第31話

学校に行くのも久々だな。まぁここ最近入れ替わってから行ってないから当たり前だ。俺が下がってる間にこいつは随分と阿呆なことをしていた。新しいものに目移りして、情に任せて動いて。元から俺には茜しか見えてないというのに。だから今日は言ってやるのだ。あの姫森とかいう女に。お前じゃない、と。

こうして扉を開けるのが怖いんだ。誰も待っていない教室なんて行く意味はなかったのに。

「おはよう。」

……その声に聞き覚えは無い。警戒しながら振り向く。だが、その容姿にも見覚えはなかった。

「どうかした?」

この匂い、例の女じゃないのか。部屋にも残っていた匂いだ。

「お前が姫森か」

そういった声は自分で思ったよりも低く、ざらついていた。

「お前って、また記憶でも無くしたの?それとも……」

「どうして知ってる。まさかあいつが言うわけないだろう。誰から聞いた。」

「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。別に誰もあなたを気にしてなんかいない。誰も敵じゃないから。それに、あなたの言うあいつが、自分で理解した上で話してくれたのよ。出てきたら頼むってね。」

「そんなわけ、ないじゃないか。今まで誰にも、茜にも言わずにいたのに。」

「あら、新橋さんは知らないのね。じゃあ言わないでおくわ。」

どうしてそんなに優しいんだ。少し期待してしまうじゃないか。

「そんな顔しなくても大丈夫。何も怖くなんてないから。」

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