反撃の一番槍
「僕は誓った……!
この復讐を成し遂げた後、この世界から鬼という存在を消して復讐の螺旋、それを一つ壊すと!!
───────だが君は、ソレを否定した。
この罪の重さ、分かるだろう!?」
道化師が吼える。
……確かに彼の過去は悲惨だった。
巴も、殺されても文句は言えないだろう。
しかし───────
「お前、自分が同じことしてるって分かってんのか?」
「え?」
やっぱり、自覚なんてしていなかった。
藤也の件といい、それ以外の殺人事件と言い。
コイツは、魂喰の為だろうが明らかに人を殺しすぎている。
挙句は、一人の少女を唆して復讐を成し遂げさせ暴走させる、そんな他の人の人生をぶち壊すようなことを平然とやってみせた。
「僕が……こんなクズと一緒だとッ!?
出鱈目を言うなよ荊棘……お前なんて、その気になればこのクズと一緒に殺すことだって可能なんだぞ!!」
「なら、殺れよ。
……無理だよな? 呪力の量が足りねぇんだろ?」
ぐ、と道化師が短く声を捻り出した。
……やっぱり、コイツに呪力量の限界はあったのだ。
そこだけは、魂喰をしない限りは増えやしないのだから。
せいぜい、俺を殺したら巴を殺す為の呪力量が足りないくらいだろうが。
そして、道化師が巴に持ってこさせたのは恐らく───────
「その救無彦亡を僕に刺して、僕の呪力を回復させろ。
……傷は自分で治せれるから問題は無い」
やはりそうだ。
この男は、自分の呪力を回復させる為に巴を呼んだのだ。
「言っとくが口答えはさせないぞ。
早くしろよ、麻上巴のパチモン」
「え、やだ」
強気に迫る道化師の要求を軽々しく拒絶して、巴はナイフを深々とオレに突き立てた───────。
錆びた刀身が指す直前に現れて、その刀身はオレの身体を巡り、傷がある箇所を癒していった。
「お前───────麻上ィ!!」
「デケェ声出すなよパチモンがよォ!?」
殺意を向ける道化師に巴が勇ましく叫び、懐から短刀を一つ放り投げる。
刹那───────短刀が砕け、周囲が光に包まれた。
「グッ……!?」
「だいたい、テメーがオレに指図するってのがお門違いなワケでさァ!!
脳いじったんだろうが残念だったな意味ねぇよ!!
オレはァ、道化師にビビっても
言いながら、麻上がオレの胸倉を掴み無理やり起き上がらせた。
「さぁて行くぜ未音ォ?
最後の共闘だァ、派手に殺ろうぜぇ!!」
「おい待て、巴───────」
オレの言葉は届かず。
巴が地面に、漆黒の短刀を刺し込む。
すると、地面が、空が影に包まれる。
風景が全て影に塗られ、視界が奪われたその世界は巴の所持する短刀の呪装具の一つの効力なのだろう。
「おいパチモン!
テメェ、このオレをさんざん弄びやがった事を後悔させてやるよ!!」
意気揚揚と、麻上巴が吠える。
道化師の顔は陰に隠れて見えない。
しかし、その顔が怒りで満ちているのは容易に想像できた───────
鬼ノ物語 @sakurahiro0226
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