異教徒襲撃
♤
聖堂の中にいてもわかるほどの大きな爆発音が聞こえ、街の人々が
俺は近くにいたシスターに献金の袋が載った台車を預けると、すぐさま聖堂の外へと飛び出す。
周囲を見渡すと聖堂の敷地を囲む塀の向こう側に立ち昇る煙を見つけ、ほどなくして銃声まで聞こえてきた。
様子を見に聖堂から顔を出す人々を止めて、このまま中にいるよう伝えてから入り口の格子扉へ走る。
銃声は止むことはなく、むしろ激しくなって爆発音も増えていく。
格子扉を開いて周囲を確認した。
もし逃げ惑う人がいれば、高い塀に囲まれた聖堂敷地内へ避難させればいい。
戦闘が起きている方向を見ると街の警備兵達が銃撃戦を繰り広げていた。
近くで身を隠していた兵士に近寄って話を訊くと、武装した異教徒の集団が街に潜伏していたらしく生誕祭の礼拝を見計らって襲撃を始めたとのことだ。
――と、そこへ物陰に隠れて防戦をしていた別の兵士のところへロケット弾が撃ち込まれ爆発を起こした。
弾が飛んできた方向を見ると十人ほどの武装した集団が三つ、こちらへ向かってきていた。
目的が生誕祭を行なっているクランフェリアの聖堂であるなら、これ以上近づけるわけにはいかなかった。
「ヒツギ様っ!」
声をかけられ振り向くと、彼女が小走りですぐ近くまで来ていた。
戦場と化した街中には自動小銃の連続した射撃音が響く。
「クランフェリア、ここは危険だ!聖堂へ戻って隠れていてくれ!」
彼女にそう言った時、俺達がいる物陰にもロケット砲が撃ち込まれた。
とっさに彼女を抱くようにして庇い、振り向きながら異教徒達に対して敵意を剥き出したその瞬間だった。
身体と心の奥から不思議な力が湧き、抑えられないほどに膨れ上がった。
「――これは!?」
そして手の内に眩い光が生まれ、俺とクランフェリアの間に身の丈以上の大剣が顕れた。
刃渡りが二メートルはある諸刃の直刀。
普通ならばこれほどの大きさは振れないものだが、何故か俺は意思だけで操れる気がした。
「あなた様……この大きな剣は……!」
クランフェリアは驚いて目を見開く。
目の前の少女を守りたい一心で大剣を携えて駆け出した。
身体が羽根のように軽い。
常人を遥かに凌ぐ速度で走り抜け、跳躍するとゆうに十メートルを超えた。
着地と同時に周囲にいた異教徒二人を大剣で薙ぎ払う。
それはあらゆるものを分断し、人はもちろん建物すらバターのように斬り裂いた。
一定の距離なら大剣の柄を握らずとも操れるようだ。
返す力でさらに大剣を真一文字に振るい、七メートルほど後方にいた異教徒三人を構えた自動小銃ごと首を刎ねた。
周りの動きが――いや時間自体がとても遅く感じた。
即座に敵を探して飛び跳ね、建物の壁を蹴って頭上から一人を斬り伏せる。
近くで援護していた異教徒の銃撃をギリギリで躱して、そのまま両腕を斬り飛ばす。
飛来する高速の銃弾すらスロー再生のようだ。
息もつく間に七人の仲間を倒されて動揺する異教徒達だが、標的を完全に俺に定めて銃撃を始めた。
奇襲をかけたものの、攻撃を集中されると攻められなくなる。
立て直すために大剣を盾にして、銃弾を受け流しながら距離を取り、次の狙いを決めて飛びかかろうとしたその時だった。
「そこまでです!聖なる教に仇なす異教徒達!」
街の広場にクランフェリアの声が響いた――
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