俺たちのそらに。
鍵谷悟
プロローグ
ガコン。
コックピットの装甲越しに聞こえるドックのシャッターがガラガラと開き始めた音で、集中していてどこか意識がなかった現実に引き戻される。
『いいよ、アキラ』
「おーう」
足と足の間にセットしてあるスマホから「メック」こと
流石に通信機能まで自分たちで作り上げることまでできず、文明の利器に頼ることになった。
セットされているスマホの向こう側にあるスイッチを押す。
昔爺さんの家にあったブラウン管テレビの電源が入った時のような音がしてから、メインモニターに映像が投影される。
『それじゃ、これからは私が変わりますね』
「頼むわ、オペ子」
『オペ子って言われちゃうとなんか嫌なイメージになっちゃいます…』
「はっはっは」
『アキラ君分かってて言ってますよね…』
起動し終わるまでの時間で、オペレーション担当の
『お前に今無駄話をしてる余裕があるのか』
「あー? こんな時まで憎まれ口叩く余裕がお前にはあるんですねぇ?」
『バカにはそんなことも分からん様で気楽だな』
「へー、そうだねー、ワカンナイナー」
『……呆れたものだ』
かっかっか、と笑い声だけ返すと
そんなことをしていると、システムの起動が終わったようだ。
サブモニターには、俺にはよくわからないがシステム的な単語が並んでいたが、全ての項目の横に「OK」の文字が並んでいる。
「うっし、行くぞ」
ジェネレーターに繋がった右ペダルを少しだけ踏み込む。
直感的に操作しやすいようにと、メックがなるべく車に近い構造にしてくれたのだろう。
コックピット全体からエネルギーが回っているような感覚が伝わるのは、閉鎖空間にいるからなのだろうか。
両手につけたグローブをもう一度引っ張り、手に合わせる。
操作レバーを握り、深呼吸。
『大丈夫。できるよ』
関りもなく、ここに来ることもなかっただろう俺たちを、強引な手段とは言えまとめた
はっ、と笑うと言うには小さ過ぎる息を吐く。
と、規模は小さいが有人ロボットに乗って、これから発進するんだ、男子の大半が夢見たであろう台詞を口にするチャンスなことにふと気づいた。
「
俺たちがやったことは実質レストアだ。
作り上げたとは言い難いが、それでも努力の結晶であるロボットが、
ズシンと、一歩を踏み出した。
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