第1章 狩人から冒険者へ
第2話 冒険者の国"アルベイル"
「冒険者になりたいんですけど」
俺がギルドの受付にいるお姉さんに言うと、何故か目をまん丸にされ、凝視される。
何でそんな反応をされるんだ? 確か冒険者になる為の条件は10歳以上で、手足の欠損や、病気に掛かってない健康な者ならなれる筈だ。
もしかして、この服がダメだったか? 見るからに冒険者をやっていく様な格好じゃないからな…。
そんな事を思っているとお姉さんが訝しげに此方を見つめる。
「あの…本当に冒険者に?」
「? はい。16歳なので冒険者になっても問題ない年齢ですよね?」
この話はゴルドフさんから聞いた話だから、間違いではない筈だ。
「は、はい。問題ありません」
そう言うがお姉さんは何も行動に移さない。もしかしたら最近仕様が変わったとか? 何かクリアしなければならない、とか。
「あの…試験とか、何かをクリアしなければ冒険者にはなれないのでしょうか?」
「え、いや、あの」
お姉さんはしどろもどろになりながら、目をキョドらせている。
「実はそうなんですわ!」
「これがとてもキツイ試験でね〜! 貴方がクリア出来るか心配だったのよ!!」
そこでお姉さんの両隣から2人のお姉さんが出てくる。1人は色気ムンムンのお姉さん、もう1人は幼い感じのお姉さんだ。
やっぱりそうだったのか。このお姉さんは俺の事が心配で言うのを躊躇っていたって事か、良い人だ。
「そうだったんですね。ご心配お掛けしてすみません」
「「「そ、それじゃあ…!!」」」
「でも俺は冒険者になって稼がなければならないので」
「そ、そんな! よりによって冒険者じゃなくたって!!」
最初に話しかけた、髪を後ろで結んでいる清楚系なお姉さんが間にあるカウンターに乗り出す。
凄い心配をしてくれてるんだな。でも、俺は村の皆んなに良い生活を送ってもらいたいんだ…それに今の俺に少し自信があるのは戦闘技術のみ。
「冒険者じゃないとダメなんです。俺にはこれしかない」
そう言うとお姉さん達は驚いた表情を浮かべた後、後ずさる。
「どうする? 凄い、なんか、迫力あるんだけど…」
「そう…ですね。とりあえずあまり厳しくなさそうのに…」
「それでは意味がないのではなくて?」
お姉さん達がコソコソと話をしている。恐らく試験の話をしているのだろう。どうせなら強くなれそうな依頼が良いな。
数分後。
「…分かりました」
最初に話しかけた女の人、エリナさんと言う方が納得してくれたのか、承諾してくれる。
「ありがとうございます!」
「ただし!!」
エリナさんが先ほどよりも声を張り、迫る。
「この試験に落ちたら1年間、試験を受ける事が出来ません! それでもいいですか?」
何だ…そんな事か。
ゼルは、迫るエリナに対して後退りもせずに答えた。
「それで臆病風に吹かれたら冒険者になんてなれないですよね? それに…挑むなら早い方が良いに決まってる」
自分の悪いところが浮き彫りになれば、その分何処を鍛えれば良いのか分かる。
10回の練習より、1回の実戦。俺はそうやって成長して来たんだ。
「…では依頼内容、もとい試験内容を発表します。内容は1週間以内に、この王都アルベイルにいる"猫"を捕まえて来て下さい」
猫?
「猫と言ってもただの猫ではありません。その希少さからAランクの魔物とされている、スターキャット。此処王都周辺にしか生息しておらず、星が流れるかのような速さで地上を駆けると言われています」
スターキャット…聞いた事がない名前だ。
「あれ? ちょっと待って下さい。そのスターキャットって魔物なんですよね? 何で討伐ではなく、捕獲なんですか?」
「先程言った通り、スターキャットは希少です。しかも、少しイタズラする程度で人に危害を加える訳でもありません。その為、捕まえられたスターキャットは魔物管理場にて保護されます」
そんな所があったのか…。まぁ、今はそんな事はどうでもいいか。
「スターキャットはどういう見た目をしてるんですか?」
「身体中に星のマークが付いているので分かりやすいと思いますよ」
思っていた以上に簡単な依頼が来たな。そんな目立った情報があれば、今日中に終わる事が出来そうだ。
「分かりました! それでは行ってきます!」
俺はギルドを出た。
*
「エリナ…あの子冒険者にさせる気ないでしょ?」
「まさかあんな鬼畜依頼を出すとは思いませんでしたわ」
「…これも私達の勤めですよ」
此処で冒険者になったらあんな子、すぐに…。私の判断は間違ってない筈…
ゼルは知らない。この依頼はここ5年、どのパーティーも達成する事が出来ていない依頼だと言う事を。
そして依頼を失敗した中には、隣国のAランクパーティー、シーファングも入っているという事を。
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