲ってくる相手もいないので、やっと安心した感じだ。
『今日は運が悪かったわね、騎士団が網を張っている時に出くわすとは』
『網を張っている状態だからタクマたちの救援に俺たちが行った訳なんだが』
『ごほーびもらえるからいいじゃない?』
『そうね、まぁ、騎士団が戦いに参加してくれたからだいぶ楽だったわね』
「やっと町だぁ!」
「石積みの城壁……結構でかいもんなんすね」
「ほんとに……イノシシより大きいやつもいるだろうし……必然的にでかくなるのかなぁ?」
「ここのは無理だけど、魔力使えば日本にある城壁くらいだったら飛び越えられそうだな……」
「お? せっかく魔力が使えるから試す?」
「千里、多分それすると捕まっちゃうよ」
「ほら、城門のところで検問してるみたいだよ」
「あ、ほんとだ、車の取締みたいだね! あたしが乗ってる時におじさんが捕まったことあるよ!」
「それは……ご愁傷さまです」
俺たちが完全に観光客と化していると、チサトがアルミスに腕を引っ張られて検問の脇に連れて行かれる。
『あたい達はこっちだからね~』
「あたしたちはそっちなのね」
「ほんと、波長あってるなぁ……」
「言語の壁を乗り越えてるよね、彼女たちは」
検問所脇に抜けて別口で兵士が持ち物チェックなどをしていた。狩人専用だろうか? セクティナが兵士の偉そうな人と話をしていると、二人でこちらに向かってくる。
『タクマ、拾ったタグを……コレよ』
そう言いながらセクティナが自分のネームタグをわかりやすいように上に上げる。ああ、あの仏さんが持ってたやつを渡せってことか。俺はショルダーバッグからネームタグを取り出し兵士長に渡す。
『やはり死んでいたか……家族に連絡せねばな、ありがとう』
『あ、コレ』
俺は同時に拾った小銭入れも渡そうとするが、そちらは受け取ってもらえなかった。
『探索者ルールでは辺境で見つけた死体のものは拾った人のものなのだよ。それは君が持っていきなさい』
何を言っているかわからないな……持っていけって感じかな?
『タクマ、外、拾う、タクマの!』
『ありがとう、わかった』
アルミスのフォローがわかりやすい。本当に助かるな。可愛い猫顔なので思わず顎の下をなでてあげたくなるが……飼い猫じゃないものな。
兵士が銀貨を3枚ほど持ってきて俺に渡す。拾ってきた報酬かな? 路銀をどれだけ使うがわからないからありがたくもらっておく。
その後、背負子の荷物検査などを行い、そのまま通してもらう。セクティナ達の顔が効くからすんなり入れたのだろう。俺達だけだったら追い返されていたかもな……セクティナとの出会いに感謝しなければ。
『タクマ、シュウト、チサト、コレ、必要、作る』
「ネームタグを作るのね。なんかアメリカの海兵さんみたいだね!」
「ああ、映画でよく見るやつですね。死んだ時用と聞いたけど……どこも同じなんですね……」
「通行証にもなりそうだね。身分証明書も兼ねてるのかな?」
「魔力は感じませんね、普通のタグか……」
『ついてくる。作るね!』
『わかったわ!』
俺たちはぞろぞろとアルミスたちの後をついていく。
門をくぐると異世界の町だった。石造りと木組みが混じったゴッチャ混ぜな感じだ。石造りの街をベースに木組みで色々足したのだろうか? メインストリートらしきものは石畳が続き、文明の進みっぷりを感じた。暮らしている人種は多種多様な様で、人間、犬人、猫人、巨人の様な大きな人、牛の様な人、蜥蜴の様な人、頭が坊主の褐色の種族……あれか、まるで映画の【星の戦争】だな、俺はあまりの情報量で頭がパニックになったので考えることを途中で放棄した。
「うぉおおおおおお! 中世ヨーロッパ? いる人もなんかすごい!! すげー異世界っぽい!」
「まるでディスティニーアイランドみたいね!」
「建物は古代ローマ? トルコっぽい様な? 似ているけど何かが違う感じだな」
俺たちが感動していると、アルミスがすすっと近づいてきて、俺たちに一言。
『さわぐ、あぶない、ドロボー、注意!』
「いるのか!」
「やっぱりいるのねぇ……」
「治安の悪い海外旅行しに来たと思えば良いのかな? あまりキョロキョロしたり騒ぐと観光客と思われてカモになるんだっけか?」
「静かにしないとだめなのね」
俺はショルダーバッグのチャックなど色々なところをチェックする。二人は騒ぎたそうに色々なものを見るたびにソワソワしていたが頑張って自分を抑えているようだった。俺も本音を言えば馬鹿騒ぎをしたい。それくらいのインパクトと感動がここにはあった。
それからセクティナとアルミスに前後を挟まれ、目的の場所まで連行される。二人が監視してくれるから安全に移動ができたようで何事もなく目的地まで着いた。気がつくと辺りはすっかりと夜になっていた。
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