俺、美女座談の末席を汚す
「ごきげんよう、
「生徒会、忙しいんだ?」
「もう終わったわ」相変わらずの鉄仮面だな。
てか、こいつがボランティア部室に来るのを初めて見たのだが。
「五時にカラオケと
「行かないって言っておけば良いのかな?」小早川が笑う。
「そうお願いするわ」
「私も行かないから
「はいはい、二人は欠席ね」特に意外という顔もせず前薗は微笑んだ。
「では、私は……」
東矢が立ち上がりそうになるのを前薗が止めた。「紅茶だけでも飲んでいらして」
東矢は素直に従った。
こいつ、カラオケの誘いを断るためだけにここに来たのか?
「今日もまた出席者は半分くらいになるかしら」前薗が残念そうに言う。
「
「あいつは歌に割り込んで来るし、むかつくから」プリンスも嫌われたものだな。
「代わりに
どうやら六時からのカラオケはS組十傑の会合だったようだ。それに小早川も東矢も欠席すると言っている。
「シュウだって今のクラスでのんびりスローライフを送っているみたいだし。クラスが分かれたら、もうそれぞれの道を行くものだよ」
「では毎年恒例の避暑会は?」前薗が訊いた。
「それは行くよ」あれ?
「大丈夫なの?」前薗が少し笑っている。
「だって、タダ同然で二泊の別荘地体験ができるし、恭平は他の女子に任せておけば良いのだから」
「今年は人数が多くなりそうだから宿泊費の一部は負担してもらうことになるわ」東矢が口を挟んだ。
「えええ!?」なんだよそれ、って顔を小早川はした。
「来てもらえるならインビテーションを渡すわ」
「うん、お願い」やっぱり行くんだ。
「人数が多くなるのはクラスの垣根を超えて招待するから?」前薗が訊いた。
「そうね、あなたたち、A組でなくなったから」
「それでも私たちを招待してくれるのね?」
「長い付き合いだから」
「ツンデレだね」
冷やかす小早川に東矢は睨みを利かせた――ように見えた。
正直なところ表情の変化が乏しいからわからない。
「手広く招待するということは、あいつらも呼ぶんだろうね?」
「それは……さすがに成績の悪い人まで呼ぶのはどうかと思っているわ」誰の話だ?
「だから少し形を変えてとおじさまは考えていらっしゃる」
「なるほど。楽しみが増えたね」小早川はにかーっと笑った。
爽やかだがその笑顔は無気味でもある。
「インビテーションは期末試験の結果が出てから?」前薗が訊いた。
「もうすでにリストアップは済んでいるわ。中間試験の結果である程度決めているし、期末は調整みたいなものよ」
「だったら早めに招待してあげてね。夜も眠れないくらい待っている人もいるのだから」
「そんな大袈裟な」小早川は呆れたように言った。
「東矢家の避暑会に招かれるのはとても名誉なことと思っている人がいることも胸に刻んでおいてね」なぜか前薗はそれを強調した。
「わかったわ」
なるほど、俺のような一般庶民にはわからないがセレブな人たちにとっては東矢家の避暑会に呼ばれるというのは貴族の舞踏会に呼ばれるようなもので、ある種、高貴なステータスなのだ。
しかしそれって中高一貫生の話ではないのか?
高等部入学生にはどうでも良いことのように思うがどうなのだろう。
「そろそろ失礼するわ」東矢が立ち上がった。「お疲れさま」
「私も帰るわ」小早川が前薗に手を振った。
「たまには一緒に帰ろうよ、
「強引ね」
意外に仲が良さそうだな。タイプは全く異なるのに。
二人が出て行って少ししてから俺も立ち上がった。
前薗も帰り支度を済ませていた。
「私たちも行きましょうか」いや、緊張するな。
「ああ」相変わらず俺は口だけは偉そうだ。「S組でカラオケに行くのか?」
「
「勘弁して。そんな陽キャの集まり。S組は特別なのだろ?」
「そう思っている人も確かにいるわね。でもただのおともだちグループよ」
前薗は樋笠と違ってやはりクールだった。
そもそもこいつのプリンセスもまやかしのような気がしてならない。確かに一緒にいて癒されるが、「魅了」のスキルでも持っていそうだ。
俺はその影響を極力受けないように前薗の三歩後ろを歩いた。
「恥ずかしがり屋ね、千駄堀君」
振り返った前薗はいつも以上の微笑をたたえていた。
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