姉ちゃんがおかしい

もりくぼの小隊

姉ちゃんがおかしい


 最近、俺の姉ちゃんがおかしい。いや、弟の俺が言うのもなんだけど元からぶっ飛んでてヤベェのがうちの姉ちゃんだ。だけど、最近は輪に掛けておかしい、本当に俺が言うのもなんなんだが……。


「んん~、このセンベイ美味んまッ」


 いま、ひとり言をいってんのが俺の姉ちゃんだ。ソファを独占して寝そべりながら片手で煎餅バリバリ食いながら漫画を読んでいる我が家の暴君破壊大帝タイラントオーバーブレイク舵束かじたば モカ」だ。


「んぁ? ちょっと隼輝じゅんき。何みてんのよッ」

「あ、別に何も見てねえよ」


 ジトリとした目でこっちを睨む。妙に感がよくなった姉ちゃんに若干、心は冷や汗だがこちらも見てただけでやましい事があるわけでもない。堂々としてればいいだろう。そうだろう、俺。


「あっやしいわねぇ、あんたもしやこのお姉さまのオミアシ?……あ〜、オミアシでいいんだっけキレイな足って……まぁいっか、ほらぁ、こいつを眺めてたんじゃないでしょうね?」


 ジト目で怪しむ姉ちゃんが自分の太ももをパシパシ叩いて濡れ衣を着せようとしてきやがる。てかさキレイな足は「おみあし」であってるよ自信持てよそんくらい。そんなことより濡れ衣だ。こればっかりは冗談じゃねえ。


「は、家族の足なんて眺めてなにが面白えんだよ自意識過剰。そもそも姉ちゃんを女として見るってありえねえんじゃね、そんなん男として終――」

「――ぬあんですってえっッ!!」


 あ、ヤベェ言い過ぎたッ。さっきまで寝そべってた姉ちゃんが飛び起きダッシュで突っ込んでき――


「――おらあっ○○○フィンガーッ!」

「アダダダダッ破れる破れる脳がはち切れ破れる!?」


 俺の頭をフィンガーして締め上げてきやがったッ。マジでシャレにならんくらいイテエエェェッ!!!!!!?。


「ええ? ちょっとなによこんくらいで大げさな」


 気分は輝き叫ぶか真っ赤に燃えてた姉ちゃんもさすがに痛み叫ぶ弟に情はあったらしい。

 いや、マジでシャレんならねえよ。やっぱり姉ちゃんおかしいよ。


「ね、姉ちゃん、握力どんだけあんだよ」

「アクリョク〜、んなもんおぼえてるわけないでしょ? まぁ普通の女子力よ女子力」

「握力を女子力とは言わねえよッ。ぜってえ普通じゃないねッ。ちょっとパパの握力計持ってくるから測ってくれ」

「えぇ〜、めんどくさいんですけど〜」


 面倒くさがるな、放置してたら俺が死ぬ。





 〜〜測ってみた〜〜




「んーと、あ〜「六十キロ」だって、よくわかんないけど女の子の普通かな?」

「女の子の普通じゃねえよ! 男の平均が「五十」なんだよッ「六十」なんてゴリラじゃねえかッ!」


 いやマジでゴリラだよ。本当に頭が破れるところだったよ危ねえ。


「はぁ、なによ大げさにてきとうなこと言って〜、男の子なら「百キロ」が平均なんでしょ?」

「いやいやいや鍛えてねえと百とか無理だって、小指で腕立てできるレベルだよそれ」

「あ〜じゃあこのアクリョク計が壊れてんでしょ、そんなわけでも無かったし」


 ぇ……いまなんて言ってましたこのひと。


「そんなことよりさあ、ママがCO○Pであんたに買った冷凍の牛丼食べていい?」

「あー……ん? て、いやいやどさくさでなに言ってんだよ。あれは俺んだからイヤだよ。そもそも姉ちゃん煎餅食ってたじゃん」

「ん〜最近なんかお腹空いちゃってさぁ、お昼ごはんとかおやつ食べてもぜんぜん足りないんだよね?」


 ちょっと、どんな胃袋してんだよ姉ちゃん運動とか全然してねえじゃん。やっぱおかしいよ。だ、だけどそれとこれとは別だ。あの牛丼は俺の大好物なんだッ。しかし、暴君破壊大帝な姉ちゃんはそう言っても諦めねえだろ。よし、それならこうだ。


「どこの店の牛丼か当てられたら考えてもいいぜ」

「はぁ、アテラレ?」

「いや、だからちょっと食べてみて当てたらて話し」

「え、食べていいの。センキューやっりい」


 人の話を聞かねえな相変わらずよッ!




 〜〜レンジで具とご飯をチンした〜〜



 姉ちゃん、一口実食。


「ん〜「清屋きよや」の牛丼!」

「ちげえよ「吉夫屋よしおや」んだよ。パッケージもろカンニングしてんのに間違えんなよ」

「うっさいわねぇっ、ちょっとまちがえただけでしょ、モグモグ」

「いや、間違えたのになにガッツリ食いはじめて……はぁ、もういいや、やるよ」


 なんか、疲れちゃったし。腹減ってるやつに美味そうに食われんなら俺の牛丼も本望だろう。なんか、バカ舌な所は変わってねえのに安心してる俺がいるし――あ、チャイムなったな。誰か来たかとドアホンのモニターを確認。


「はい、どちらさ――ッッ!?」


 いま俺は高速となって玄関に向かうぅッッ。




「あ、ジュンくんこんにちは。あの、モカちゃんいる?」

「は、ハイッ、いらっしゃいますよッ!」


 わが家の玄関に突如咲いた憧れの一輪の花「松本まつもと あずき」さんがこの俺に眩しい太陽のような微笑みを向けている。ああ、今日もお美しい。やはり年上の女性とはかく有るべき、うちの愚姉ぐしとは大違いな女神ヴィーナス。その愚姉とお友だちだというのは世界の不思議であるが、こうしてあずきさんが玄関にいらっしゃるのだ、世界の不思議も受け入れる。くっ、俺にファッションセンスがあればこの清楚な服装――


「なに鼻の下のばしてんのよエロガキが」


 後ろから姉ちゃんが俺の後頭部をスパンと叩いて冷ややかな視線をしてきやがる。ヤメロッ、あずきさんの前なんだぞっ。


「ふふ、本当に仲良いねふたりとも」

「えー、ちょっとやめてよ〜、こんなんと仲良いとかさ〜」

「うん、そういう事にしとこうかな?」

「なんか含みがあるな〜。それで、今日はどうしたの?」

「うん、あのね」


 二人の世界に入ってる。ここは邪魔せずクールに去るほうがいいだろう。男の俺がいつまでも女子の空間にいるのはおかしいからな。あずきさんの笑顔が見れただけでヨシとするぜ。


―――終わり。




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姉ちゃんがおかしい もりくぼの小隊 @rasu-toru

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