あん肝
ふんわり
ねっとり
こってり
でも、さっぱり
そんな不思議な食べ物
あん肝
舌に乗せれば、しんしんと降る雪が、手袋をした手のひらの上で溶解するように、ゆっくり、ゆっくり、
冬の夜、キリリと痛むほど冷えた足先の、そのまた先に忍ばせた湯たんぽの、優しい暖かさに似た、柔らかくて、まあるい旨味が、口いっぱいに広がる
すると後から、開け放った窓から入り込む秋風のように涼しい、柑橘の香が鼻腔を抜けて、思わず、「ほう……」とため息をついた
そこに熱燗を一口
暖かさが、喉を通って、胃の中へ
そして、そこを中心に、温もりがパッと花開いて、指先、足先まで駆けていく
まるで打ち上げ花火である
そして、ほんのりと桜色を帯びたあん肝を見て、私はいつか見た山桜の花吹雪を思い出していた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます