(仮題)俺は宇宙人に攫われて…

上屋列道

プロローグ

「息子はまだ目を覚まさないのか‼」


男の野太い声が部屋中に響く。


「申し訳ありません。ご子息に適合するモノが当院にはストックされていません…」

「至急モノを手配しているのですがいつ当院に入ってくるのか見当もつかず…」

「ですが当院の国内最高級の設備と医師の献身で生命活動に支障はありません…」


白衣を着た老人たちは男に向かっておずおずとしかし口々に弁明をする。


「そんなことは分かっている‼モノはうちの者が手配し取りに行っている。高い金を払っているんだ最高の設備、最高の医師でなくては困る‼」


男は老人たちを遮るようにまた野太い声を響かせると、手荒に扉を開け病室から出て行った。


残された医師たちは男が出て行った扉を見つめながら、


「社長がご子息の状態を一番理解されているはずなのになぜ怒鳴るのだろうか。」

「社長は医師を信頼してない。ご長子を医療過誤で失っているから。」


そう言うと長い沈黙がながれた。


部屋の真ん中に置かれたカプセルのなかでは10歳になる少年が静かに眠っている。


医師たちはモノが届くのをただ待つことしかできない。

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