逆転事件

@zerozero114

第1話 高校生自殺事件

新しく小説を書いてみました。サスペンス(仮)みたいな作品になると思います。

よろしければ、どうぞ。

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「ヤメて・・・・ヤメて・・・・ヤメ・・・・・・・・・・・ヤメローーーーーー」


暗闇に────── 悲鳴が響く。複数の影が蠢く。直後、コンコンとコンクリートを蹴る音が部屋中を駆ける。


・・・・残された人だった何かは、月明かりに照らされて、まるではじめからそこにあるのが正しいのだと言わんばかりに、─────── 微動だにしなかった。




俺が現場に着くと、雨が降っていた。時刻は朝10時。9月初頭、季節外れの大雨。今までの刑事としてのカンが今回のヤマは厄介なものだと告げていた。


車を降り、野次馬をすり抜け、遺体発見現場に歩みを寄せる。だが、場所が場所なだけに現場である3階に行くまでが苦労する。なにせ、至るところで鑑識作業を行っているのだ。慎重にもなる。

「神門さん、お疲れさまです。」

「おお、丸。おつかれさん。」

部下である、丸幸一が声を掛ける。痩せ型で一見刑事には見えないなりをしているが、立派な刑事だ。しかも、キャリア。数年後には上司と部下の関係は逆転しているだろう。

「すみません、非番なのに呼び出してしまって。」

開口一番に謝罪を述べてくる。

「構わん。仕事だ。それに・・・・慣れっこだこういうことは。それより、早く現場に案内してくれ。」

「わかりました。現場はこちらです。」

俺は丸の後ろをついていく。現場はこの学校の3階の教室のようだ。教室の入り口には24Rと書かれた紙が貼り付けてある。この教室は角部屋で他の教室と違い出入り口は一つしかない。

「・・・・どうぞ。」

教室の扉を開く。開けた瞬間に教室からの匂いが鼻に着く。死臭とは異なるこの匂い。これは・・・

「スプレーです。見てください。正面の黒板にあんなことが書かれています。」

下に向けていた視線を正面に戻す。そこには・・・

「征伐」と赤く書かれていた。

「お疲れさまです。」

一人の鑑識が作業を止め、挨拶をしてくる。藤原だ。

「いや~非番なのに、お互い大変ですな~」

「そんなことより、状況は?」

「ハハ、仕事熱心なことで・・・」

「害者は杉野拓真。この松浦中央高校に通う2年生です。」

丸が藤原に代わり説明を始める。

「 遺体が発見されたのは今から5時間前の朝6時。教員が出勤してきた時に電気がついていたのに気が付き、確認に来た所遺体を発見したそうです。死亡推定時刻は3日前金曜日の夜19時〜23時だそうです。」

「死因は?」

「首吊による窒息死だろうな~。」と藤原。

「じゃあ、自殺か?」

「たぶん、そうだろうな。検分したが、自殺の所見とほぼ、一致した。」

「ほぼ?」

「遺書がなかったんです。それに・・・あの黒板に書かれたあの文字。」

「征伐」と書かれた黒板を見る。

「なるほど。自殺案件だが、それにしては臭うな。」

「ああ、それにここは学校だからな。遺体はもう運ばれちまったが、なんと制服を着てやがった。・・・・ここまで言えば分かるよな?」とこちらに目配せをしてくる。

つまり、自殺の原因は学校にあるということか。

なるほど、だからあれほど野次馬が多かったってことか。

「それで、事情聴取は?」

「今、空き教室を使ってしています。ですが、」

「人数が多くて、中々進んでいないというわけか・・・」

それもそうだろうな。なんせ、1学年320人。害者と同じクラスメイトでも40人ほどいる。まして、教師までしていったらいつまで立っても終わらねえからな。

「いえ、そうではないんです。むしろ好調なくらい進んでいます。」

「???なら、いいじゃねえか。」

「いえ、実は害者はいじめにあっていたらしくて・・・・」

なるほど、自殺という線が濃くなったってわけか。

「そこまでわかってんならいじめてた奴を引っ張るのが筋だろう。」

「そうなんですが、そのいじめてた生徒。3人いるそうなんですが、3人とも学校に来ていない。それどころか、行方不明らしいんです。3日前つまり、先週の金曜日から家に帰ってきていないそうで。」

「親御さんはなにしてたんだ?」

「それが、旅行に行くと言ってでていったと」

「3人共か?」

「はい。ですが、行き先はわからないと。」

思わず頭をかく。予想通り面倒な事件になってきた。

「逃走したんじゃないかと、考えたんですが・・・」

「ああ、その可能性は高いだろうな。杉野が自殺か他殺かどうかはわからんが、その3人が事件に関わっているのは確かだろうな。」

窓の外を見ると先程まで小雨だった雨が大雨に変わっていた。風も強く、植えられている木々が今にも根っこから飛び出るのではないかと思うほど、大きく揺れている。

「荒れそうだな、こりゃあ。」

当たって欲しくない勘ほどよく当たるものだ────


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