第33話

「茜」

前から声をかける。

「あなたは、どっち?」

気付かれていたんだな。今更、言わなくとも、バレていたんだ。

「俺は、君が好きだった。ずっと、一緒にいて楽しかったのは、君だった。茜。今までありがとう。ほんとに楽しかった。それじゃ、」

もう、言いたいことは言った。これは本心。俺の、最後の言葉だ。

「君が、祐くんがいたから、私は笑っていられた。ごめんね。きっともう、会えることは無いんでしょ?」

そう言って彼女は近づいてきた。


温かい。春のような、不思議な感覚だ。


「さよなら。私の好きだった祐くん。」


初恋は、叶わない、レモンの味。それはあながち間違ってはいないのかもしれないな。


「ありがとう。大好きな、君。」


そうして、俺は元の影になる。

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